MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

AIR JAM 2012

2012.09.16 @国営みちのく杜の湖畔公園 『風の草原』

MEANING

ジブリのBGMにのって登場したMEANING。HAYATO(Vo/Gt)のピンクの蛍光色の髪が風になびいてよく映える。1曲目は「Just Another Death」。AIR JAMという神聖なる地に立つ自分たちを"似合うっしょ?"と自身満々にHAYATOが語った。初っ端から観客が入り乱れるフロアでは、ペットボトルから吹き出す水しぶきや砂ぼこりが舞い、まわりのスタッフも大忙しだ。「My War」では会場全体がコブシを挙げる。"俺はハイスタよりB'zよりだったんですけど(笑)ハイスタ知らなくてもすごさが伝わるっていう"この場でなんてことを言う......と思ったが、そういった人も少なからずいるということだ。話はMEANINGのライヴから逸れるが、90年代当時に活躍したバンドが今もなお誰よりも支持を集めているということ、解散したバンドが久方ぶりに復活した時の気持ちは、当時を知るファンと次世代の若者とでは、想いの度合いや感覚が何か違う。モッシュ・ピットで熱狂する大人たちの力強さがそれを物語っている。それでも共に喜び、涙したい。AIR JAMのステージは隣り合っていて、フル・タイムで全アーティストの演奏を聴くことが出来る。大人も子供も同じ場所で、同じ音楽を聴く。これが"世代を繋ぐ"というテーマのもとつくられたAIR JAMの醍醐味なのだ。

東北ライブハウス大作戦のチャリティー・グッズとして制作された「The Unbroken Heart」。"うぉーい!!"という唸り声がずっしりと体内に響く。"ライヴハウス支えてやって!"そう言うHAYATOの優しい顔が、ステージ脇の大画面に良いアングルで映し出された。ラストは「HOPE」。フロントの4人が横一列に並び、絶景を見せる。「Just Another Death」「Knock It Off」「My War」「The Unbroken Heart」「HOPE」......彼らのシャウトにはちゃんと意味がある。セットリストの曲名を繋げると、1つのメッセージになっている気がした。

(羽村 萌)


RIZE


ビッグ・サイズのAIR JAMオフィシャルTシャツの袖をざっくり切りリメイクしたダボダボのタンクトップを着てJESSE(Gt/Vo)が登場した。あのイカつい容姿で、AIR JAMの開催を"仙台にディズニーランドが来たようなもの"と夢みる少年のような表情で例えた。「Dream Catcher」で、"夢みて何が悪いんだよ"と熱弁するJESSEに何人の若者が感銘を受けただろうか。少なくともその1人である私は、今この瞬間から、何かを始めなければいけないという衝動に駆られた。"震災支援をファッションだと考えているヤツらがいる""関東のヤツらは支援ってブームが好きだからよ"など彼が連ねる言葉にギクっとし、心にグサっと突き刺さる。そんな感情で聴く「heiwa」は、もはやただの音だけではなかった。音にメッセージがノッているというより、メッセージが音になっているというか......音楽で人が変わるなんて綺麗ごとだと思っていたけど、そんなことはないのかもしれないと思わされる。今のこの現状を知った上で、現地の空気を噛み締めながら、初めて当事者としての責任の重さに気づいた。"平和"と口に出すことって、生きているうちにあまりない。アーティストが歌詞を音にのせることには意義がある。これこそ、今の音楽の在るべき姿なのではないだろうか。多くの人が入り交じるモッシュ・ピットの中からJESSEのむちゃぶりで抜擢された1人の一般客に、会場の視線が集まる。このまたとない絶好の機会をつかんだラッキー・ボーイは、与えられた時間をしっかりと自分のものとし、AIR JAM 2012のステージで暴れ散らし、その勇姿に大歓声があがった。ラストは「RESPECT」。ゴリゴリの重低音が心地いい。手を大きく広げたり、会場の観客1人1人に指を差して訴えかけるように歌うJESSEの熱血っぷりに、男気を感じた。彼らの日本を愛する気持ちはそれぞれの心に伝わっただろう。特に今日という日は、RIZEの曲が他人ごととは思えなかった。毒があるが芯の通った、人間味に溢れるライヴを目にしたものは、次に何を思う? 明日から何を始める? 自分なりに、日本の平和を考えてみる。

(羽村 萌)


KEMURI


Hi-STANDARDやHUSIKING BEEの活動再開に続き、彼らの再演に勇気付けられた人は多いだろう。日本におけるスカ・パンクの代名詞とも言えるKEMURIがAIRJAM出演で帰ってきた。スタート前から彼らの帰還を今か今かと待っている観客で早々とスタンディング・エリアは入場規制が掛かる。
割れんばかりの歓声の中、KEMURIは"今まで何もできなくてすみません。今日からまたはじめさせてもらいます"という伊藤ふみお(Vo)のMCから1曲目にプレイされたのは「prayer」。私は仙台の生まれだが、幸いにも震災で家族や友人を失うことはなかった。しかしKEMURIから贈られたこの"今を生きる"というポジティヴな"鎮魂歌"にはグッときた。そして「New Generation」や「Knockn' On The Door」と続くのだが、彼らのことを良く知っている人からするといわゆる"フェス向け"ではないセットリストでこの日に望んでいることは、彼らが今東北に届けたい、ここで演奏すべき曲を選んでいるのだなと感じさせる。AIR JAMへ出演できたことへの感謝を述べた後に"この曲を贈る"と言って演奏された「白いばら」は快晴のこの日の空に眩しく響いた。
伊藤ふみおはステージを縦横無尽に動き回り、久々のKEMURIとしてのライヴを誰よりも楽しんでいるように見えたし、ここ数年Hi-STANDARDの横山健のバンドに参加している南(Gt)のギターのカッティングは当時よりキレていると思わせる。AIR JAMの後にツアーを予定しているが、それはKEMURIとして充分な音を出せる自信からだろう。
"知っている人は歌ってくれよ!"と「ato ichinen」から、そう彼らのこの曲を待っていたであろう「PMA」、最後は定番の「along the longest way」。KEMURIファンとしては感涙必至の流れで会場中をまさに"PMA"の空気で包んだ。

(伊藤 啓太)


10-FEET


"ハイスタがなくてもー!バンドはあったかもしれないけどー!ハイスタがなかったらー!10-FEETはなかったー!"Hi-STANDARD への敬意を示す言葉から始まった10-FEETのライヴ。「super stomper」のイントロ、あのベースのメロディが聴こえた瞬間から体がうずうずして来る。「goes on」では後ろから一斉に真ん中のモッシュ・ピットへ飛び込むファンにつられて、気づけば自分も群れの中へ。至る所にできたサークルの中で、砂まみれにもみくちゃになりながら、満面の笑みをこぼす彼ら彼女らの間に、年齢も性別も関係ない。陽が落ちて、気候も涼しくなってきた頃、しっとりと「風」を聴く。"1年後、1ヶ月後、1日後、1秒後......未来のことはわからない"そう語るTAKUMAの声は力強く説得力があった。初めて聴いた「シガードッグ」では"ありふれた願いや悲しみは今日も世界に溢れて 君は今ここにいないけれど僕は少しだけ旅続けてみたんだ――"と、直接的な意味合いはなくとも、AIR JAMに掛ける想いを連想させる歌詞にいちいちグッとくる。この曲が始まるとさっきまで騒がしかった会場が、一気に静まり返った。彼らの想いは1人1人の心にしっかりと届いただろう。そしてこれだけでは終わらないのが10-FEETだ。お馴染みの「1sec.」で再び会場が熱し始める。人と人とが手を繋ぎ、みるみるうちに大きなサークルが完成した。その中央には、さらに輪を広げようとまわりを巻き込み指揮をとる男子がいたり、肩車されてダイブの準備をする女子がいたり様々だ。ラストは「RIVER」。まさに"ベスト"な最強のセットリストで、10-FEETの世界にどっぷりと浸った40分間はあっという間だった。"ありがとうとごめんなさいでここまで来ました、10-FEETです!"このキャッチ・フレーズの通り、素直なバンドだと心から感じた。20代前半のロック・ファンをリアル・タイムで先導する存在であるし、彼らの先輩バンド、いわゆる"AIR JAM世代"の音楽を教えてくれた存在でもある。90年代と"ゼロ"年代を繋ぐ彼らの音楽は、いつまでも色褪せることを知らない。

(羽村 萌)


BRAHMAN


夜が更け会場に彼らの登場を告げる同じみのSEが流れ始めると凄まじい歓声と共に拝むように手を掲げるファンで会場は溢れかえる。BRAHMANの登場だ。
メンバーが1人1人定位置に着き、RONZI(Dr)が「TONGFARR」のイントロに繋がるドラムを叩き始めると、観客の煽りと共にTOSHI-LOW(Vo)がゆっくりとステージに現れる。TOSHI-LOWと共に大合唱する観客、そしてサビが終わり、2番に入ると思いきや演奏が止まり、"BRAHMAN、はじめます!"とTOSHI-LOWが始まりを告げるとここからが圧巻。「The only way」から「SEE OFF」、「BEYOND THE MOUNTAIN」とキラー・チューンをブレイクを一切入れずに一気に畳み掛ける。MAKOTO(Ba)は1曲1曲に全てを出し切るかのように、しかし安定したプレイと、叫びにも似たコーラスを入れ、KOHKI(Gt)もそれに負けじと音を刻み続ける。
ハードコアの激情と叙情的なメロディがぶつかり合い、観客もそれに応えすさまじい数のダイバーが舞い続ける。これはBRAHMANにしか作りえない戦場だ、激しいが決して暴力的ではない、こんなピースフルな戦場が世界のどこにあるだろうか。
"静と動"のコントラストが際立つ「ANSWE FOR・・・」で会場のテンションはピークを迎え、演奏し終えるとTOSHI-LOWが静かに語りだす。最近のライヴの定番となっている、しかし昔のファンがなんの前情報もなく聞いたら信じられないであろう彼の"面白い"エピソードはこの日は歯にまつわることであった、多くは書かないが彼の歯がもし落ちていたら拾ってあげて欲しい。
そしてTOSHI-LOWやBRAHMANが震災から今まで行っている活動。この日の前日に福島で行われたライヴ会場で"音楽に救われたから、音楽のことに使って欲しい"と"東北ライヴハウス大作戦"のために福島の方から手を付けずに渡された、東電からの"見舞い金"の話。そして昨年と今年のAIRJAMだけではなく、Hi-STANDARDをこれからも見続けたい、だからみんなもその声をあげるべきだと観客へ、そして"ハイスタ"へ向けた言葉。その真摯なMCに続いて「霹靂」をエモーショナルにプレイし、「賽の河原」で会場をもう1度沸騰させステージを降りていった。そして昨年に続きHi-STANDARDへ最高のバトンが渡された。

(伊藤 啓太)


Hi-STANDARD


MCのGeorge Williamsと共に観客が彼らを呼び込むと、会場はやはりこの日1番の歓声で彼らを迎え入れる。
昨日よりももっとリラックスした表情でゆっくりとステージに現れる。難波(Vo/Ba)が"成長していこうぜ!これからもさ"と言ってからの「GROWING UP」でスタート。リズムと共に会場の今や大きくなったキッズたちも跳ね回る。そして初日はアンコールで演奏された「stay gold」がプレイされると尋常じゃない数のダイバーの嵐。"輝こうぜ!"という難波のMCに観客もしっかりと応える。そしてまさか演奏されるとは思っていなかった人が多いはず、1stミニ・アルバムの『Last Of Sunny Day』から「Who'll be The Next」が演奏されるとオールド・ファンもヤング・ファンも入り混じり横山健(Gt)のコーラス・パートを大合唱!この日の3人、特に表情を見れたフロントの2人は昨年のような張り詰めた感じとも、昨日感じたものとも違う、この日この会場で"Hi-STANDARD"をプレイしているこの時間をかみ締めているように感じた。そんな彼らの気持ちを語るかのようにセンチメンタルなナンバーの「Stop The Time」、そして「my heart feels so free」をプレイ。
終盤にさしかかると、AIR JAMとHi-STANDARDのこれからについて語り始める。BRAHMANのTOSHI-LOWの熱い言葉の後だけに、"この先"への発言も期待したが、明確な回答は返ってこなかった。彼らそれぞれの音楽活動もある中で、イベントはもちろん、バンドとしてたくさんのファンからの期待が詰まった"看板"を背負うことは、困難であるに違いない。
満天の空の下、会場にいる全員が様々な思いを込めて歌った「starry night」でこの日の本編は幕を閉じる。アンコールではElvis Presleyのカヴァー「Can't Help Falling In Love」、昨日に続き「brand new sunset」、そして最後に演奏されたのはこの日も「mosh under the rainbow」。年齢、性別、住んでいる場所や知り合いかどうかなど関係なく、そこにいる人たちが肩を組み作り上げた大小様々なサークルが会場を埋め尽くした。この光景を東北で見れたことを一生忘れないだろう。

(伊藤 啓太)


  • 1