LIVE REPORT
TRIPLE AXE
2023.07.11 @Zepp Haneda(TOKYO)
Writer : 吉羽 さおり Photographer:HayachiN、ヤマダマサヒロ、鈴木公平
SiM×coldrain×HEY-SMITHという3バンドによる"TRIPLE AXE"が、7月10日、11日にZepp Haneda(TOKYO)でワンマン公演"TRIPLE AXE ONE MAN SHOW 2023"を開催した(本原稿では7月11日の公演をレポート)。
2012年に3バンドの合同企画としてスタートした"TRIPLE AXE"はこれまで、ツアー形式や2019年には"TRIPLE AXE TAKEOVER '19"と題して全国各地のフェスに出演したり、TRIPLE AXE名義のワンマンや単独音源『15MANIAX』をリリースしたりと、単なる3マン・イベントとは一線を画した様々な形でのステージを展開してきた。
今回はタイトルにもあるようにワンマン・ショー。ステージ上には"TRIPLE AXE"の大きなバックドロップが掲げられ、3バンドぶんのドラム・セットが横並びで据えられている。転換時間がもったいないからという理由だそうだが、観客が入場してまず目にするこの光景で、ライヴへの期待値が跳ね上がるのは間違いない。そのうえ、声出しなどコロナ禍にあったライヴでの規制も解除されたとあって、大半が"TRIPLE AXE"Tシャツを着込んだフロアのボルテージは開演前から高め。そこにSiM、coldrain、HEY-SMITH、それぞれのお馴染みの登場SEをマッシュアップしたSEが爆音で流れると、会場は盛大な歓声やコールで包まれた。
まず登場したのは、SiM。「PANDORA」のギター・イントロからグッと拳を突き上げる観客を一気に沸騰させるように、MAH(Vo)が"来いよ!"と声を上げてフロアを揺さぶっていく。「Blah Blah Blah」での観客がもみくちゃになっての大合唱など冒頭からこのテンションで大丈夫なのか? というフルスロットルぶりでバンドも観客もせめぎ合っているが、全4曲で続くcoldrainへとバトンを回していく。セット・チェンジでの小休止はなし。観客の汗を引かせる間もなく"暴れろ!"というMasato(Vo)の一声で「Vena」から重厚なバンド・アンサンブルとグロウル&クリーンなヴォーカルで、フロアにうねりを起こした。こちらも全4曲を披露して、次なるHEY-SMITHへと繋いだ。"声を聞かせろ"と「We sing our song」でこちらも頭から怒濤の勢いでビートを加速し、ホーン・セクションがステージを駆け回ってパワフルに盛り上げる。「Fog And Clouds」から「Be The One」へとドープなアンサンブルで観客を熱狂の深みへと連れ立っていくステージで、興奮は右肩上がりだ。とはいっても、各バンド4曲ずつと少々物足りないんじゃないかと思っていたが、前半はまだそれぞれの自己紹介といったところだ。
折り返したライヴ後半は、"TRIPLE AXE ONE MAN SHOW"と冠したわけをそのサウンドで証明していく、3バンド/総勢15人のメンバーが入り乱れたまさに三つ巴状態でのステージに。"TRIPLE AXEというひとつのバンドとしてお見舞いしていくから覚悟して"とMasatoが話すと、MAHが"ケガはしないように。あとは好きにやろう"と言う。さらに"ダイバーは、周囲への感謝の気持ちと持って──"と言うMasatoに、猪狩秀平(HEY-SMITH/Gt/Vo)は"どうでもいい、ライヴハウスは自由だー"と、三者三様のMCで畳み掛けながら、それでいて3バンドをシャッフルしたメンバーによるサウンドはがっちりと噛み合った大車輪ぶりで、レアな組み合わせだからしっかりと目に焼きつけたいと思う一方で、その迫力に身体を動かさずにはいられないというジレンマが襲う。
TRIPLE AXEとしてリリースした「15MANIAX」に始まり、coldrainを軸にHEY-SMITHのホーンのアレンジが加わった「The Revelation」、SiMとホーン、さらにcoldrainのSugi(Gt/Cho)で分厚さを増す「GUNSHOTS」は途中、YUJI(HEY-SMITH/Ba/Vo)やMasato、Y.K.C(coldrain/Gt)が加わって華麗なソロも披露。MasatoとSugiが加わってのHEY-SMITH「California」はシンガロングのボリュームが上がっていって、会場の一体感、高揚感が凄まじい。何より、どのバンドのどの曲でも大合唱やクラップ、コールが上がる熱量の高さに、この3バンドとTRIPLE AXEが築いてきた信頼の高さが窺える。メンバーたちも、ここだけの新たなアレンジで聴かせたり、時にはアドリブを仕掛けたりと遊びをふんだんに盛り込んでいく。
これまでのTRIPLE AXEのライヴや3バンドでのレコーディングなどを振り返るMCをしながらも、このシャッフル・スタイルでも次々と曲を連投していく。今、何人ステージにいるんだ? といういつにもまして全員野球のSiM「BASEBALL BAT」、大きなバルーンがいくつもフロアに放たれるも、バルーンを弾く楽しさよりもジャンプやダイブやシンガロングにと忙しいHEY-SMITH「Radio」、さらにcoldrain「Final destination」ではMasatoと猪狩がフロアへとダイブし、もみくちゃになりながらその声を上げる。
MCでも語っていたが、SiMは"DEAD POP FESTiVAL"を、coldrainは"BLARE FEST"を、HEY-SMITHは"HAZIKETEMAZARE FESTIVAL"をそれぞれの出身地で立ち上げ、ロック・バンド主催によるフェスとして大きく育て上げてきた。もともとTRIPLE AXEのきっかけとなったのは、10-FEET主催の"京都大作戦"で、当時まだメイン・ステージに立っていなかった3バンドが、自分たちが最高にカッコいいバンドだと証明すべく立ち上げたのが始まりでもある。それが今やそれぞれが、それぞれのやり方でフェスを作り上げ、時にこうしてタッグを組み、タフにキャリアを積み上げている。MCで日本のロック・シーンの中心にいるのがこの3バンドであり、TRIPLE AXEだという自負と、その思いでこれからも共にシーンを盛り上げていくことを叫び、ラストはSiM「f.a.i.t.h」、そしてHEY-SMITH「Come back my dog」の2連発を見舞った"TRIPLE AXE ONE MAN SHOW 2023"。対バン・ライヴを超え、常に新しい興奮を求めてその先を提示していく3バンドの眼差しが感じられたステージとなった。
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