INTERVIEW
Unlucky Morpheus
2020.07.28UPDATE
Member:Fuki(Vo) 紫煉(Gt/Scream) 仁耶(Gt) 小川 洋行(Ba) FUMIYA(Dr) Jill(Vn)
Interviewer:荒金 良介
"あんきも"ことUnlucky Morpheusのニュー・アルバム『Unfinished』がすごい。前作『瀧夜叉姫』で和的アプローチに振り切り、ファンをあっと驚かせてくれたが、今作も一筋縄ではいかないサウンドに仕上がっている。"美と暴虐"というテーマを掲げ、あんきもの個性、武器、持ち味を総動員した今作は、両極の要素を大胆に飲み込んだ最新型のエクストリーム・ミュージックを突きつけてくる。紫煉のデス・ヴォイス・パートが増えたことにより、攻撃性も格段に高まった最強盤について、メンバー6人に話を訊いた。
-前作『瀧夜叉姫』(2020年4月リリースのシングル)のツアー"玄音参詣"は新型コロナウイルス感染症の影響を受けて......。
Fuki:東名阪5ヶ所、全部延期になりましたね。
-今作は7月に出すと言われていたので、そこは予定通りでホッとしました。
紫煉:4月の前半には録り終えていたので、作業自体に影響はなかったです。ライヴに関しては、無理ならしょうがないですからね。障害を乗り越えることには結構慣れています。
小川:自分の気持ちをポジティヴに持っていくしかないから。
紫煉:俺はダイエットもしたので......。
-紫煉さんは痩せましたね。5キロぐらい落ちました?
紫煉:そうですね。この期間に、ダイエットの勉強を頑張りました。
小川:僕はめっちゃ太ったけど、もとに戻しました(笑)。
-あんきもは自身のYouTubeで"一問一答"、"オンライン飲み会"など、ファンに向けたコンテンツも放送してましたね。
紫煉:ライヴもなくなり、みんな残念だろうから、家にいる時間に楽しめるものを提供できたらなと。俺たちもライヴがないぶん、ファンと交流できたらいいなと思いましたし。
小川:コロナ関係なく、以前からやりたかったことなんですよ。
Fuki:"一問一答"は小川君がカメラを買って、いろいろ編集してくれましたからね。"無人島に持っていくアルバム"とか、面白いコンテンツも用意しているので、年内いっぱいやろうと考えています。そこでメンバーの人間性も見てもらえたらなって。
-あんきもは本当にフットワークが軽いですよね。
FUMIYA:そこは武器ですよね。イメージが先行して、動けないバンドもいるだろうけど。
仁耶:あんきもは怖がらずにやってますからね。
Fuki:フットワークの軽さはリーダー、紫煉への信頼度からでしょうね。
小川:個人を尊重してくれるし、みんな違って当たり前という感じだから。
-そして、今作を聴かせてもらい、前作とはまた違う意味で驚かされました。過去最高にソリッドでアグレッシヴな作風ですね。
紫煉:手の調子は良くなっているけど、ギターをスタンドに固定して弾いているので、それを想定した曲を作ってます。そうなると、デス・ヴォイスは自分でやって、ソロは固定したギターで弾くスタイルになるから。デス・ヴォイス・パートが増えると、必然的に攻撃性も増してくるし、デス・ヴォイスとギターをはっきりわけることで両方に専念できる利点があるんですよ。
Fuki:ライヴではデス・ヴォイス・ヴォーカリストですけど、ギター・ソロのときはギタリストに変身しますからね。そういうバンドはなかなかいないと思います。今作は"美と暴虐"という煽り文句をつけているんですけど、クリーン・ヴォーカルとデス・ヴォイスを使っていたり、美しいメロディのなかでツーバスがドコドコ鳴っていたり、そのコントラストはより明確になったんじゃないかなと。
-今作はあんきもらしさが凝縮された作品だと思います。
Fuki:荒金さん的にあんきもらしさって、どんなところですか?
-なんでもありなところじゃないかと思います。
Fuki:おぉーっ!
-世界的に見ても、聴いたことがない音像を突き詰めている印象です。
紫煉:実は俺もそういうふうに思っているんですよ。いい着眼点ですね。俺はほんとになんでもありなんですよ。現時点でやりたいことはやれました。
-特に2曲目「Unending Sorceress」は最新型のエクストリーム・ミュージックだなと。
紫煉:うん。エクストリーム・ミュージックって、バンドによってはいつ次の曲に移ったのかわからないアルバムもあるじゃないですか。それはそれでいいけど、自分たちは1曲の中に起承転結を感じてもらいたくて。
-作品トータルで曲のBPMが上がっている印象も受けましたが。
紫煉:演奏的にはスピードを感じられるところは意識して、作曲面でも、時間のコントロールは考えてます。同じ3分でも、密度の濃い3分はあっという間に感じるじゃないですか。どんなコード進行やフレーズをつけるかで、体感の速度も違うと思うんです。今作は35分くらいで終わるんですよ。
-ええ、そこは80年代のメタル・アルバムを思い出しました。METALLICAの『Ride The Lightning』、『Master Of Puppets』は全8曲ですが、聴き応え十分ですからね。
紫煉:そうですよね。それぐらいのほうが集中して聴けるし、35分の中に俺の人生を懸けたテクニックを詰め込んでます。1時間半と4時間の映画があったら1時間半で面白いほうが絶対いいじゃないですか(笑)。
-はい。他のみなさんは紫煉さんから曲が上がってきたときにどんな感想を持ちました?
Jill:前作は和風だったけど、"次は王道のヨーロピアンなものに戻る"と言われてたんです。クラシックのフレーズを入れた曲もあるし、こういうものをやりたかったと思いました。ここまで具体的にクラシックの要素を入れたものはなかったから。
紫煉:それは「Carry on singing to the sky」のことですね。去年Andre Matos(ANGRA/Vo)が亡くなったので、彼の曲みたいなものを作ろうと。
-紫煉さんはAndre Matosに強い影響を受けてますもんね。
紫煉:そうですね。メロディック・スピード・メタルは大御所が多くなっているけど、あんきもは世界的に見ても比較的若いのに、その音楽性を貫いているし......俺たちも(Andre Matosの遺志を)受け継いでいるからなという気持ちを込めました。Andre Matosはクラシックのフレーズを引用するのが好きだったから、彼が取り上げたクラシックを曲に入れたくて。Jillはパガニーニ(ニコロ・パガニーニ)の曲を以前からライヴで弾いていたので、"あの曲だ!"と思ってくれたらいいなと思って。ANGRAの「Angels Cry」もそうだし、X JAPANも「ART OF LIFE」にシューベルトの「未完成」を入れていて、俺もいつかその曲を取り上げたいと考えてたんですよ。
Fuki:「Unfinished」はX JAPANと同じ曲だと思う人もいるだろうけど、もとはシューベルトですからね。あんきもが音楽に影響を受けているバンドたちがシューベルトの「未完成」を引用しているので、我々もその系譜を継いだという。個人的にはAndre Matosが亡くなったことが報じられた日が日本時間で私の誕生日で、その日は郡山でライヴをやって、そこでANGRAの曲を少しだけやったんですよ。普段英語の歌詞は書かないけど、この曲に関しては絶対英語にしたくて。ANGRA好きの人にも伝わるんじゃないかと思ったんですよ。