INTERVIEW
神使轟く、激情の如く。× LOW IQ 01
2021.04.12UPDATE
2021年04月号掲載
"神激"こと"神使轟く、激情の如く。"がアーティストを招いて座談会を開催する企画を激ロックで連載中。その第7回目は、ソロ活動だけでも20年以上のキャリアを持つ"イッチャン"ことLOW IQ 01を迎えて開催された。LOW IQ 01がアイドル・グループと一緒に取材を受けるのは今回が初めてのこと。結成4年目の神激が、ロック・シーンのベテランから多くの刺激を受けた激レアな座談会の模様をお届けする!
神使轟く、激情の如く。:生牡蠣いもこ 涙染あまね 三笠エヴァ TiNA
LOW IQ 01
インタビュアー:宮﨑 大樹 Photo by 上坂和也
-01さんはこれまで多くの対談をしてきたかと思いますが、アイドルとの対談は初めてなんじゃないですか?
01:初めてですね。言ってしまえば娘くらいの年齢じゃないですか。普通の会社員の50歳だったら(神激メンバーの)上司くらい。何か発したらパワハラと言われちゃうかもしれないから、何も言えない(笑)。今日は音楽のおかげ、音楽の力を借ります(笑)。
神激一同:(笑)
-今回の座談会にあたって、神激の印象はいかがでしたか?
01:僕たちよりもミュージシャンっぽいな、という。
神激一同:えぇ!?
01:アイドルという枠には入るのかもしれないですけど、ミュージシャン側からの目線で聴くと、曲調とかすごく進化しているなと感じました。今のアイドルは競争率が高いというか、いっぱい出てきていますよね。そのなかで特徴を出すのは大変だから、いろいろ試行錯誤すると思うんですけど、戦略とか、プロデュース力が強いなと。プロデューサーのセンスがグループに反映されているのかな。(プロデューサーから)この音楽を聴いたほうがいいよ、とかそういうのを教えてもらうと、すごく広がって、カッコ良くなっていくと思います。
あまね:アイドルとして表のほうだけじゃなくて、プロデュースのほうも見ていただいて、すごく嬉しいです。
エヴァ:どれだけいい音楽を作っても、どれだけ顔がかわいくても、曲を聴いてくれないとハマってくれないと思うんです。そういう意味で、神激は宣伝もすごい費用かけてくれたりやり方も工夫してくれたり、クオリティ高いMVを年に何本も出したり、曲を聴いてくれるきっかけを作っています。とにかく取っ掛かりになるようなものとか、売れるためにどうしたらいいかまで考えて、全部プロデュースしてくださっているので、そういうところを見てくださるのは純粋に嬉しいです。
01:それって超大事だと思う。80~90年代は、事務所という選択肢もまずなかったというか、自分たちでライヴハウスに電話して、ライヴを取って5人のお客さんの前から始めていったりして。そうして対バンで仲良くなった仲間たちが増えていって、シーンがどんどんデカくなって、"AIR JAM"シーンとか言われるものができていったんです。今のアイドルは競争相手が多いので、表現がアレだけど、戦略、作戦で目立って、音楽がイコールになれば、実力と共にどんどんデカくなっていけるかなと思います。
エヴァ:自分たちのことをバンドに寄っているなと思っているんです。それは音楽の意味でもそうなんですけど、言ってくださったように、バンドさんって最初は5人のお客さんとかから始めて、そこで音楽を認められていって――という過程があるじゃないですか? 小さなライヴハウスから自分たちで始めたみたいなものは、私たちにもすごくあります。曲の制作もそうなんですよ。まず土台となるデモをマニピュレーター兼作家の方が作ってくださり、そこから何度か声を入れたりリハーサルをして私たちひとりひとりの個性を生かした肉づけをしていくんです。曲を1から作っている感じが、自分たちでもバンドっぽいなと思っています。作られたものじゃなくて、自分たちで作っていく。神激6人だけじゃなくて、スタッフさん含め神激というひとつのバンドだと思っています。
いもこ:従来のアイドルと違って、歌割りなどもかなり極端にされていて、メイン・コーラスだけじゃなく、ラップ担当、スクリーム担当、ライヴメイク担当、MCポエトリー担当などいて、ツイン・ヴォーカルならぬシックス・ヴォーカルだと思ってます。ひとり欠けたらライヴができないという意味でも、バンドと近しいなと思っています。
01:できあがったものをやるのかなと思っていたんだけど、レコーディングで、その場で練っていくんですね。いきなり純日本風になったりとか、BPMが変わったりとか、急に変わる感じがトリッキーで、それが他にはないのかなって。僕は古いプログレが好きなので、予定調和じゃない感じがすごく好きなんです。レコード時代で言うと、レコードを聴いていて、針が飛んだときの偶然がカッコ良く聴こえたりするような印象を神激には感じました。
いもこ:ライヴとかでもそういうのを生かしてくれていて。グループにマニピュレーターさんがいて、会場の空気に合わせていろいろな音を入れてくれたり、曲中やMCでもオケとは別にギターやドラムの音を入れてくれたりするのでライヴの空気も作りやすいし、生歌でやっているぶん歌詞を変えたり、予定調和じゃない感じを楽しめるライヴではあるなと感じます。
01:音楽への表現でドラマとか映画とか言いがちじゃないですか? 神激は、劇、舞台みたいな感じ。今までにない。いい意味で大げさで生々しいというか。これはすごく言われていることだと思うんだけど、よく曲を覚えられるなと(笑)。僕の作る曲って、なんだかんだ言って流れがあったりするわけです。BPMを落としても半分、倍にすればあまり変わっていないとかなんだけど、キーが変わると、なかなか次にいけないんですよね。僕はひと言で、覚えられません(笑)。同い年くらいでやったら1ヶ月で脱退すると思います(笑)。でもそこに負けないというか、夢や希望があっていいなと。バンドって幼馴染で組むパターンもあると思うし、友達の紹介とか、その音楽が好きになる人が集まるとか、その時点でちょっと有利じゃないですか? アイドルはひとりで来て、オーディションから始まって、見ず知らずの人と仲良くやるというのは大変だと思います。グループで目指すことが一緒であれば、嫌なことも乗り越えていけるとは思いますけど。
いもこ:そうですね、バンドさんって幼馴染で組んでいることが多くて、グループを始めた当時はうらやましいと思っていました。だけど、毎日毎日汗をダラダラに流しながら、裸とかを見合うくらいの仲になっていくわけじゃないですか? そうしていると、私たちも自然と壁がなくなってきて、家族感が出てきました。今は、もともと昔からいたみたいな空気ができているよね?
エヴァ:できていますね。神激って、冗談半分で"70年契約"と言っているんです。おばあちゃんになるくらいまで一緒にやっていこうねと言って入っているので、その時点でお互いにめちゃくちゃ信用しているし、このメンバーだったら70~80年やっていけるなという6人が集まっています。なので、最初から家族みたいなノリでしたね。
01:幼稚園から一緒だったのか、大学が一緒になったのかくらいの差じゃないかな。幼馴染は気心が知れている、でも、大学だって親友はできますし。
-ところで、神激メンバーも改めて01さんの音楽を聴いてきたかと思うんですけど、みなさんはどう感じました?
TiNA:MVやライヴ映像も観させてもらいました。20周年ライヴ("LOW IQ 01 20th Anniversary The Extravaganza")の映像での、ライトの演出が気になって。あれは自ら考案されてやっている演出なんですか?
01:あの演出、知らなかったんですよ。うちのメンバーが、会場がオープンしたときに配布するフライヤーに"ドラマーが立ち上がって1回音を止めます。そのときに携帯を出してください"みたいなことを折り込みで入れてくれたらしくて。"なんでドラム止まっちゃったんだろう?"と思っていたら、ニクいことやってくれましたね。僕、バンド形式にいろんな形があるんですよ。20周年のときにやったのは大人数のバンドで、MASTER LOWというんですけど、それが一番長くやっている形です。SUPER STUPIDというバンドで、AIR JAM世代と言われていたころから対バンとかやっている後輩なので、気心知れているから、そういうことやってくれたんです。
エヴァ:すごい。ファンの方が考えるとかじゃなく、バンド・メンバーさんが考案したんですね。
01:キャラクターが愛されていて嬉しいなと思いますね。もちろん音楽が一番大事ですけど、キャラクターって大事だと思うんです。アイドルは歌が上手いのも最高ですけど、特に大事だなと。僕もライヴ映像を観させてもらったんですけど、MCがイケイケでいいなと思って。そういうところでもロックを感じたんですけど、今日会ったときに昭和の女子プロレスラーみたいな人がきたらどうしよう、みたいに思っていました(笑)。
神激一同:(笑)
いもこ:ライヴ中にバチバチに煽るので、私生活もこうなんじゃないかと勘違いされます(苦笑)。
エヴァ:出会い頭にビンタする女だと思われますもん(笑)。
01:プロレスでヒールの人たちがすごく礼儀正しかったりすると、俺はそのギャップがすごくいいと思うんです。清楚で売っている子たちの素行が悪かったらダメなギャップだけど、"実はあの子たち、すごく礼儀正しいんだよ"というのがないと、やっぱり上には行けないのかなと。義理とか人情とかを大事にしている人たちって、音楽だけじゃなく人として好かれる、名前を覚えてもらえる、また対バンしたいと言ってもらえる。そういう、人たらしって大事なんだなと思います。いやらしい意味じゃなくてね。
エヴァ:01さんが言うと説得力あります。愛されてますよね。
01:違うんです。"ブラザーウィンド"なんです。兄貴風を吹かせているだけなんです。
神激一同:(笑)
-神激はフェスの出演、主催に対する想いが強いように感じていて。01さんはこれまでにも数々のフェスに出演してきていますが、フェスに呼ばれるには音楽はもちろん、そういう人柄みたいな部分もあったりするんですかね。
01:時代時代の波があるんですよ。そこに乗れるときれいに進めるかなと思います。ただ、そこばかりを目標にしちゃうと本末転倒になってしまうというか。もちろんロック・フェスって楽しいし、いろんな出会いとかもあるけど、自分たちの個々でやっているライヴを大事にして、そこから呼ばれるようになる。100人~200人の前で、生で見せていかないとやっぱり熱は伝わらないから、小さいライヴハウスでも、何万人の観客でも、同じ気持ちでいけば呼ばれると思います。
エヴァ:フェスを目標にするのは違う、というのはよくわかります。自分も、もともと"MONSTER baSH"がめっちゃ好きで毎年行っていて。"MONSTER baSH"に出たいなと思ってアイドルになったんです。だけど、アイドルになって、音楽をやって、ライヴを何本もやっていると、"MONSTER baSH"に出ることがゴールではなくなりました。純粋にメンバーとか運営さんとかファンのみんなが大事だなと思って、みんなをもっといろんなところに連れて行って、みんなで幸せな時間を過ごしたい気持ちが先に来るようになったんです。フェスに出ることも通過点のひとつなんだなって、ステージに立って思えましたね。
01:"モンバス"("MONSTER baSH")に出たかったというのは、なんで? 地元なの?
エヴァ:いろんなフェスに行っていた中で、一番モンバスが好きで。モンバス自体も好きなんですけど、その次の日に、友達と一緒に自転車を借りてうどんを食べにいくのがめっちゃ好きなんです。そういうのを含めたうえで、ずっと行っていたうどん屋に神激を連れていきたいなと。
01:フェスとかツアーって、そういうのも醍醐味だと思います。僕は若いころ、ライヴをあまりやりたがらない人間だったんですよね。ツアーとかも全然組んだことがなかったんです。こう見えて、すごいあがり症なんですよ。最近慣れてきた感じなんだけど、プレッシャーが大きくて、前日寝れなかったりして。でも、よくよく考えたら、何かいいことしてやろうとか、カッコいいことしてやろうとか、思っているからそんな目に合うんですよね。勝負の掛け方を間違えちゃうと空回りしちゃうんで。そういう感じだったからツアーに行ったことがなかったんです。