LIVE REPORT
[GEKIROCK CLOTHING Presents"WEAR THE MUSIC"DAY1]
2024.05.12 @渋谷 WOMB
Writer : 内堀 文佳、横山 開 Photographer:Kimu/Kanda Yukiya
音楽メディア 激ロック/Skream!を有する激ロックエンタテインメントが運営するロック・ファッション発信基地 GEKIROCK CLOTHING(通称:ゲキクロ)が、渋谷 宇田川町に店舗を構えてから10周年を迎えた。これを記念し、同セレクトショップおよび激ロックエンタテインメントとゆかりのあるアーティストたちが集結したイベント[GEKIROCK CLOTHING Presents"WEAR THE MUSIC"]が渋谷 WOMBにて2日間開催。DAY1はまさに"激ロック"という名の通り、激しいサウンドを鳴らすバンドを中心に構成され、2ステージで13組のアーティストが熱いライヴを繰り広げた。
メイン・ステージにて祝宴の幕開けを飾ったのはEMANON。勢いのあるストレートなバンド・サウンドにキラキラとしたシンセ、そして可憐さと力強さを併せ持った英里沙の歌声が響く「loose end」から、ぶーちゃんのベースラインとKanaのギター・ソロが光る、ジャジーな雰囲気を纏った「overflow」でパーティーが華やかにスタートする。続けて「EMPTY PRAYERS」、「DAYDREAM」でより彼女たちのクールなロック・バンドとしての顔も見せたかと思いきや、"次はみんなで一緒に踊れる曲を持ってきました"と英里沙が両手にペンライトを持ち「Cheeky Anthem」へ。10年間アイドルとして活動していた英里沙と、それぞれにキャリアを積んできたメンバーが集まって結成されたEMANONならではの、MIXやペンライトを使った振付などのアイドル的な要素とアッパーなバンド・アンサンブルが組み合わさった1曲だ。ペンライトを持参してきたファンはもちろん、一緒に手を振って楽しんでいた、きっと初めて彼女たちを観たであろう観客もみなそのまま踊らせるように「リグレットルール」、そして最後にもう一度「loose end」を投下し、オープナーとしての役目を完遂した。
LOUNGEステージのトッパーを務めたのはMARKET SHOP STORE。すでにパンパンに埋め尽くされた場内の熱を1曲目「SCISSOR」で爆発させ、その勢いをキャッチーなコールが印象的な「ピグマリオンランド」、洒落たギター・リフが耳に残る「メタモルフォーゼ」でますます加速させる。普段はDJイベントがよく開催されている会場なので、フロアの天井には色とりどりに光る電飾が張り巡らされており、通常のライヴハウスでのライヴよりも観客が照らされていることで、それぞれが全力で楽しむ姿がよりショーの一部のように見えたのが面白かった。ステージからもきっといつもより観客の顔が見えていたからか、メンバーとオーディエンスの距離感がまたさらに近くなっていたような気がする。そんななかでMAME(Vo)が真っ青なロング・ヘアを振り乱しながら早口で捲し立てたり、キュートさもあるパワフルな声を張り上げたりして「メス」、「ライファー」と爽快なリズム感の楽曲たちを繰り出していけば、フロアのうねり、コーラスの音量は大きくなるばかり。ラスト「花に例えたら」まで、バンドも観客もテンションがひたすらに急上昇しっぱなしだった。
次にメイン・ステージに登場した東京初期衝動は、彼女たちらしいアグレッシヴな新曲「Last secret day(仮)」でスタート。そのまま一切アクセルを緩めることなく、しーなちゃん(Vo/Gt)が観客の上をサーフしながら喉が張り裂けんばかりに叫ぶ「高円寺ブス集合」で駆け抜けていく。ヘヴィなラウド~メタル・バンドが多く、パンクな彼女たちにとってはアウェイなところもあったこの日だが、少し手段は違えど音楽で感情を激しく爆発させたいという気持ちは全演者もフロアもきっとみな同じ。初見の観客の心も掴むのはそう難しくはなかっただろう。セットリストに入れていた「untitled」を"辛気臭い"という理由で急遽「メンチカツ」に変更したり、「恋セヨ乙女」で今度はしっとりと乙女チックな面を覗かせたり、まさに恋する女の子の複雑な心境のように観る者を振り回す彼女たちの虜になっていたことが、突き上がる拳の数、歓声の大きさで表れていた。まれ(Gt)、あさか(Ba)も全力で声を張り上げ、照明もめまぐるしく回転して疾走感を演出した「ロックン・ロール」まで、彼女たちの"ロックンロール"が貫き通されたセットとなった。
ぎっしりとフロアを埋める人の熱気と濃いスモークで満たされていたLOUNGEステージでRENGEKIのターンが始まる。"RENGEKI"としては昨年9月から活動を開始したばかりの彼らの決意や貪欲さを表した「EGOIST」を皮切りに、ヘヴィなバンド・サウンドとグロウル、キャッチーな電子音とクリーン・ヴォーカルで作るメリハリが特徴的な「Origin」、「蛇舌」で拳、ヘドバン、モッシュを煽り、会場の一体感をどんどん高めていく。メランコリックなピアノの旋律からブルータルな高速ギター・プレイとドラミングへとなだれ込む「憎愛と空の偶像」ではシンフォニック・メタルのエッセンスを前面に押し出し、デジタル色の強かった先の3曲との対比で音楽性の振れ幅の広さを見せつけると、Kazumi(Vo)の"掲げろ!"という咆哮を合図に「RISING」へ。フロアから一斉にメロイックサインが挙げられた光景がよく似合う、パワー・メタル的な熱さを放つギター・リフに、このオーディエンスの気持ちが昂らないはずがない。そしてラストは彼らの新たな始まりを告げた1曲「転生」でフィニッシュ。今回初めて彼らに出会った人たちにも、今後の活躍に期待させる30分だった。
メイン・ステージ3番手はMAZE。ゴメスとアサギのスクリーム、オートチューンが掛かったUZUMEとSAYAのクリーン・ヴォーカルに、迫力満点の生バンド、エレクトロな同期が組み合わさったアッパーチューン「IDOL RIOT」でスタート早々観客を踊らせまくる。そこから荘厳なストリングスと共にさらにブルータルに畳み掛ける「THE DESTROYER : [catastrophe]」、ファニーでキュートな「MADNESS PARADE」と、ラウドロックを軸とした幅広い楽曲たちを、かわいらしさとかっこ良さを兼ね揃えたダンスという、アイドルだからこそできる表現と併せて見せていく。熱量をまだまだ急上昇させるべく「ULTIMATE GORILLA BOMBER」を放つ......が、ここで同期やギターにトラブルが発生。しかし、そんなハプニングをものともせず4人は踊り歌い、Toshihiro(Ba)とTAMA(Dr)の地響きのような演奏もさらにパワーが増したように感じられた。フロアもむしろそんなレアなバージョンを楽しんでやろうと全身全霊で拳を突き上げる。機材が復旧すると、ラスト「ANIMUS」まで美メロとスーパー・ヘヴィなブレイクの応酬が展開された。
場内を満たすスモークがさらに濃くなったLOUNGEステージ。その靄の奥、舞台上に姿を現したのはDAMNEDの5人だ。1曲目「Thanatosis」のピアノとストリングスによるダークなイントロ、そして白塗りメイクでひと際目を引く一音(Vo)の極悪スクリームから、一気に会場を自分たちの世界観に引きずり込む。彼らを今回初めて観る人も"曲なんかわかんなくても身体動かすぐらいできるだろ?"(一音)とショーに巻き込み、「SET ME FIRE」でまた一段階激しさのギアが上がったような轟音を叩きつけると、ぎゅうぎゅう詰めの観客のヘドバンは右肩上がりに勢いを増していく。とはいえ、彼らの楽曲はただ一辺倒にヘヴィなだけではない。新曲「毒愛」では彼らのキャッチーでメロディアスな側面がフィーチャーされていたり、続く「Grimnir」ではKou.(Gt)と酔花(Gt)のツイン・リード、一音のクリーン・ヴォーカルが爽快なまでに高らかに響いていたりして、フロアのジャンプやクラップを誘発する。最後は再びヘヴィに「Fla:ill」、「VELTRO」を投下し、ラスト1音が止むまでDAMNEDの世界を見せつけていった。
メイン・ステージ4組目は、ゾンビ・バンドによるリハーサルの時点ですでにフロアの盛り上がりが絶好調だったBroken By The Scream。クリーン・トーンとグロウル&高音スクリームの圧倒的なコントラストで構成された「恋は乙女の泣きどころ」でライヴをスタートすると、ブレイクダウンでは早速ハーコー・モッシュが発生。初っ端からトップ・ギアで駆け抜ける。その勢いのままデス・ヴォイスで圧倒するブチ上げ曲「Do・Do・N・Pa!!」へと続き、オーディエンスの体力はさらに削られることに。MCを挟んで披露したヴァイキング・メタルな「荒れた海路はキミ日和」のサビでは、フロアに座った大勢のオーディエンスが一斉にオールを漕ぐ光景が広がる。「逆転の鐘は鳴る」は、Aメロの七々扇ツバキと御子神シズクのクリーンと、それとは対照的なサビの野月平イオと鷹屋敷ヤヨイのスクリームの掛け合い、また間奏のダンスが印象的。「夢花火」も、4人の透き通った歌声が響き渡る箇所もあれば、ウォール・オブ・デスが繰り広げられるようなヘヴィなパートもあり、最後まで彼女たちの持ち味である美しさと激しさがクロスオーバーした魅力が存分に感じられる、絶叫と熱狂の空間を届けてくれた。
LOUNGEステージ4番手は、元HAGANEのUYU(Vo)とMayto.(Gt)を擁し、昨年10月に始動したばかりのMana Diagram。"激ロックとは何か......Mana Diagramのことだー!"というUYUの気合十分な叫びをきっかけに、メロディアスな旋律に乗せたUYUの凜とした歌声が突き抜ける「Glitter wind」で幕を開けると、爽人-Mint-(Gt)とMayto.によるツイン・ギターのソロの応酬がメタル魂を震わせる。オーディエンスによる"オイ!"コールで早くも一体感が生まれ、勢いそのままに「Jump Again!!」へ。Koki(Dr)によるパワフルさと攻撃性を兼ね備えたドラミングと、Yusuke(Ba)の小気味いいフレーズが光るベースラインで、美しいメロディとのコントラストも非常に心地よく、激しい曲調ながらつい酔いしれてしまう。MCを挟み、UYUにスポットライトが当たるとフロアは静寂に包まれ、"あなたは、その命を懸けても守りたいものがありますか?"というセンチなセリフでスタートしたのは「ワールズエンド・シーン」。刹那的な泣きメロで聴かせたあとは「FUKANZEN-GO MY WAY!!」、「SHOCKS - 衝撃 -」と再びアッパーな楽曲で大きな盛り上がりを生んだ。それぞれ豊富な活動歴のあるメンバーが揃っているのもあり、圧巻のバンド・アンサンブルを繰り広げ、今後の活動への期待がひたすらに募るステージだった。
打ち込みに乗せた澪(Vo)のささやきが印象的なSEが流れるなか、クールな出で立ちで登場から会場の空気を一変させ、緊張感をもたらしたNAZARE。開幕早々、澪のハイトーンとファルセットが響き、妖の8弦ギターが重厚なメタル・サウンドを繰り出す「IDEAL」で、ブルータルな世界へと誘われる。続く「a Vain you」、「Rewrite」ではデジタル色の強いアッパーな展開を繰り広げ、MCでは多くを語らず、鳴りやまない歓声に応えるかのようにコール&レスポンスでますますオーディエンスの熱を高める。和テイストなイントロが耳を惹く「我、愛された修羅」から「Deadly」へと繋ぐと、凶悪サウンドと挑発的な歌詞が場内をよりブルータルな色に染め上げていた。妖の背面ギター・ソロも飛び出した「SAD[ist.]」、怒濤のビートとキャッチーなサビの「Break it down」と、このWOMBという会場の雰囲気とマッチする、打ち込みメインのアゲ曲を最後にライヴは終了。硬派な魅力はもちろん、どこか痛快な清々しさをも感じさせてくれた。
LOUNGEステージ、5組目はRisky Melody。1曲目に相応しい「REBOOT」で華々しく幕を開けると、狭いステージながら躍動感満載な楽器隊に負けじと早々にサークル・ピットやクラウドサーフが発生するほどの盛り上がりに。"誰のファンとか関係ない、ノリなんて関係ない!"というALICE(Vo)の一声をきっかけに始まった「To Survive」では強い意思を誓う歌詞を歌いながら、オーディエンスとグータッチをしたり、優しく語り掛けるような笑顔でフロアと対峙していたメンバーの姿が印象的だった。続く「アイのカタチ」ではALICEがジャケットを脱ぎ、フロアの熱もますますヒートアップ。"渋谷のみなさん、ひとつになろうか"の呼び掛けで始まった「ALL AS ONE」ではステージの天井を突き破るほどのシンガロングでバンドと観客の結束力が強固なものであることを証明する。リスメロ(Risky Melody)とゲキクロ(GEKIROCK CLOTHING)がそれぞれ10周年を迎えたことに触れたMCのあとは、相川七瀬が作詞を手掛けた話題のメジャー・デビュー・シングル「いたいいたいあい」、バンドのアンセム「Risky Melody」を畳み掛けフィニッシュ。MCで放った"日本で一番ライヴをやっているガールズ・バンド"という言葉に恥じぬ圧巻のパフォーマンスを繰り広げてくれた。