MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

神使轟く、激情の如く。× アルカラ

2021.05.10UPDATE

2021年05月号掲載

神使轟く、激情の如く。× アルカラ

"神激"こと"神使轟く、激情の如く。"がアーティストを招いて座談会を開催する企画を激ロックで連載中。その第8回目に、自称"ロック界の奇行師"アルカラがメンバー全員で参加してくれた。例の如く今回が初対面での座談会であったが、音楽やライヴへの姿勢に波長が合った、何か運命じみたものを感じる出会いになった気がする。両者がいつか同じステージに立つその日が楽しみだ。

神使轟く、激情の如く。:実久里ことの 生牡蠣いもこ 涙染あまね 二日よいこ TiNA
アルカラ:稲村 太佑(Vo/Gt) 下上 貴弘(Ba) 疋田 武史(Dr)
インタビュアー:宮﨑 大樹 Photo by 新倉映見

-アルカラのみなさんからの神激への印象はどうでした?

疋田:デス・ヴォイスもあるし、ラップもするし、サビではきれいに歌うし"こんな感じの曲なのかな?"と思ったらどんどん怒濤の展開をしていくので、5~6分の曲も全然長く感じなくて。すごくカッコ良かったです。

神激一同:ありがとうございます!

-逆に、神激メンバーにとってアルカラはどんな存在でしたか?

よいこ:『ちぎれろ』(2015年リリースの8thアルバム)の「トロピカルおばあちゃん」(「トロピカルおばあちゃん~ばーばばばぁ~」)を聴いたときに衝撃を受けました。歌っている内容はコミカルだけど、後ろで流れている音楽はカッコいいところに惹かれて。一度ライヴを観させてもらったんですけど、新鮮なエッセンスを感じて、アルカラさんからは影響を受けていました。

TiNA:私が最初にアルカラさんを知ったきっかけはTikTokで使われている「ダカラドオシタ」(2012年リリースの5thアルバム『ドラマ』収録曲)で。それからフル・サイズを聴いたら、サビ以外のところもすごくキャッチーだと感じました。全体的にすごく中毒性のある楽曲が多いなと思ったんですけど、私たちも中毒性というか、曲の間に転調が何度もあったり、Aメロ→Bメロ→サビみたいな典型的な形を壊してDメロ、Eメロくらいまでの展開があったりするんです。そういう、他とは違う中毒性みたいな意味で言うと"ロック界の奇行師"のアルカラさんは、曲でどんな部分にこだわっているのかなと思って。

稲村:自分がワクワクしたいんで"あ、次サビ来るやろうな。ハイ来た"だとつまらへんし、メンバーだったりスタッフだったり、チームの中でおもろいなと思えることを長くやっていればやっているほど、どんどん深くなっていくんです。普通じゃ満足できないというか。あと、普通にやったらそこでトップを取れない。オーソドックスな歌謡ロックをやっている、圧倒的なすごい人っているじゃないですか? 間違いのない日本の良き伝統と言うんですかね、そこを超えるんやったら、それらを脇目に見ながら自分のやり方をやろうと。もしそういう部分を感じていただけているのであれば、僕は今テンションが上がっています。あまり気づいていただけてないというか、よくわからないという印象で放り投げられている気もしていて。別にそれに対してはなんとも思っていないですけど、波長が合う人にはこうやって縁をいただけるんですね。

ことの:すでに売れているグループと同じ道を辿っても二番煎じにしかならないから、私たちも"ジャンルを神激にしよう"、"神激というジャンルを作ろう"とずっと言っているんです。今お話を聞いて、自分たちのスタイルを持っていくこと、自分たちが面白いと思えるものをやっていくことが大事だなと改めて感じました。

稲村:素晴らしい。しっかり演奏してとか、ミスなくパフォーマンスすることも、芸術として大事なんですけど、やっているほうの人間がどれだけ楽しんでいるかみたいな姿を観て、応援する気持ちもあるもので。例えば、野球でもずっと勝っているから応援したいわけじゃなくて、勝ったり負けたりするし、最後に打者が一塁に向かってスライディングして悔しそうにしている姿に、関係ないのに涙してしまうのがやっぱり人間なんですね。人間はそういう刹那に心を打たれる温かい心を持っていると思うし、その人が勝った負けたということよりも、その人がどれだけ頑張ったり、楽しくやってきたりしたかというところにドラマがあって。それを僕らは曲で言えば5~6分とか、下手したら1分くらい、ステージで言えば30分、短かったら15分とかに詰め込む芸術やから、すごく尊いことをやらせていただいていると思います。

-神激もアルカラも、自分たちの音楽を楽しむことを大切にしているんですね。

稲村:めっちゃ小さいハンバーガー屋さんやけど、やたら無添加と有機栽培にこだわっているかのような。大手じゃなく"この店を大きくしていくんや"って自分らの店を開くほうが、ドラマもあるし夢もある、本にもなるし絵にもなる。その感覚でステージに立たれているというのがいいですよね。こういう話ができて僕もすごく心躍ります。まだ15分くらいしか経っていないですけど、今日はすごく完璧な取れ高でしたね。このあとどうします?

-(笑)今回、神激メンバーからたくさん質問が用意されているんですよ。ここからはそこを中心に聞いていければと思います。

いもこ:長年続けていてもライヴ前に緊張することはありますか?

疋田:毎回緊張します。震えるほどの緊張というのはなくなってきましたけど、30分とかの時間をしっかりやるために、多少の緊張感は持ち続けていますね。

稲村:僕はライヴ前に一瞬でいいからひとりになりたいんです。だからトイレとか無駄に行きますね。めっちゃトイレ行きたそうな振りをして(笑)。そこで1回整理をしています。焦点を合わせるというか。

下上:僕は、緊張すると思うと緊張してしまうから、始まる直前まで別のことをなるべく考えるようにしています。"もう始まる"ってなると、やるしかなくなるから、ギリギリまで別のことをしたり考えたりするようしていて。

いもこ:私はライヴ前にとてつもなく緊張するんです。日常生活でもずっと神激のことばかり考えちゃっているので、常に緊張していて。けど、そういう話を聞いてちょっとは気を抜いていいんだなと思いました。

稲村:緊張しているということは、裏返したら"みんなにベスト・パフォーマンスをしたい"とか、"ここでこう言ったらもっと盛り上がってくれるだろう"とか、いろんなことを考えてワクワクしているということやから。それが常になのであれば、素晴らしいと思います。1個の話でも深まるねぇ。もっとふわっとした話になると思っていたので、正直、彼女たちのこれからと才能に、逆に警戒を始めています(笑)。

一同:(笑)

よいこ:アルカラさんのMCはめっちゃ面白いって評判ですよね。自分たちも曲の間にMCを入れていくんですけど、雑談とかでオチがつく、面白いMCもしたいなと思って挑戦中なんです。でもどうしても最後がまとまらなくて、関西のオチのつけ方を教えてください(笑)。

稲村:大丈夫、これ以上強くなられたら音楽業界の競争率が上がるので(笑)。まぁ、話って順番を入れ替えたら面白くなったりするんですけどね。あと、僕はよく対バンしていただいた方とかの滑ったMCを一字一句間違えずに言ったりします(笑)。お客さんは、滑ったときのことをだいたい覚えているんですよ。滑ったという表現が正しいかわからないですけど"え? 今それ言う必要あった?"みたいになったときの、一瞬魔物が通ったみたいなものは"ん?"と思っているもので。30~40分経ったあとくらいにポロっと言う――"天丼"というやつですね。そうすると、その方が滑ったことも救えるし、みんながハッピーになるので使ってください(笑)。バンド・シーンでやれても、アイドル・シーンでできるのかはわからないですけど(笑)。

いもこ:対バン相手のファンの人に怒られるかもしれないですね(笑)。

ことの:アイドル対バンって、顔合わせもないし打ち上げもないみたいな感じなので、面識もない対バン相手もめちゃくちゃいて。

稲村:それは難しい。僕はそのために関係値をすごく大事にしています。冗談を言い合える関係値じゃないとただの悪口になるので。楽屋でのお話とか、それまでのやりとりとか、そこもライヴに繋がっているんですよね。

-あまねさんもライヴに関して質問があるそうですね。

あまね:ライヴ中、ヴァイオリンを弾いたり、たくさんのお婆ちゃんが出てきたり、他ではないような演出があってすごく面白いと思いました。ライヴの中で演出にこだわりがあったりしますか? 自分たちもただ普通にライヴをするんじゃなくて、マニピュレーターさんがついていて、ライヴに合わせてベースとギターの音を出してくれたり、メンバーの合図に合わせて曲に繋げたり、CDとは違うライヴをしているんです。

稲村:できそうなもの、やれそうなことをやってしまえ、みたいな。失敗を恐れても仕方ないし、そうやっていくと自分のキャパが広がっていくんですね。こだわっているというよりは、常にチャレンジしているみたいな。常に若手やと思っていますし、チャレンジへのワクワクの気持ちは持っていますね。

-そういうチャレンジはチームで話し合って、準備して臨むんですか?

稲村:そういうときもありますし、思いつきでやることも多いですね。

いもこ:神激もそうかもしれないです。ライヴ中に、自分たちのパートとか、もしくは他のメンバーのパートを奪ってまでMCをしているときとかもあります。予定調和じゃないライヴがやっぱり楽しいなと思って。

稲村:イレギュラーを決めようとしたら、そのイレギュラーがレギュラーになってまう。しかもそれを合わせようとすると、そこばっかり気になってしまうので、それだったらステージに降りてきた神なのか悪魔なのかの啓示を受け入れるかどうかを選択するようにしています。やりたい気持ちだけでやっていくと良くないので、"うわぁー!"ってやっているように見えるけど、外なる情熱に内なる冷静ですね。

いもこ:神の啓示ってありますよね。今日はこの曲じゃないなと思ったら、セットリストと違う曲振りをして、その曲をマニピュレーターさんに流してもらったりするんですよ。

TiNA:そこに合わせにいっています。

疋田:え、それはすごい。

稲村:すごいな。照明さんだけ"え?"って顔をしそう(笑)。お互いに信頼があるからできるんでしょうね、素晴らしいと思います。