LIVE REPORT
Unlucky Morpheus
2021.10.01 @豊洲PIT
Writer 杉江 由紀 Photo by 大塚秀美
ピロピロドコドコクサクサの吹きすさぶ激しい嵐が、台風16号の存在を跳ねのけるかのように豊洲PIT場内を完全に席巻したこの夜。"あんきも"ことUnlucky Morpheusのリーダー 紫煉(Gt/Scream)が本編中盤でのMCにて発したのは、以下のような率直なる言葉だった。
"今日が来るまでにはいろいろ不安もあって、そもそも開催できるのか? っていうのもあったし。やっと感染者数が減ってきたじゃんと思ったら、今度は台風で。でも、なんとか無事に開催できて良かったです。といっても、たぶんこのライヴには来たかった人が全員来られたわけではなくて、中には来たくても来られなかった人もいっぱいいると思うんですよ。だから、ここに来られたみんなと俺たちはその人たちのぶんも楽しもう!!"
午後あたりは都内もかなりの荒れ模様になっていたこの日、ちょうどライヴの開場~開演時間前あたりで台風が過ぎ雨も止んだというのは、ある意味でUnlucky Morpheusならではの運の強さを表した不幸中の幸いな出来事だったと言えようか。ちなみに、今回のワンマン・ライヴ"XIII"は彼らにとって始動から13周年を祝う場であったのと同時に、事実上"Lunatic East 2019 TOUR"以来でついに実現した大規模なワンマン・ライヴでもあったとのことで、まさにバンド側にとってもファン側にとっても待ちに待ちまくったうえでの大切な一夜であったことは間違いない。
昨夏にリリースされた最新アルバム『Unfinished』から激烈なバンド・サウンドと美旋律が共鳴する「Unending Sorceress」や、ヴォーカリスト Fukiの放つ麗しきクリーン・トーンと紫煉が発する凶悪デスボが絶妙なコントラストを生む「Near The End」などを冒頭で投下したところから始まり、先立って配信が開始となったばかりのデジタル・シングル曲「"M" Revolution」を生演奏にて初披露する場面、はたまたドラマー FUMIYA、ベーシスト 小川洋行、ギタリスト 仁耶、ヴァイオリニスト Jillの楽器隊のみで繰り広げられたインスト・チューン「Spartan Army」などもはさみつつ、ワンマンだからこそ聴けたアコースティック・スタイルでの「Wings」に「願いの箱舟」、そして本編を超コテコテな激メタル・チューン「Change of Generation」で締めくくってみせた今回のライヴは、Unlucky Morpheusの真髄を濃厚に凝縮したものになっていたように思う。なお、セットリストの面では昨夏にリリースされたアルバム『Unfinished』と2015年に発表されたアルバム『VAMPIR』の収録曲たちをすべて演奏したのもこの夜のライヴの大きな特徴のひとつであったそうだ。
"これまではアルバムを出したらライヴをやって、というのが当たり前のことだったんですけど。『Unfinished』というアルバムのタイトルも、もともとはライヴで完成するというイメージで付けたものだったんですよ。ただ、今日もまだみんなの声を聴くことができないっていう意味では惜しくも未完成なんだよね。いつか、本当の意味で「finished」できるようになるといいなと思ってます"
アンコールではこのようにFukiが真摯な想いを語ってくれたほか、紫煉からは当日のライヴの模様を収めたBlu-rayが近日発売となることや、現在は新たなアルバムを制作中であることも明かされた今宵。これからも、よりいっそう"あんきも"の発する"ピロピロドコドコクサクサ"な音が激化していくことは確約されたも同然である。
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