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INTERVIEW

神使轟く、激情の如く。× ビレッジマンズストア

2021.06.11UPDATE

2021年06月号掲載

神使轟く、激情の如く。× ビレッジマンズストア

"神激"こと"神使轟く、激情の如く。"がアーティストを招いて座談会を開催する企画を激ロックで連載中。その第9回目に、"名古屋が生んだ暴れ馬"ビレッジマンズストアの水野ギイが参加してくれた。日本武道館公演が決定し、自らのスタイルを"バンドユニット"と新たに定義した神激と、バンド内でユニットを組んだ経験があるという水野に、たっぷりと語り合ってもらった。

神使轟く、激情の如く。:実久里ことの 涙染あまね 三笠エヴァ
ビレッジマンズストア:水野ギイ(Vo)
インタビュアー:宮﨑 大樹 Photo by うつみさな

神激のメロディは、ビックリすることへの期待感が新鮮だった(水野)


-神激の連載企画第9回として、ビレッジマンズストアの水野ギイさんに登場していただきました。水野さんは、神激についてどんなイメージを持っていましたか?

水野:まず楽曲がすごいなと思いましたね。曲の展開がすごいじゃないですか? 1曲の中でもライヴの展開みたいに曲自体が展開していて、MCがなくても曲自体で演劇を観ているような感じ。で、サビのワードがスコンと入ってくるタイミングも気持ち良かったりして。ライヴの映像も観させていただいたんですけど、かなり......男前。

神激一同:(笑)

ことの:ありがとうございます(笑)。ミュージカルみたいとはよく言われますね。

水野:知らないと想像もできないような展開が待っていて、知っている人は知っている人でメロディだったり歌い回しだったりがノりやすい。でも突飛ではないので、文脈をなぞらえたなかで気持ちのいいメロディ。ただ、難しそうですよね。俺は歌えないな(笑)。

エヴァ:メロディがいいので、これだけ難しくても1回聴いたら覚えやすいのはあるかなと思います。

水野:自分の音楽の素養としては、Oiパンクとかから入った人間なので、メロディには比較的わかりやすさを重視して作ったりするんですよ。だから、俺にとっては神激のメロディは、ビックリすることへの期待感が新鮮だったりして。

-めちゃくちゃ聴いて来ていただいてるじゃないですか。

あまね:すごく嬉しいです。

水野:ずっと聴いていましたよ。楽しかったし、ず~っと聴けちゃう感じ。

-ところで、これまでの神激はいちおう"アイドル・グループ"という枠だったんですけど、これからは"バンドユニット"と名乗っていくそうなんですよ。

水野:へぇー! いいですね!

ことの:神激のメンバーって、歌では私がクリーンだったり、このふたり(あまね、エヴァ)はスクリーム担当だったり、ラップ担当(二日よいこ)もいたり、そういう分け方をしていて。アイドルを捨てようというわけじゃなくて、アイドルの要素も含むし、バンドの要素も含むし、ヒップホップ・カルチャーの様子も含むし、いろんなライヴ・スタイルを取り込んだものとして"バンドユニット"としてやっていこうとしています。

エヴァ:すべてまとめたハイブリッドをジャンル"神激"と言ってきたんですけど、わかりにくいじゃないですか? その通りではあるんですけど、ひと言で呼称するときに"バンドユニット"という名称を使えばわかりやすいんじゃないかというところで、使い出した名前ですね。

ことの:ライヴ・スタイルでは、バック・バンドがいるわけではないんですけど、マニピュレーターのGODちゃんがいて――

水野:インタビューで読みました! リアルタイムで変化していくライヴなんですよね?

ことの:そうですね。トラックがひとつにまとまったWAVデータ(※音声ファイルフォーマット)を流しているんじゃなくて、一個一個のギターとかピアノとかドラムのキックやスネアとかって音をそれぞれ別回線で流しているんです。なので、こういうときはこの音を強くするとか細かい設定をして、臨場感を出せるスタイルでやっています。

エヴァ:PC出しをしているところは他にもわりとあるんですけど、そのままのオケを流していると思うんですよ。それだとCDで流すのと全然変わらんやんという。そうじゃなくて、例えば新木場(USEN STUDIO COAST)だったらこういう音が響くからこういう音を入れて作ろうとか。弦楽器はリアンプもしていたり、すべてのパラデータをライヴ用にエディットしなおしているので音源とまったく違う生の音が神激の音の重みに繋がっているんじゃないかなと思います。あと、リズムマシンやギターもリアルタイムでマニピュレーターが演奏するのでそれも臨場感に繋がっています。

-ずっとロック・バンドをやってきた水野さんにとっては"バンドユニット"という新しい存在が生まれたことについて、どう感じますか?

水野:それはもうバンドなんじゃないですか。というのも、僕も同じようなことを試みたことがあって。メンバー5人の内の3人で、ユニットみたいなものをやったんですよ。その中で、音源を流しながらギターを弾いたりしたんですけど、ベースはベース・アンプからとか、別で流していて。こだわる部分が一緒だったら、それはやっていることが一緒。

-なるほど。

水野:で、やったらやったなりの難しさがあったんですよ。例えば、リアルタイムで操作が必要なもののライヴってやっぱりミスがあるんですよね。確実なものが減るから、ミスが増えるわけじゃないですか? そういうミスがあり得るなかで、人とタイミングを合わせたり、気持ちを合わせたりしながらやっていくのがバンドで。それが生演奏の真髄、生演奏の醍醐味だったりするので、やっていることが一緒になってきているんじゃないかなと。

エヴァ:そういうミスがライヴ感だったりしますよね。

水野:そうそう。ミスったときが美味しかったりするんですよ。

-神激メンバーは、ビレッジマンズストアの過去の音源や、7月14日にリリースされる2ndフル・アルバム『愛とヘイト』を聴いて、どんな印象でしたか?

あまね:アルバムも聴かせていただいたし、ライヴ映像も観させていただいたんですけど、歌詞が全部直球だし、ファンの方との距離がすごく近くて、めっちゃ熱い感じはしました。

ことの:メッセージがずっと一貫していると感じましたね。全部の曲が"焦燥と劣等感をもって焦燥と劣等感をぶち壊す"という言葉に行き着いている、そこがブレないんだなって感じました。

エヴァ:キネマ倶楽部とか味園ユニバースが似合いますよね。お母さんが歌謡ロックみたいなものを好きだったので、それとはまた別だし、新しいものだけど、どれも馴染みがありました。初めて聴くけどあのときのことを思い出すとか、アパートの畳と豆電球を思い出す、みたいな。そういう、初めて聴いても懐かしさを感じるものって、人の心に響きやすいというか、胸を打たれるなと感じましたね。

-音楽ジャンルは違うんですけど、神激とビレッジマンズストアは、根底にあるものが通ずるなと思いました。

水野:そうですね。ビレッジマンズストアは、結成して16年くらいになるんですけど、初めてやったバンドでずっと続いているんです。バンドの始まりというのが、僕の出身はすごく田舎の――"ビレッジマンズストア"って"村の店"みたいな感じなんですけど、マジでやることがなくて、すごく寂しいところなんですよ。例えば高校に行っても俺ひとりだけ帰る方向が違うんです。みんなが電車に乗っていくなかで、俺だけひとりで全然違う方向に、めちゃくちゃ時間をかけて帰るみたいなところに住んでいて。そういうのがめちゃくちゃ寂しくて、俺の中では、うるさいもの、にぎやかなもの、喧噪って、自分とは程遠い憧れだったんです。そこを目指して音楽をやっているみたいなところもあって。

-はい。

水野:だから、さっき言ってもらった豆電球を思い出すみたいな言葉がすごく嬉しくて。地元の自販機のぼんやりとした明かりの寂しさとか、そういうのが思い浮かぶようなワードを出したいなといつも思っているんです。だから出てくるワードとか、細かい部分とかが違っても、それが寂しさを埋めるものだったり、悔しさをどうにかさせたい反骨精神だったり、そういうのは同じものなんじゃないかなと思うっすね。音楽性とかではなくて、根本的なものは一緒な感じがしました。

エヴァ:エモいっすね。お話を聞いていて、わかるなぁって感じました。神激の歌詞も、焦りとか劣等感からくるものがめちゃくちゃ多くて。最近だと「BAD CAKE」(2021年4月配信リリース)という曲で"アブノーマルで、はい 結構"という歌詞があるんです。それは、アブノーマルを抱えていて、そこに対して劣等感とか、悲しいことや悔しいことがいろいろあったけど、逆に武器にしていこうという、乗り越えた先の歌詞なんですよね。神激の歌詞で、自分が悩んでいたときの悔しさを思い出す情景って、さっきギイさんが言ってくださったような自販機の明かりとかなんです。音楽をやっている人って、自分が悔しかったときとか、悲しかったときを抱えていますよね。ライヴハウスに来る人もそうですけど。

水野:そうですよねぇ。

-では、ここから、神激メンバーからの質問を聞いていきたいと思います。

エヴァ:アルバムを聴かせていただきました。どれも本当に単語にドキドキして、音に懐かしさと高まりを感じて素敵だと思いました。その中で曲順についてなのですが、「ラブソングだった」から始まり「LOVE SONGS」で終わるのには、何か曲順などこだわりがあるのでしょうか?

水野:このアルバムって、コロナ禍前に発売された会場限定のシングルと、それプラスこの1~2年間で作った曲が入っている感じなんですよ。「ラブソングだった」の原型を作ったときは、まだライヴができていたかどうかぐらいのときで、最初はもっと捻くれたような曲でした。最後に入っている「LOVE SONGS」は、普段はあんまり言わないんだけど、"ライヴハウスがあって良かったです"とか、俺が普段言っていたのに全然言わなくなった言葉――"またね"、"バイバイ"みたいな言葉は、何回でも言っていいし、何回でも言えることは素晴らしいですよ、みたいな歌詞なんです。それは、自分が1年何もできなかったときの気づきだったりするんですね。その気づきに向かっていくのが、アルバムで表現できたらいいなと。ライヴをゴリゴリやっていたときの感じと比べてほしいです。自分が気づいていくまでの過程で思ったこととか、変わっていったこととかを追体験してほしいなと思って、あの曲順にしました。

エヴァ:ぜひこのアルバムは曲順通りに聴いてほしいですね。歌謡ロックは日本人なら誰しも懐かしさを感じる、胸打つときめき的な何かがあると思うのですが、ときめきを感じる瞬間をお聞きしたいです。ときめきって大事かなと思っていて。

水野:いっつもときめいていますよ。店員さんから小銭を優しく渡されただけでキュンと(笑)。最近で言ったら、今ってあんまりライヴができないじゃないですか? だから今の世の中って、ミュージシャンは忘れられがちというか、世間に置いていかれているなと思ったりするんだけど、そういうときにSNSとかで言葉を貰うだけでときめきますよね。やっぱり言葉を貰ってときめくことが多いです。

エヴァ:待ってもらえているんだと思うと嬉しいですよね。そういうのが歌詞になったりとかするんですか?

水野:恥ずかしいからあんまりしないなぁ(笑)。

エヴァ:(笑)神激だとファンから貰った手紙とか、メンバーから貰った言葉を歌詞にした「Supernova」(2019年リリースの配信シングル)という曲があるんですけど、ギイさんは恥ずかしくて入れないんですね。