INTERVIEW
三笠エヴァ(神使轟く、激情の如く。 )
2022.07.13UPDATE
2022年07月号掲載
Member:三笠エヴァ GODちゃん
Interviewer:宮﨑 大樹 Photo by 上坂和也
激ロックにて連載がスタートした神激(神使轟く、激情の如く。)の個別インタビュー企画。その第3回目に、神激のシャウト担当 三笠エヴァが登場してくれた。激ロックの取材では、いつも神激の音楽/メンバーへの愛や、熱い想いを力強く語ってくれていた三笠だが、実は自分自身に関しては自信がないという。そんな三笠エヴァの心の内に切り込むべく、今回もマニピュレーターのGODちゃんを交えて話を訊いた。
-三笠さんはロック・フェス出演への想いをずっと言い続けていましたよね。そんななかで、ついに"サマソニ"("SUMMER SONIC 2022")への出演が決定しました。
エヴァ:ヤバかったですね。スタッフさんから"サマソニ"の画像が送られてきたんですけど、"コラ画像かな?"と思うくらい信じられなくて。でも、神激ってそれくらいのことはやっていると自分では思っているので、やっと正当に評価されてきているのかなと。フェスとかに出してもらって、人の目に触れる機会があったら、神激の音楽がもっとたくさんの人に伝わると思うし、絶対に響くことをやっていると思っているんですよね。だから"やっとこの機会が来たか! 待ってました!"みたいな気持ちです。出て終わりなんじゃなくて、出ることで、うちらも大好きなこの音楽をもっと広めていけたらなって。武者震いというか、震えました。
-夢を叶えましたよね。サクセス・ストーリーが生まれたなと。
エヴァ:みなさんのおかげですよ。激ロックさんともいろいろやらせていただきましたし、神激のスタッフさんもすごく手腕があるというか、その人たちのおかげだなと思うので。自分で夢を叶えたという認識よりは、むしろ周りの人のおかげで叶えさせてもらった気持ちです。ここからは自分がその人たちに返していけるように、"神激を背負ってもっと頑張らないとな"と、身が引き締まる思いですね。
-三笠さんは昔から熱いハートを持っていると思うんですけど、初めて取材したときとは活動に対する考え方が変わったような気がするんですよ。
エヴァ:変わりましたね。最初にお会いしたときって約3年前とかだと思うんですけど、そのときはまだ自分の中ではくすぶってるような状態だったんです。でも今はめちゃくちゃ突き抜けたなと自分でも思っていて。3年前くらい、コロナ禍に入る前くらいの時期って、すごく悩んでいた時期だったんですよ。私は見た目もわりと特徴があるし、好きなものとかも変わっているし、考え方もどちらかというとマイノリティだと思うんです。それをどこまで出していいのか、とかで悩んでいて。そのころはまだアイドルという枠組みもあったから、"アイドルって髪の毛が長くてツインテールじゃなきゃいけない"とか、"かわいく思われるように振る舞わなきゃいけない"という気持ちもあったけど、それともうひとつ"自分らしくいたい"、"自分が思う自分のカッコいいことをやりたい"という気持ちがぶつかっていた時期でした。
-はい。
エヴァ:そんななかで、神激の曲を聴いてライヴをしていくうちに、"他人に言われた普通"に当てはまることがどんなに自分の中で苦痛だったのかを実感して。「神奏曲:ガイア」(2021年2月リリースの17thシングル)とかにそういう気持ちが入っているんです。神激の曲があったおかげで、"これでいいんだ! 自分は無理しなくていいんだ!"と思えました。人の言うことを聞いて、人の作った印象と、人に選んでもらった服で戦っていくよりも、いかに汚かろうが不器用だろうが、こっちのほうがいいんだと思えた3年間でしたね。そうやってくすぶってる人とか、マイノリティであることに悩んでいる人に、"絶対にこっちのほうがいいよ!"と声を大にして発信していきたいなと思えたので、そういうのが、出会ったときの私との違いかなと自分では感じます。
-GODちゃんは、三笠さんを近くで見ていて、成長や変化は感じますか?
GODちゃん:めちゃくちゃあると思いますね。これは三笠に限らずなんですけど、人間力が増したというか。3年前は、ハリボテ感が強いリアルじゃない感じ――"アイドルがロックやってる"と言われるのがムカつくぜ、みたいな感じを出してましたけど、実際そうだと思うんですよ。ロックをやってる人からしたら"うすっぺら!"みたいな感じだし、そういう状況で虚勢を張っていたのは、三笠だけじゃなく他のメンバーもそうだと思うんですけど、三笠は特にそれが強かったというか。それがアイデンティティ、アイコン的なところがありましたから。他のメンバーはかわいいところもしっかりあるので、"ロック"と言っても"私アイドルだし!"みたいな言い訳があるなかで、彼女はそういうものを使えない状況を自分でも作っていて。その虚勢を張っている感がすごくあったんですよね。
-なるほど。
GODちゃん:だからバンドと対バンしたときも"対等になろう"みたいな感じがあって、最初のころはスベっていたんです。MCとかも、別にカッコ悪くはないんですよ。普通にアイドルとかと対バンしたら、お山の大将ができるカッコ良さは当時からあったんですけど、じゃあ何年もやってきているバンドと対バンしたときに勝てるのかと言ったら、そんなことはなくて。無駄に力が入っちゃって"俺たち一緒だよな"みたいなスタンスのライヴをやっていたんです。けど、それって違うよねと。最初はそれを理解できなかったと思うんですけど、やっていくうちにバンドへのリスペクトとかを言葉じゃなくて本能でわかってきたというか。入りして、リハして準備してとか、工程を見るじゃないですか? そこで"明日バイトなんだよね"とか、そういう話が出てきたりして。
-そうなんですね。
GODちゃん:彼女たちはバンドと比べてお金を貰いすぎているんですよね。三笠も前は"金がない"とか言っていたんですけど、話にならないんですよ。月にサラリーマンの月収以上は貰っているわけで、バンドマンからしたら"その状態で金ねぇもクソもないだろ"と感じると思うんです。好きなことでご飯食べれてるって本当ひと握りなわけで。もちろんそこだけじゃないけど、そういうハングリー精神みたいなものを理解し始めたのが、人間力が上がったきっかけかなと。人間性が変わったわけではないし、最初から人間性が間違っていたわけではないんですけど、人を引っ張るような人格と理解が相まって、神激をことの(実久里ことの)と一緒に引っ張っていく存在になっているのかなと思いますね。
エヴァ:これもうちのスタッフさんの本当にありがたいところなんですけど、ライヴがどうとか歌い方がどうとか、それだけじゃなくて、日々の生活、意識のところでも育ててくださっているんです。怒られることがあっても"ここまで考えてくださるんだ"と、第2の親、東京の両親みたいな気持ちになっていますね。
-GODちゃんの言う"ハリボテ感"は、神激のことを信じてるからこその虚勢だったと思うんですよね。それをいかにリアルに、身のあるものにしていくかという戦いだったのかなと。
エヴァ:そうですね。う~ん......なんか本当に噛ませ犬みたいな感じだったと思うんですけど、神激のことを信じているので、当時は舐められたくない気持ちが先行しちゃったというか。こんなにカッコいいことをしているのに、"アイドル出身だから"と舐められるのがめちゃくちゃ悔しかったんですよね。それを外に出そう出そうとしちゃった結果、噛ませ犬になっちゃった。
-なんとか食らいつこうとしている感じも、ひとつのカッコ良さではあったと思いますけど。
エヴァ:ありがとうございます。まぁ、がむしゃら感はあったと思います。そこだけは残したいですね。噛ませ犬感はなくして、がむしゃら感は残す。そういうところが自分はパンクだと思うので。そういう野性味? 食らいついていく気持ちだけは一生なくさずにいたいです。でも、余裕がないところは直したい(笑)。
-三笠さんの"神激の音楽を信じている"気持ちは一貫していると思っていて。だからこそ、取材のときに神激の音楽についてアピールしたり、他のメンバーの発言を補足したりできていたんだろうなと。でもその一方で、三笠さん自身のアピールは実はそんなにしていなかったようにも思えて。
エヴァ:そうなんですよ。自信がないんです。自分はもともと某お菓子メーカーの広報部で働いていたんですよね。そのころの上司にずっと言われていたのが、"自分が好きになれないものを人にオススメできるわけがない。だから自分がそれ(製品)を好きになりなさい"ということで。それで、ずっと自分のところのお菓子を食べていたりしたんです。今でもその考え方はあって、だから私は神激メンバーのこともマジで好きで尊敬しているし、神激の曲も好きだし、スタッフさんも好きだし、取り巻くすべてが本当に好きなんですよね。この世界で一番好きで、一番のファンなんですよ。だからこそ人にオススメしたいとか、ここがいいからもっと聴いてよとか、メンバーのここがいいのにどうしてわかってくれないの? みたいな気持ちになるんですよ。
-はい。
エヴァ:だけど、逆に自分のことは自信がなくて、自分に対して何をオススメしたらいいのかわからないというか。だから自分のことを聞かれたときはすごく戸惑ってしまうんです。なのでソロ・インタビューは緊張しているんですよ(笑)。"いもこ(生牡蠣いもこ)について1時間語れ"と言われたほうが全然いける気持ちになっちゃって(笑)。自分の中ではそこがコンプレックスではあるんですけど、逆に言えばこの世界の中で、自分のことが好きな人ってそんなにいないと思うんですよ。みんな自分のどこかは絶対に嫌やと思うし、ここが嫌だからここを直したいと思うことって、本当にたくさんあると感じていて。だからこそ自分が伝えられることってめちゃくちゃあると思うんです。三笠と同じようなことで悩んでいる人って、数は少ないけどけど絶対にいるはずで。三笠は三笠に似た人を救える。"こんな自分でもできるから、お前も大丈夫だよ"と言えるようになりたいなと思っています。そういう人に対して手を差し伸べられる人間であるなら、自分のことを嫌いでも良かったなという気分になりますね。
-誰しもコンプレックスはあって、でもコンプレックスは個性だし、長所たり得ると思うんです。だから、そろそろ自分に自信を持っていい時期になっているんじゃないですか?
エヴァ:う~ん、自信は一生持てないですね(笑)。でもマイナスをマイナスのままにしちゃいけないと思っているし、コンプレックスが武器になるように、自分も今めちゃくちゃ模索しているところです。ただ、成功を収めた人とか、最初から悩みがない人には言えない、"悩みを抱えているお前"と対等だからこそ話せる言葉、できるライヴがあると思います。発展途上だからこそ言えるのが旬だと思うので、それを観に来てほしいというのと、悩んでいる人には"俺がこうだったからお前も頑張れよ"じゃなくて、"俺も今それだから一緒にやっていかん?"くらいの気持ちで、語り掛けられたらいいなと。
-三笠さんが神激に出会えて一番変わったことは、なんですか?
エヴァ:やっぱり意識ですね。さっきも話した"好きにやろう"という意識。今のなりじゃ考えられないと思うんですけど、昔はめちゃくちゃ美白にこだわって、髪の毛も黒くて長くて、女の子らしい膝丈のスカートで毎日ストッキングを履いて、というのをしていたんですよ。なぜかというと、浮きたくなかったから。浮いちゃダメだと思っていたし、他人とちょっとでも違うと叩かれる、出る杭は打たれるというか。あとは"それ普通じゃないよ"という言葉に敏感で。"女の子なんだから、かわいい服を着て、それなりの人と結婚して、白い犬を飼ってデカい家に住む。それが普通の幸せだよ"とずっと言われていたんです。それを否定しているわけではないんですよ。お兄ちゃんは学校の先生をしていて、結婚もしてデカい家を持っていて、子供もいてめちゃ幸せそうで。それはそれでひとつの形だと思うんですけど、自分はそれに当てはまらなかったんですよね。それが何よりの幸せだと思えなくて。ずっと我慢して我慢して、自分ってなんだろうと思いながら、でも人から言われたことをただこなすだけ。そういうのをずっとやっているのが、神激に入る前の自分だったんですよ。
-そうだったんですね。
エヴァ:でも神激に入ってから、自分らしく生きることがどんなに素敵なことかわかりました。自分を抑えることが、夢を諦めてまで人の普通に収まることが、どんなにみじめで情けなくて、自分の心をどれだけ追い詰めていくかを知っているので、今は超楽しいし、これで良かったです。神激に出会えて良かったなって――泣けてきたな、これ。だから恩人なんですよね。神激というものが。なので、今は自分のなりたい自分になろうと思って日サロにも行ってるし(笑)、タトゥーも入れたんですよ。お母さんにめっちゃ反対されて、1週間くらい電話しました。おかんはひとりで育ててくれたし、仲がいいから"うるせぇ入れる"とは言うことができないんです。アイドルになるのもタトゥーを入れることも、"絶対に後悔するから"って、すごく反対されたんですよ。でも、自分的にはやらないほうが後悔することを知っていたので、それを言い続けているし、20年後、30年後のことを考えるよりは、今の自分は神激に全人生を注ぎたいと思っているんです。タトゥーはその覚悟というか。それこそ"サマソニ"には今一番いいと思う自分で立ちたいんですよね。"人に用意された道できれいな格好をして歩くよりも、何もない砂漠で自分らしい服を着て、自分らしい格好で、神激の音楽だけを背負って歩いていったほうが俺はカッコいいと思ってるんだ"みたいな感じで電話して、喧嘩したら、"そこまで言うんだったらいいよ"みたいな感じで言ってくれました。親が理解のある人で良かったなと思います。変わったところといえばそういう意識です。変わろうと思っても変われない人って本当にたくさんいると思うんですよね。でも、ここまで自分の意識が変わって、自分のことがちょっとずつ好きになれているのって、親とメンバーのおかげだなと毎日感じています。