LIVE REPORT
Bowline 2015
2015.04.11 @新木場STUDIO COAST
Writer 山口 智男
花曇りの日曜日。ひょっとしたら雨が降るかもしれないという。新木場の駅に降りて、冷たい空気を胸いっぱいに吸いこんだときはコートを着てきてよかったと思ったのだけど、トップバッターのRADIOTSの演奏が始まったとたん、会場の空気が一気に上がって、厚着してきたことを後悔した。
髪をツンツンに逆立てたYOSHIYA(Vo)を始め、70~80年代風パンク/ハードコア・ファッションでキメた野郎どもが"届けたい!もっと届けたい!!"という熱い想いとともに奏でるアイリッシュ・パンク~ストリート・パンクに観客は早速、反応。モッシュとダイヴで応えると、それに刺激されたのか、ラストの「DREAM OF WORLD」でYOSHIYAはスタンディングの客席にダイヴ! そしてクラウド・サーフィンしながら歌う熱演で客席を盛り上げ、40分の持ち時間を締めくくった。
毎回、1組のアーティストがキュレーターを務め、TOWER RECORDSとともに出演アーティスト、会場などを決めるライヴ・イベント"Bowline"。BRAHMANがキュレーターを務める今回は4回目にして初めて、岩手・宮古、福島・南相馬、宮城・石巻、そして東京・新木場と4ヶ所を回るツアー形式の開催となり、ツアー・ファイナルとなるこの日はBRAHMANが提案した"第四世界"というテーマの下、なぜか今では少数派になってしまったピン・ヴォーカルを擁する4人組バンド計8組がSTAGE"QUARTETTO"に集結。また、Bowline初の試みとして、THE STALINの遠藤ミチロウら、日本のパンク/ハードコアの歴史に大きな足跡を残したバンドのフロントマンらがSTAGE"QUARTER"で弾き語りのパフォーマンスを披露した。
メイン・ステージと言ってもいいSTAGE"QUARTETTO"では2曲目以降、ヴォーカルのYANGがずっと客席で咆哮するその周囲で血気盛んな観客がモッシュしているというある意味、異様とも言えるライヴを繰り広げた横浜のハードコア・バンド、FIGHT IT OUT。NEW ORDERの「Blue Monday」のカバーや新曲も交えながら、ファンクとハードコア/スラッシュのミクスチャーとも言えるサウンドのかっこよさを改めてアピールしたベテラン、COKEHEAD HIPSTERS。それまでモッシュしていた観客が最後には、揺るぎない信念を感じさせるその熱演に惜しみない拍手を贈った札幌のベテラン・ハードコア・バンド、SLANG。そしてキャッチーな歌ものやダンス・ナンバーも交えながら唯一無二のデジタル・ハードコア・サウンドでこの時点でこの日1番と思しき数の観客をノックアウトした上田剛士(Ba / Vo)率いるAA=といった、つわものたちが熱演を繰り広げていった。
パンクを根っこに持ちながら、それぞれに自分たちならではと言える表現を追求している多彩な顔ぶれに日本におけるパンクの発展を見ることもできるのでは......などと思っているうちにイベントはあっという間に後半戦に突入。"JAPANESE R&E(リズム&演歌)"を掲げる怒髪天は"うるさいのと早いのが好きなキッズは早口でやかましいおじさんは嫌いですか?"、"AA=とSiMの間ですよ。軽いイジメです"と彼らが感じている若干のアウェイ感を笑いのネタにしながら、男の気持ちを笑いとペーソスとともに歌い上げる曲の数々と増子直純(Vo)の芸人顔負けのMCで観客の気持ちを鷲づかみにしていった。さすが昨年、結成30周年を迎えたベテラン! そして、"みなさんにとっても我々にとっても嬉しいお知らせかもしれません。次で最後です"とダメ押しで笑いを取ると、ライウでやるたび物議を醸しているという新曲「宜しく候」を披露。バシャーン!バシャーン!バシャーン!という銅鑼の連打で始まったあと、ポルカ調も含め、奇っ怪な展開を見せる組曲風の衝撃ナンバーはぎっしり詰まった客席をダメ押しで盛り上げた。
"起きろ!新木場!"
開催2回目となる前々回、キュレーターを務めたSiMはMAH(Vo)の雄叫びからいきなり「Get Up, Get Up」「Blah Blah Blah」をたたみかけた。早速、激しいモッシュが起こった客席にバンドは「Fallen Idols」「GUNSHOTS」とテンションがさらにアガることは必至の曲を連続投下。"アホでも踊れるという噂の"とMAHが紹介したその「GUNSHOTS」では"両手を貸してください。恥ずかしがっている人、誰も見てないんで(笑)"と呼びかけ、そこにいる(ほぼ)全員でモンキーダンスを踊った。そして今回、出演バンドに選ばれたことを"誇りに思うし、自信になりました"と語ると、トリ前を任されたプレッシャーに負けずに"先輩の前でも物怖じせずに思いきってやりたい。傷跡を残したい"と語ると、1番有名な曲やりますと、ラスト・ナンバーに選んだのが「KiLLiNG ME」。しかし、観客の反応を見たMAHそんな盛り上がりじゃトリのBRAHMANにバトンを渡せないと判断したのか、なんとイントロで演奏をストップ。"全然ダメだ"と、もう1度最初から演奏しなおすと、今度は満足したのか、いきなり客席にダイヴ! 最高の熱狂を作り、BRAHMANにつなげた。
そして開演から6時間40分。結成20周年を記念して、バンドの歩みを切り取った映像が映し出され、今回のキュレーターとヘッドライナーを務めるBRAHMANがついにステージに現れた! いつの間にか客席は身動きするスペースもないほど観客がぎっしりと入っている。いきなりシンガロングとモッシュが起こった1曲目の「初期衝動」からラストの「ARTMAN」まで、ひと言もMCを挟まず、たたみかけるように、ただただ演奏しつづけた新旧の全17曲。そのストイックさこそがまさにBRAHMANと言えそうだが、ルーツィーあるいはエスニックな音楽の要素も交えながら、それがパンク/ハードコアの延長線上でBRAHMANとしか言えないひとつの世界観に収斂するようなところにも彼ららしいストイックさを感じずにいられなかった。
観客の気持ちをひとつにするためにあれこれやったり、ひとつになることを求めたりする必要はない。信念と情熱だけ持って、観客にぶつかっていけばいい。そんなことを思わせるパフォーマンスは、ヘッドライナーにふさわしい貫禄を感じさせるものだった。
1曲目から続けてきた、どこで終わってもいいと思える渾身の演奏は、TOSHI-LOW(Vo)が客席に飛び込んだ「警醒」からさらに力強いものになった。そして、そのまま観客に支えながら、TOSHI-LOWが歌いつづけた「霹靂」、そして「ARTMAN」で演奏はカオスに突入!! そのまままるで超新星爆発を起こすように突然、大団円を迎えた。ステージ後方のスクリーンに映し出された"See You Next Bowline"の文字がアンコールがないことを告げたが、壮絶とも言える、あれだけの熱演を見せつけられたのだ、アンコールがないことを残念がる観客はほとんどいなかったはず。
会場の外に出ると、春とは思えない冷たい空気が火照った身体に心地よかった。
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