INTERVIEW
神使轟く、激情の如く。× MAGIC OF LiFE
2021.02.10UPDATE
2021年02月号掲載
"神激"こと"神使轟く、激情の如く。"がアーティストを招いて座談会を開催する企画を激ロックで連載中。その第5回目に、MAGIC OF LiFEがメンバー全員で参加してくれた。アイドルとの対バンや対談といったイメージのないマジック(MAGIC OF LiFE)だが、その音楽から感じられる誠実さのままに、神激を同じアーティストとしてまっすぐと向き合う姿が印象的だった。初対面とは思えないほど和やかで賑やか、そして熱いトークの模様をお届けする。
神使轟く、激情の如く。:生牡蠣いもこ 涙染あまね 三笠エヴァ TiNA
MAGIC OF LiFE:高津戸 信幸(Vo/Gt) 山下 拓実(Gt) 渡辺 雄司(Ba) 岡田 翔太朗(Dr)
インタビュアー:宮﨑 大樹 Photo by 新倉映見
-マジックとアイドル・グループの組み合わせはなかなか珍しいんじゃないかなと。
高津戸:対談とかはないかなぁ。初めてです。
-対バンもあまりないイメージですが。
岡田:フェスみたいなイベントならあるんですけど、対バンとかはないですね。
-今はロック・フェスにロック系アイドルが出ることも珍しくないですけど、そういったアーティストに対してはどんな印象がありましたか?
高津戸:偏見は特にないですね。アーティストとして見ています。
渡辺:バンド・サウンドが多くなった、増えたなっていう印象はあって。
岡田:それが嬉しいというか。聴きやすいし、入りやすい。
-みなさんは普段からロック系アイドルの曲を聴くことはあるんですか?
渡辺:BiSHとかはよく聴いていますね。でもそんなに広く聴いてはいないです。
岡田:僕も勉強中です。
-そんななかで神激の曲を聴いたら、パンチのある音楽性に驚いたんじゃないですか?
山下:パンチ、ありますね。
岡田:それだけじゃなくて、メンバーひとりひとりの声が特徴的で、そういう意味では音楽の新時代なんだなっていう印象がありました。今まで(のアイドル・ソング)だったらみんながユニゾンで歌って、みたいな感じだったと思うんですけど、(神激は)ひとりひとりの歌声を大事にしているじゃないですか? そういうのを聴いていて感じました。ひとりひとりがシンガーで。
エヴァ:嬉しい! どの曲のどの部分を取ってもメイン・ディッシュ、みたいなものをテーマにしているんです。あまねはデス・ヴォイスができたり、TiNAはとにかく歌が上手かったり、(二日)よいこっていうラップが上手い帰国子女の子がいたり。デス・ヴォイスの分野でもラップの分野でも、上手いなって思える子、自分たちの思う一番カッコいい女の子たちを集めた曲を作りたいなと思ってやっています。
-どうでした?
岡田:Apple Musicに(神激の曲を)ガンガン入れちゃいました。(スマホの)データ容量を占領していますね。
一同:(笑)
-バンドマンが聴いても、カッコいいし、楽しめると。
高津戸:めちゃくちゃカッコいいです。
渡辺:聴いていて全然飽きないというか。気がついたら終わっているような感じ。どんどん曲が展開していって、歌もいろんなメロがあったりとかデス・ヴォイスがあったりして、全然飽きなかったですね。
岡田:途中でBPMが変わったりもしますよね?
エヴァ:そうなんですよ。転調もあったり、いきなり3拍子になったり、そういうところが飽きさせない工夫なんです。5~6分の曲って飽きてしまいがちじゃないですか? 飽きてほしくないから、いろんなものを詰め込んでいます。
-神激も、マジックのミニ・アルバム『MAGIC』(2020年12月リリース)を聴いてきたそうですね。
エヴァ:アルバムのタイトル"MAGIC"は"思い切ったな!"と感じました。"神使轟く、激情の如く。"が"激情"っていうアルバムを出したら、勝負に来ているなっていう感じがするじゃないですか? 一見すると"ベスト・アルバムなのかな?"と感じる人すらいると思うんです。そういう意味でこのタイトルは思い切ったなと。
高津戸:今の時代で現実を叩きつけられちゃったときに、魔法とか、非現実的なものに僕自身が助けられていたんです。そういうものをメッセージ的に残したいなということで、あまりセルフ・タイトルということは深く考えずに"MAGIC"というタイトルにしたんですよね。
エヴァ:今"しんどい"と思っている人に"俺らのMAGICが届け"的な意味ですか?
高津戸:自分らに対しても奮い立たせる感じですよね。後ろ向きになることももちろんあったんですけど、それに対して気づくこともいっぱいあったので。前向きに生きたいなと思えるように、自ら背中を押すじゃないですけど。
-エヴァさんは『MAGIC』の個人的な裏タイトルや裏テーマがあれば知りたいそうですね。
エヴァ:自分の中の裏テーマみたいなものがあれば聞きたくて。"俺の中ではこういうアルバムだったな"みたいなものがあれば聞かせてください。
山下:最近はコンセプトを決めてやってたりしたけど、今回はなかったよね?
岡田:"withコロナ"とかそういう話になっちゃうかも。曲作りはリモートで、画面越しのディスカッションから始めたので、そういう意味ではコロナ禍だからこその作品なのかなと。
エヴァ:リモートで曲を作るのって大変じゃないですか?
高津戸:新時代みたいで楽しかったですけどね。
岡田:いいところ、悪いところはあるんだなっていう感じはしたよね。
-神激はコロナ禍ならではの出来事とかってありました?
エヴァ:ライヴの点ではかなり変わりましたね。アイドルのライヴというと、サイリュームを持って"○○ちゃーん!"みたいなイメージがあるじゃないですか? もちろんそういうノリもあるんですけど、ツーステしたいとか、リフトしたいとか、ライブキッズの人が神激でアイドルを初めて観るっていう人が多くて、フロアがぐちゃぐちゃのもみくちゃなんですよ。それがコロナ禍になって、ソーシャル・ディスタンスを取ってライヴをしようってなったときに、今までと違う見せ方、且つお客さんに100パーセント楽しんで帰ってもらうためには何をしたらいいんだろうというのは本当に悩みましたね。
高津戸:今はそういうバンドもいっぱいいるでしょうね。まだ有観客ライヴをやっていなくて未知なんです。今月末くらいからやっと始まるので。やってみてどうでした?
エヴァ:神者(※神激ファン)のみんながいい意味でめちゃくちゃバカなんです(笑)。"リフトができないなら隣の人が座れば良くない?"とか、ツーステは逆にやりやすいから"俺はツーステを極める"とか、勝手に楽しみを見つけてくれて。ファンの人たちがすごいこともあって、楽しさは変わることなくやれていますね。
高津戸:新しい環境に行くと、新しい楽しみを見つけるんだね。
-マジックは、この状況ならではのライヴを考えているんですか?
高津戸:僕らは長く続けさせていただいているので、昔の曲とか聴かせる楽曲が意外と多いんですよね。だからそういう曲を多めにしようとか、ピアノをサポートで入れてみようとか。ツーステップとかリフトとかはあんまりないので、各々が佇んで聴いてくれるのかなと思っています。あんまり考えすぎてイメージと違ったときに対応できなくなるのが怖いので、その場で臨機応変にいけたらなという感じはあるんですけどね。
TiNA:自分は、落ち着いた感じの曲が好きなんです。好きなアーティストがワンマンをやったときに、いつもよりセットリストがバラード寄りになると、"今日は神回だ!"ってなります。
-TiNAさんは『MAGIC』の中では「記念日」が特に好きだそうですね。
TiNA:今話した通り、バラードが好きで。YouTubeでもライヴ映像とかMVとか観させていただいたんですけど、「記念日」が特に自分の中で刺さりました。サビの繰り返すメロディや歌詞が耳に残って離れなくなるなと思って。こういった曲を作るなかで大切にしているこだわりがあれば聞きたいです。
高津戸:こだわりではないですけど、そのときそのときの新鮮な気持ちで書いているかもしれないです。いつもはメロディ先行で、歌詞をあとに書くんですよ。でも今回のアルバムに対しては、言葉がメロディと一緒に出てきましたね。歌詞って生まれたメロディに対してひとつしか言葉がないと思うんですよ。それが素直に悩まず瞬間的に生まれました。「記念日」のあのメロディとあの言葉には、それしかないっていう感覚がありましたね。
あまね:今回のアルバムのジャケットがとてもきれいで印象深いのですが、表紙を考えるときは収録されている曲をイメージして決めていますか?
高津戸:まさに。普遍的な日常にほんの少しの魔法を掛ける、みたいな。それで些細な幸せがずっと続くといいな、という意味合いをデザイナーさんに伝えて一緒に作った感じです。
あまね:それを聴くと、すごく伝わってくるジャケットです。
-いもこさんは、神激のすべての歌詞を書いていますが、マジックの歌詞についてはどんな印象でした?
いもこ:引きこもっている時期にアニメを観ていて、"弱虫ペダル"の内容と歌詞がめちゃくちゃ一致していて惹かれるなって思っていたんです。だから(座談会が)決まったとき、めっちゃ嬉しいって思いました。
あまね:インスタで質問を答えているところを見たのですが、そういうファンの人の声などから歌詞や曲が生まれることはありますか?
高津戸:めちゃくちゃあります。バンドをやっていて経験したこととか、ファンの方に会って思ったこととかを曲にしていますね。これは話が長くなっちゃうんですけど、学生のころとかはバンドが楽しくてしょうがなかったのに、CDを出して大人の方が増えて、全国ツアーを回り始めたりしたら責任感とか感じちゃって、つらくなっちゃんです。そういう時期に松山のライヴハウスに行って、ライヴが終わって片づけているときにカップルのふたりが来てくれて、"のぶさん(高津戸)たちは私たちのヒーローなんです。ありがとうございます!"と泣きじゃくった笑顔で言ってくれたんですね。その女の子は癌だったそうですけど、病院で僕らの曲を聴いていたと言ってくれて。その景色を曲に落とし込みました。「パントマイム」(2010年リリースのEP『Dirty Old Men e.p.』収録曲)という楽曲で"こちらこそありがとう"っていう気持ちを曲にして。だからファンの方々の言葉とかは、僕の楽曲制作には落とし込まれていますね。
いもこ:神激との共通点を感じます。"ヒーロー"という言葉も、私たちに「不器用HERO」(2019年リリースのデジタル・シングル)という曲があって。世界は救えないけど、目の前で音楽を聴いているあなたは救いたいっていう曲なんです。神激のファンの方に、震災で家族を失った人がいて、その人が"曲を聴いて助けられたよ"って言ってくださったんですね。その言葉に対してのメッセージを込めて「不器用HERO」という曲ができたので、共通点を感じました。私は、自分の言葉はもちろん、メンバーのMCから言葉を貰うことも多いんです。同じように作った曲などありますか?
高津戸:あぁ~。ふと日常で話していることとか、メンバーに対して感じていることとかは歌詞にしているかなぁ。
-マジックのメンバーのみなさんは、歌詞を読んで、自分の言葉や自分との思い出が入っているなと思うことはあるんですか?
岡田:それはないですけど(笑)、でも"モード"ってあるじゃないですか? 自分たちがこういう状況に立たされていて、こういうことがしたいんだけどできない、っていうこととかを、4人で同じように感じていたりして。そういう気持ちが歌詞になっていることは感じています。
山下:俺の言葉が使われてたよね?
高津戸:入れたかも。あとはメンバーが脱退しているので、そのときに脱退したやつらのことを書いたりした気がします。それと、今回の「記念日」という曲はバンドとメンバーに対しての曲でもありますね。いつまで続くんだろうなぁって。
山下:ああいう曲って10歳とかにも響くのかな?
高津戸:いろいろな家庭があるからそれはあるんじゃないの? おばあちゃん子とか。
-歌詞を書くときって、聴き手の年齢層とか気にするんですか?
高津戸:(いもこへ)どうですか?
いもこ:全然考えたことないですね。
高津戸:ですよね、僕もないです。
エヴァ:たぶんなんですけど、伝えたいことが120パーセントあって、溢れ出そうだから歌詞に入れる、それが勝手に響くやつらがいる、というのが神激の歌詞のすべてだと思います。
高津戸:カッコ良すぎ!
いもこ:初期だと私ひとりの感情で書いていたんですけど、今だとさらにいろんな人の感情とかメンバーの言葉が入ってくるから、よりいろんな人に響いている感じがしますね。