INTERVIEW
Unlucky Morpheus
2025.02.26UPDATE
2025年03月号掲載
Member:紫煉(Gt/Scream)
Interviewer:杉江 由紀
-なるほど。"この想いを晴らす 時は来た"とあるのはそのためだったのですね。
そうなんですよ。俺としては"今年はやってやりますよ!"という選手たちの気持ちを自分の中に憑依させながら書いていきました。聴いたときに元気が出るような、前向きな力のこもった歌にしたかったんですよね。
-なお、桜と和がコンセプトとなると侍や武将等のイメージが浮かびやすいところがあるものの、この曲は"SAKURA chevalier"で"騎士"という言葉が使われております。この言葉を選ばれた理由も教えてください。
そこはもう簡単な話で、"サクラナイツ"のための曲だからですね。とはいえ、そのまま曲タイトルまで"SAKURA knights" だとそのまんますぎるし(笑)、フランス語の"chevalier" を入れて"SAKURA chevalier"にしたんですよ。少し読みづらいところはあると思いますが、前からこの"chevalier"という単語が好きだったので、使いました。
-それから、この詞の中には"東の城で静かに待つ"という一節もございます。差し支えなければ、これが何を意味する言葉なのかも伺いたいのですが?
麻雀には東南西北っていう方角が出てくるし、"サクラナイツ"と関係している面としては、以前Mリーグにいた東城りお選手のことを書いた部分でもありますね。あんきもの "M"シリーズには、毎回そういうちょっとした遊びをちょこちょこ入れるんです。
-と同時に、リリース時期的にも「SAKURA chevalier」はちょうど春にそぐう楽曲となっておりますが、今回はカップリングの「落花流水 (re-recording)」も、"桜"というキーワードこそ出て来ないのですが、和歌では桜を意味することが多い"花"という言葉が使われています。もともと「落花流水」は1stアルバム『affected』(2014年リリース)の収録曲で、現在サブスクでも聴くことができますが、ここに来て新録された理由とはどのようなものだったのでしょう。
今回のシングルのために別の新曲をカップリングとして入れようかとかいろいろ考えていたんです。だけど、制作作業の途中で「SAKURA chevalier」の世界観に似合う曲がうちにはあったじゃん! っていうことを思い出して、急遽「落花流水 (re-recording)」を入れることにしたんですよ。11年前にオリジナルを録ったときにはまだJillさんがいなかったんで、今回この機会に現メンバーで録れたのは必然でもあったんだろうし、前から『affected』の曲たちはどれもちょっとずつリレコしていきたいなと考えてたんで、それが叶って良かったです。前にも『CHANGE OF GENERATION』(2018年リリースの2ndフル・アルバム)で「虚妄の恋人」(『affected』収録曲)は新録したんで、これが第2弾になりますね。
-11年ぶりに新録するとなった際に、紫煉さんが特に心掛けられたのはどのようなことでしたか。
当時のテイクは当時のテイクで良かったと俺は思うんですよ。過去のテイクを否定する気持ちは全然ないので、今回はシンプルに今のメンバーで今のバンドとしてのノリを音にできればいいなと考えました。
-テンポやアレンジが原形とほぼ変わっていないのは、そのためなのですね。
テンポは全く変わってないし、演奏内容もヴァイオリンが新しく入ったのと、いろいろバランス的に微調整したところはありますけど、基本的にはほぼ同じです。あとは、サウンドを今風にアップデートしたっていうくらいですかね。
-ヴァイオリンが新しく入ったことで楽曲としてはより表情豊かになったように感じますし、サウンド面ではレンジがずいぶんと広くなったように感じます。
実際、レンジに関しては意図してそうしたところがあります。各楽器の音が細かく折り重なったり、組み合わさったりしているところを、オリジナルのバージョンよりも今回はクリアに聴かせたかったんですよ。
-ベースの存在感も際立っていますし、キックの音も一打ごとのズシン! という迫力が増していますよね。
そこはエンジニアのHiroさんの特色が活かされた部分でもあるし、今のあんきものサウンドの空気感が率直に表現されているところなのかなと思います。ちなみに、もとを辿ると「落花流水」は俺があんきも以前にXI~サイ~っていうヴィジュアル系バンドをやってたときにもあった曲で、16年くらい前にはあった曲だったんですよ。歌詞は『affected』に入れるときに少し直したんですけど、当時の感覚をリアルに落とし込んである曲だし、自分的にはこれまで何度もやってる曲でもあるんです。
-紫煉さんにとっての個人的なマスターピースでもあるのですね。
あえて例を出すなら、hideさんの「DOUBT」って何回もいろんな作品に収録されてるじゃないですか。自分にとっての「落花流水」は、たぶんそれに近い感覚がありますね。初めて作った曲っていうことではないですけど、作詞は初めてやった曲だったし、自分が若かったときに作ったものとしての思い入れもあるんで、今後もやり続けていきたい曲なんです。恐らく俺、この曲を作ってる若者に出会ったらひっくり返ると思います(笑)。そのくらいこれは今でも"当時の俺、やるじゃん!"って感じられる曲ですね。
-そんな「落花流水 (re-recording)」と「SAKURA chevalier」は、本当にまたとない組み合わせになったのではないでしょうか。そして、今回のシングル『SAKURA chevalier』リリース後の3月9日には、激ロックの運営するMusic Bar ROCKAHOLIC-Shinjuku-にて、"Unlucky Morpheus紫煉BIRTHDAY EVENT in Music Bar ROCKAHOLIC-Shinjuku-"が開催されることも決まっております。
3月10日が自分の誕生日なので、その前夜祭的な感じで祝ってもらいつつ(笑)、当日は『SAKURA chevalier』が出たよ! っていう報告がてら、現在制作中のBlu-rayをみんなと一緒に観たり、そこから1週間くらいはロカホリ(Music Bar ROCKAHOLIC-Shinjuku-)であんきもの曲を流してもらったりもするみたいです。
-加えて、3月22日には、川崎CLUB CITTA'で開催される"Legends of AVALON"にUnlucky Morpheusが参加されることも決まっております。こちらはあのSONATA ARCTICA、先程少し話題に上がったMarty Friedmanさん、またO.A.としてPhantom ExcaliverとAnju Tachibanaさんも出演されるイベントなのですよね。
これ、きっかけとしてはSONATA ARCTICAが去年アルバム(『Clear Cold Beyond』)を出して、近いうちに来日公演もやるだろうとなったときに、俺からAVALONの人に"彼等が来日するときにはあんきもと一緒にやらせてよ!"って直談判したこともあって実現したイベントなんですよ。とにかく、SONATA ARCTICAは子供の頃から好きだったんです。
-1995年始動ということは、ちょうど今年でSONATA ARCTICAは30周年ですね。長いことリスペクトしてきたアーティストとの共演ということで、紫煉さんとしてはいかなる心持ちで臨まれることになりそうですか。
何しろ、もしSONATA ARCTICAの存在がなかったら......あんきもは今のスタイルとは違っていたかもしれない、というくらいに影響を受けているバンドの1つですからね。一緒にやれるのはとても光栄です。そして、SONATA ARCTICAを観に来て初めて、あんきもに触れることになる人たちも絶対いると思うんですが、あんきもの音を聴いて、そこにSONATA ARCTICAからの遺伝子を感じてもらえると嬉しいですね。
-では、ここで最後にもう1つ質問をさせてください。春以降、Unlucky Morpheusは2025年の活動をどのように進めていくことになりそうですか? 言える範囲で結構ですので、ぜひお願いいたします。
まず、6月から8月にかけては、ワンマン・ツアー"LIVE TOUR 2025《桜花絢爛の陣》"があるので、それを頑張らないとっていうことですよね。恐らく、その頃にはBlu-rayのほうも発売できてると思うので、それと『SAKURA chevalier』を持って全国を回っていく形になるはずです。あとは、今年中にはアルバムも出すでしょう。
-それはいち早くの先取り予告ですね。
構想はもう固まってますし、曲もできててデモも作ってるし、中には少し録り出した曲もあるんですよ。内容的には、ここまでの流れも踏まえて、「世界輪廻」や「SAKURA chevalier」を軸としたものになっていくと考えてもらっていいんですが、その次に出すアルバムもすでにコンセプトは決まってるんです。
-次の次まで構想が練ってあるのですか。すごいですね。
分かりやすく言うと、年内に出す予定のアルバム、その次に出すアルバムの2枚で本当の意味で完成するんだろうなっていうイメージですね。2枚併せて聴いてほしい、2枚併せて聴くとより楽しめるっていう感覚の作品にしていこうと思ってるんです。
-以前にも、Unlucky Morpheusは、デス・ヴォイスを活かした楽曲が多く収録されているアルバム『Unfinished』をリリースしたのち、次作のアルバム『evolution』では、Fukiさんのクリーン・ヴォーカルを主軸とした、真逆のスタイルを提示したことがありましたね。
そうそう、感覚としては近いですね。当然1枚ずつでも成立する作品にしていくのは間違いないんですけど、今作ってるものの軸を「世界輪廻」や「SAKURA chevalier」としていくとなると、あんきも的にはより歌にフォーカスして音楽性の幅を広げていくことになると思うんです。でも、そうなったら、ダークでヘヴィな方向にめちゃめちゃ寄ったものも反動で絶対みんな聴きたくなるはずじゃないですか。というか、俺たち自身もそういうものを作りたい! ってなるだろうし(笑)。そういう、両極端な需要と供給を満たしていくような作品づくりを今後さらにしていくつもりです。まぁ、今のところはそういう気持ちでいますけど、まずは今度のツアーをしっかりやりきってきたいと思います!