DISC REVIEW
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2008年にスタートした上田剛士ソロ・プロジェクト AA=が、10周年を迎える今年、キャリア初のベスト・アルバムをリリースする。これまでの5作のアルバムからセレクトした19曲で、ライヴでも多くプレイされる曲が中心となったが、今作は5人のメンバー──上田剛士と、ヴォーカルに白川貴善(BACK DROP BOMB/Noshow)、ギターに児島 実(ex-THE MAD CAPSULE MARKETS)、ドラムにZAX(THE BONEZ/Pay money To my Pain)、マニピュレーターに草間 敬を迎えた、バンド・スタイルでの再録音。オリジナル音源の制作はアーティスト、上田の実験場であり、クローズドな環境で完結させることがほとんどのなか、革新的なサウンドを生み落とした。しかしこの10年でその曲たちは、メンバーの肉体を通してハイブリッドな進化も遂げたのだ。今作では、血肉を得て、さらにしなやか且つ凶暴に、そしてエモーショナルに進化したアンサンブルの熱量をパッケージしている。高い演奏スキルで曲を再現するのではなく、曲の芯を捉え、新たな息吹を吹き込んでくれる、信頼の置けるメンバーがいるからこその作品だろう。「LOSER」で始まり、ライヴでのセットリストを思わせる並びとなった今作。オールタイム・ベストでいて、緊張感と高揚感があり、止まることなく進化を続けるAA=の最新作と言っても過言でない作品だ。 吉羽 さおり