INTERVIEW
実久里ことの(神使轟く、激情の如く。)
2023.03.10UPDATE
2023年03月号掲載
Member:実久里ことの GODちゃん
Interviewer:宮﨑 大樹 Photographer:上坂和也
激ロックにて連載をしてきた神激(神使轟く、激情の如く。)の個別インタビュー企画もいよいよ今回で最終回。ラストは眼鏡がトレードマークのリーダー、実久里ことのに取材を実施した。超個性的なメンバーが揃う神激をまとめあげる彼女のリーダー論や、神激に懸ける想い、今後の展望など、今回もマニピュレーターのGODちゃんを交えて話を訊いた。
-個別インタビュー企画のトリですね。これまでのメンバーのインタビューを読んでみてどう感じていましたか?
ことの:メンバーみんなで、"パーソナルな部分って意外とお互い喋ったことなかったよね"みたいなことを話していました。大前提として神激が好きで、この活動を続けていくと思っていたから、じゃあなんで続けているのとか、そういう部分ってお互いに聞いたことがなかったんです。だからお互いを知る機会になりました。それに、個人インタビューが始まってから、自分自身のこともそれぞれ考えるようになったのかな。自分がどうしてこんなに神激を好きなのかとか、立ち戻って考える機会になったと思いますね。
-メンバーとしても、やってみて良かったんですね。
ことの:これがなかったら、メンバー同士でもう1回ちゃんと話してみようとはならなかったかもしれないです。そこがやっぱり大事だと気づいた、きっかけのひとつではありました。
-個人インタビューでは、必ず各メンバーに対するコメントを聞いてきたじゃないですか? そこでことのさんの話が出るときは、神激の"軸"とか"核"とか、そういうふうに言われることが多かったなと思っていて。
ことの:そういうのを言われだしたときは、こう言うと悪く聞こえちゃうんですけど、正直重荷だなというか――
-プレッシャーみたいな?
ことの:そうですね。自分が軸でいなきゃという義務感があったんですけど、私が自然体でやってきたことでそう言われるなら、別に重荷に考えずに、ありのままでいるだけでいいんだなと最近感じました。今はプレッシャーには思っていなくて、神激らしく、実久里ことのらしくいればいいんだという気持ちです。
-今は自然体でやれているんですね。これまでインタビューや座談会をしてきて、リーダーであることに対しての気負いを感じていたこともあると思うんですよ。
ことの:ありましたね。バンドさんと座談会をして、ヴォーカルさんとかリーダー格の人がいろんな想いをお話ししてくださって、リーダーってそうでなきゃいけないんだろうなみたいな気持ちはやっぱりありました。もっと私が話さなきゃという気持ちはあったんですけど、座談会を重ねていくうちに、想いを伝えるのは(二日)よいこや三笠(エヴァ)が上手いんだなと思って。リーダーだから喋らなきゃいけないんじゃなくて、伝えられる人が、言葉にできる人がどんどんやっていったほうがいいなと。だから後半は、少しは肩の力を抜いてできたのかなと思います(笑)。
-今さらなんですけど、そもそもなんでリーダーになったんですか?
ことの:そんなにすごい理由があるわけじゃなくて、ああいうメンバーたちなので(笑)、どっちかというとリーダーになれる人が私しかいなかったというか。一番普通の自分が選ばれました。別にそれが悪いこととは思っていないですけどね。みんなが薄々ことのだよねと感じていた、みたいなやつです。
-子供の頃から、リーダーとかクラス委員とかそういうキャラだったんですか?
ことの:多かったですね。「瞬間成仏NEXT YOU→」(2019年配信リリースの8thシングル)でも"学級委員長の頃のトラウマ"という歌詞があって、部活の部長もやったし、学級委員長もやったし、いろいろやってきたんですけど、当時はどっちかというとそういう役を押しつけられていると思っていたんです。学生時代からリーダーが正直あんまり好きじゃなくて。この仕事をやっていてあんまり言うことじゃないんですけど、人前に立つのが好きじゃないんです。誰かを率いる、まとめる立ち位置が本当に苦手だったし、注目されるのが本当に嫌いで。できれば私は副部長とかサブぐらいがいいんですよ。それが一番自由に動けるし、締めるときは締めるみたいな。
-学生時代はやらされていたかもしれないけど、その経験は生きているんじゃないですか?
ことの:誰かをまとめる位置に立つってどういうことなんだろうとは、その時々で考えていたので、それはあると思います。でも真面目に考えるようになったのは、神激のリーダーになってからですね。
-あれだけ個性的なメンバーがいるグループのリーダーとしてやっていくなかでの、ことのさんのリーダー論というか、気をつけていることや心掛けていることはありますか?
ことの:最初はリーダー像というものがそもそも自分の中になくて。で、いろんな人と話したりしていくうちに、引っ張るリーダーとか、後ろから背中を押すリーダーとか、いろいろなリーダー像があるとわかって、どれかにならなきゃとずっと考えていたんです。誰かモデルがいて、そういう人にならなきゃみたいなのを探していたんですけど、神激ではそれって違うんじゃないかなというのに気づいて。1対5じゃなくて、1対1でそれぞれのリーダーであるべきだなと思ったんです。例えばメンバーによっては背中を押すのが必要な子もいるし、逆に放置がちょうどいいメンバーもいるし、たまにケツを叩かないといけないメンバーもいる(笑)。だから、三笠に対してはこうとか、(生牡蠣)いもこに対してはこうとか、ひとりひとりに向き合うことを大事にしています。
-なんだか会社勤めをしてもいい上司になりそうですね。
ことの:(笑)まだまだなんですよ、本当に。
-ちなみに、表舞台に立つ仕事をする前に一番頑張っていたことってなんですか?
ことの:なかったんですよね。高校時代の放送部の部活はある程度頑張っていたんですけど、熱意をすごく注いでいるわけじゃなくて、さぼっているときもありました。高校時代は、いもこと一緒で声優になりたかったんです。高3の途中ぐらいで急にそこへの熱が冷めちゃって、そこからは頑張っているものが本当になくて。大学に進んでも、なりたいものが浮かばないし、大学の勉強を頑張ってるかといったらそうでもなくて。そのときに"アイドルやりませんか?"と言われて、やってみるかと思い、今まで続けてきました。
-アイドルを"やってみるか"と思ったのはなぜですか?
ことの:なんとなく気まぐれで。自分は本当に感覚人間なんですよ。何かを始めるときに理由とか理論を必要とするタイプじゃなくて。中学受験したんですけど、それを決めたときも別にその学校が素敵だからとか、こういうことを勉強したいからとかじゃなくて、ふと模試に行ったときに"あ、この学校がいい"と思って直感で決めたりしていて(笑)。アイドルもそうでした。何か深い理由があったわけじゃなくて、チャレンジしてみようと。
-今では神激への熱い想いがあるじゃないですか。音楽活動への気持ちが変わっていったきっかけはなんでしたか?
ことの:始めたときはうちの事務所じゃなかったんですけど、活動していくなかで自分に合っているなと感じ始めて。で、ずっと続けたいな、自分にとっての天職にしたいなとなったら、そこにいちゃダメだと思って、本気でやれる場所を探してるときにMTR(※神激の楽曲制作を行っている)さんにお会いしたんです。こんなに熱意を持って取り組んでいるんだと感じて。曲を聴いたら、楽曲から自分の考え方と一緒だなと思う部分もすごく多くて、ここでやりたいなと思いました。神激に入ってからはこれが自分の道なんだろうなと自然に感じたんです。
-やっているうちに本気でやれる場所を見つけたのはいいことですね。
ことの:モチベが必要なタイプっているじゃないですか? 目標がモチベになるとか、応援がモチベになるとか。でも自分は悪い意味じゃなくモチベを必要としていなくて。これで生きていくんだからやるでしょ、みたいな感じなんですよね。神激以外でアイドルをやろうとか、こういう活動しようとか思ったこともなくて。神激がなくなったら私も終わりだと思うんです。極論を言えば、実久里ことのがなくなったら自分自身もいなくなると思うぐらいの感じですね、今の自分にとって神激は。
-人生そのもの。
ことの:そうですね。本当に死ぬんじゃないかと思っています、神激がなくなったら。
-別の切り口の話になりますし、さっきは自然体とは言っていましたけど、ステージ上のことのさんと、ステージ裏のことのさん、ひとりになったときのことのさんって、違いはあると思いますか?
ことの:無理はしていないんですけど、ステージ上ではもちろんスイッチが入る部分はありますね。今の私には趣味もないし本当に何もないので、ひとりでいるときは死んでます(笑)。最近ファンの人から"Twitterとかインタビューとかよりも、ステージ上のことのさんが一番いろいろ吐き出せているし、生きている感じがする"と言われたんですけど、本当にその通りで。
-ことのさんって、特に弱音を吐かないように見えているので、帰ったあとには落ち込んでいたりすることもあるのかなと思ったんですよ。
ことの:たまにあるくらいですね。基本はポジティヴ人間なので。弱音を吐かないのもあるし、別に感じていないときもあります。でも家に帰って泣いている日は全然ありますね。それでも1日泣いて寝て起きたら元気になるタイプなので、ずっとネガティヴというわけでもないです。
-泣くときは、どういう理由で泣くんですか?
ことの:"悔しい"が一番多い気がします。"悲しい"も。"悔しい"8割、"悲しい"2割。
-それは思ったようなパフォーマンスができなかったときとかですか?
ことの:パフォーマンスよりは、もっと大枠の神激のことですね。神激自体が躓いたときに悲しくなることがあります。個人のことで泣くことはあんまりないです。
-ポジティヴですね。
ことの:めっちゃポジティヴです。無理矢理変えました(笑)。高校ぐらいまでめちゃくちゃネガティヴな人間だったんですけど、このままじゃ幸せになれないなと思って。で、ネガティヴな気持ちになるたびに"そんなことはない"と無理やり引き戻してたんです。1年ぐらいかかったんですけど、そうしたら自然とポジティヴになって今に至ります。だから、泣いている日はネガティヴなときの自分がちょっと顔を出しているんでしょうね。
-パフォーマンス面で個人として目標にしていることはありますか?
ことの:単純に歌が上手くなりたいです。私は神激で海外に行きたいんですよ。そうなったときに、MCが英語でできないから、音楽とパフォーマンスだけで評価される場所になるわけで。そうなると、まだまだ足りないなと思う部分が本当に多いです。よいこと一緒にハルカミライのライヴを観に行ったんですよ。初見で事前調べせずに行ったから、正直どんなに上手くても歌詞を聞き取れないときがあるじゃないですか? なのに歌がめちゃめちゃ上手くて、どういう曲かも全然わかっていないのに歌の圧だけで涙が出てきて。このレベルまで行きたいなと思いました。神激って、悪い意味じゃなくうるさい音楽じゃないですか? なので、そのなかでもちゃんと伝わる歌を歌いたい。歌だけでもリーダーだとわかるような存在になっていきたいです。
-GODちゃんが思うことのさんのパフォーマンスの強みについて聞かせてください。
GODちゃん:歌ですね。全然下手なんですけど、出会った頃は裏声しか出せなかったのに、今では一番太くて厚みのある声になりました。神激にはメイン・ヴォーカルが3人(ことの、いもこ、TiNA)がいるんですけど、いもこは変幻自在な変化球、TiNAはR&B系の伸びのある声なのですが、ことのの声は一番神激の中心というか、軸となる声です。だから歌い出しをことのにすることが多いですね。
-また、今後ことのさんにこんなアーティストになってほしいなど、目指してほしいことがあれば聞かせてください。
GODちゃん:この2~3年でバンドマン顔負けのかっこいいMCをするようになったんですけど、たまに尖りすぎてるなと感じる部分もありまして、そういうのは三笠やいもこに任せればいいので、もっとらしさを追求してくれればいいなと思います。神激のメンバーは、ひとりひとりがステータスが偏って全振りしているなかで、ことのだけ唯一すべてが80点ってタイプなんですよね。なので基本的にハズレがないし安心感もすごいあるんですけど、逆に言うとホームランバッターではないなと。でもたまに満塁ホームランを打つんですよね。きっと自分のらしさを本当の意味で見つけられたときに、満塁ホームランバッターになると思います(笑)。