MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

神使轟く、激情の如く。× ナノ

2022.05.11UPDATE

2022年05月号掲載

神使轟く、激情の如く。× ナノ

神使轟く、激情の如く。:実久里ことの 生牡蠣いもこ 涙染あまね 三笠エヴァ 二日よいこ TiNA
ナノ
インタビュアー:吉羽 さおり Photo by 上坂和也


年300本やって、同じライヴがないと胸を張って言える(エヴァ)


-いもこさんはメンバーの言葉を作詞に生かしていくということでしたが、メンバーからの言葉で気づかされたこととか、こんなことを考えていたんだなと思えたことはありますか。

いもこ:たくさんあるんですけど、例えば「瞬間成仏NEXT YOU→」(2019年リリースの8thシングル)という曲があるんですが、これはメンバーひとりひとりの過去を歌った曲なんです。メンバーそれぞれに質問をして、みんながどうやって生きてきたかを聞いたときに、三笠の言葉にすごく驚きましたね。もともとは普通に就職して働いてきたけど、音楽をやるために上京して。当時はお金も当てもないギリギリな状態だったけど、それを"生きてる"って感じる感覚は三笠しかいないなと。そういう自分にはない感覚も歌詞に書けるのは、このグループでしかないものだなって感じましたね。自分ひとりでは書けなかった歌詞はすごく多いと思います。

-ひとりひとりの人生の掛け算が曲になり、音楽になっているんですね。

ナノ:すごいですよね。ナノのようなソロのアーティストだとひとりの経験だけど、それが6倍、掛ける6となるのはすごくうらやましいところで。

エヴァ:6人の意思が乗っているということで、響く人もそのぶん増えるんじゃないかなって思います。

いもこ:自分がネガティヴな人間なので、オチがどうしてもネガティヴになりやすいというか、ポジティヴに持っていくことが苦手なんですけど。メンバーには、弱音を吐くのが嫌いとか、真逆な人もいるので。そういう面では、こんな考え方もあるんだなって思わされることも多いんですよね。

エヴァ:ナノさんの曲は、立ち向かっていくぞみたいなポジティヴな歌詞が多いですよね?

ナノ:根がすごくポジティヴなんですよ。なんだけど、人と葛藤することはあまりなくて、もともと自分自身と葛藤するタイプの人間で。いつも何かしらで、自分に負けたくないとか、自分を責めるとかしやすいんですよね。ポジティヴなんだけど、自分に対してはネガティヴになりがちなんですよ。ロックでかっこいい曲、ただただ闇の曲も書いてみたいなって思うんだけど、結局自分に負けたくないって思っちゃうから、オチが明るくなって、希望とか光を目指していっちゃうんですよね。でもそれがナノの本心だから、それでいいのかなと思うんです。こういう人生を生きていたからこんな人間なんだと。すごくきれいなものだなと思うので。

いもこ:自分もすごくネガティヴなんですけど、負けねぇぞって気持ちもあるし、こうなりたいという自分もあるんですよね。強くなりたいとか、批判してくるやつを見返したいとか。そういう気持ちを最初は言葉では強く出せなかったんですけど、歌詞に書くことで最初は強がりだった言葉が段々と本当に変わっていったというか。もともとすごくネガティヴだったんですけど、神激で強くなりたいという言葉を書くことで、本当の言葉に変わっていったのも大きかったので。最初はネガティヴでもいいんだなって思いました。

ナノ:ポジティヴもネガティヴも、エネルギーであることは変わらないので。それをどういうふうに使うかなんですよね。どんな人間も吐き出さないといけない、その吐き出す先が作詞や歌うことでやっていけばやっていくほど自分の中で浄化されるというか、いいものに変わっていくのはあると思いますね。

-自分ではネガティヴなものを書いたと思っていても、それが受け取る側にとって力になることや、自分のことを歌ってくれているなと感じることもありますしね。今、書いた言葉が本当になっていくというのがありましたが、曲に引っ張られて、自分たちも変わっていく感じというのはありますか。

エヴァ:それはめちゃくちゃあります。常に、曲に引っ張られてパワーアップしている状態で。新曲が出るたびに、ピッグ・スクイールとか出したことないのにどうやるんだろう? とかがあって。

あまね:本当にね(笑)。

エヴァ:今できることの2段階上くらいのスキルが必要なデモで上がってきて。自分たちもそれに追いつけるように頑張って練習しようとか。

あまね:最初は、これ絶対できないだろう、限界だろうって思っていたところに挑むことで、それが力になって。新たな武器に変わったりもしますね。

ことの:そこは作曲者が常にメンバーを見ているからこそ、各自ののびしろというか、どこまでいけるかがわかって作ってくださっているのはありますね。

いもこ:技術面ももちろん、メンタル面でもそうで。私たち、デビューしたての頃はほとんどお客さんがいなかったんです。でもその頃からずっと"武道館に立つ"って言っていて。

ナノ:それで本当に立っているんだからすごいよね。

いもこ:意志を持って強い心で生きていくというのはすごく大事なんだなって思ってます。

ナノ:自分は作曲もするんですけど、デビューした当時は曲を提供してもらうことが多かったんです。曲を提供してもらうことで何がプラスになるかというと、自分の許容範囲を超えた曲がくる可能性があるんですよね。でもそれって、今言っていたようにレベルアップのチャンスでしかなくて。"また200 BPMの曲かよ!"って毎回思うんですよ。

TiNA:ナノさんでもそう思うんですね。

ナノ:しかも、そのタイプの曲をライヴで10曲連続とか、殺す気かって思うんだけど(笑)。人間って無限の力を秘めているみたいで、それがやれちゃうんですよね。そこでまた引き出しが増えるというのはみなさんと一緒です。

TiNA:「神奏曲:ライトニング」(2021年12月リリースの21thシングル)のデモが上がってきたときは、絶対この声出ないだろうって思ったんですけど、練習していくうちにもしかしたら出るんじゃないかとなって。レコーディングでやってみたら、声が出たんです。でも、出ると思ったところで終わりじゃなくて、ライヴを重ねるたびに自分なりのその音の出し方や歌い方を見つけていくんですよね。レコーディングでゴールじゃなく、ライヴでさらにまた自分のスキルが上がっていくみたいな感覚もあります。神激の曲はライヴを重ねてどんどん成長していく曲になってますね。

エヴァ:いつでも最新が最高みたいなところがあると思うので。そういうことでも曲をライヴで聴いてほしい、観てほしいところはありますね。

ナノ:本当にそうなんですよね。実はさっき言ってもらった"BTOOOM!"の曲「No pain, No game」も、初めてデモをいただいたときは、これ人間が歌える曲じゃねぇなっていうのはあったんですよ(笑)。作った人がボカロP(塚本けむ/kemu)で、それまではそこまで激しい曲を歌ったことがなくて。でも曲はめちゃくちゃかっこいい、やりたいって思ったんです。あの曲は10年近く経った今でも苦戦しますね。それでもやっぱりそれに挑むのがクセになっているというか、あの曲がセトリに入っていないとやった気がしないというか。今日はあまり良くなかったなとか、今日は最っ高だったとか、毎回違うのが逆に楽しいし。何年経っても暴れ馬だなって思ったり(笑)。それは曲も生きているということで。

エヴァ:手がかかる子ほどかわいいみたいなのはありますね。

-神激でそういう、手なずけるのが難しい曲ってありましたか。

エヴァ:個人的には「神奏曲:ガイア」(2021年2月リリースの17thシングル)ですね。途中でブレイクダウンがあって、音がパッと消えた無音の中であまねのスクリームだけが響くんですけど。調子によって全然違うんですよね(笑)。

あまね:最初の頃はそこで声が裏返ってしまうことがあったりもして。そこで"生"というものを体感している感じでした。

ことの:「BAD CAKE」(2021年4月リリースの18thシングル)ではよいこが無音でラップをしたり、「喪失のカタルシス」(2018年リリースの1stアルバム『月影フィロソフィア』収録曲)ではちょっと喋って歌に入ったり、いろんな曲でどんどん新しいチャレンジが出てきて。そういう意味では全曲暴れ馬みたいな感じです(笑)。

よいこ:神激のサウンドはいろんな音が入った厚みがあるので。同じパートやラップを歌うにしても、ピアノをリズムとして聴いて歌ったり、ギターとかドラムとかを聴きながら歌ったりと、どの音を軸にするかでも毎回表現が変わってくるんですよね。年に300本くらいライヴをしているんですけど、表現方法が無限にあるので同じライヴがないんですよ。

エヴァ:そういう意味でも、とにかくライヴが好きなんですよね。アレンジしていくのも好きだし、300本やっていて歌い方ひとつ、メッセージひとつですらまったく同じライヴがないと胸を張って言えるんです。そういう意味で生きているライヴ、日々変わっていくものが好きなんだなって思います。

いもこ:MCも歌と同じくらい大事にしていて。MCというと自己紹介みたいなイメージがあると思うんですけど、神激は魂の叫び、そのときに感じていることやメッセージを伝えているんです。私はもともと喋るのがあまり得意じゃないので、緊張していることも多いんですけど、ライヴ後にファンの方が"今日はすごく伝わったよ"とか"明日、頑張ろうと思った"とか言ってもらえると、"あぁ、ライヴして良かったな"とか"ライヴ最高だな"って思いますね。

ことの:それこそ私がナノさんから貰った言葉が今でも残っているように、自分も誰かにとってそういう存在になれたらいいなっていうのがあるので。こういう言葉をもっと伝えていきたいとか、どんどん出てくるんです。