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INTERVIEW

ナノ

2021.04.13UPDATE

2021年04月号掲載

ナノ

インタビュアー:吉羽 さおり

昨年初のベスト・アルバム『I』をリリースしたナノ。ベスト後初となる今回のミニ・アルバムは初めてナノ自身が完全プロデュースを行い、アーティスト ナノ、そしてさらに原点的な人間 ナノをパッケージした作品となった。開花を意味する"ANTHESIS"と冠した今作は、過去にもタッグを組んだ中西航介との3曲でナノのこれまでと未来を繋ぎ、また自身の作詞作曲の曲で丁寧に現在地を描いている。これまでアニソンを多く手掛け、ヘヴィでラウドなロック、J-POPサウンドを聴かせたナノだが、アメリカで生まれ育ち自然と現地の音楽、ロックやポップスのグルーヴをその身に宿しているからこそ、洋楽/邦楽の新たなケミストリーをナノ・サウンドとして提示している作品でもある。来年にはデビュー10周年を迎えるが、その前に大きく大事な一歩を踏み出したナノに今作への思いを訊いた。

-待望のアルバムの完成ですね。今回はナノさんが本当に好きなこと、今やりたい音楽や、今の思いをリアルに出しているなと感じる作品で。また、コロナ禍でこの1年間うまく動けないもどかしさもあったと思うんですが、その分の思いや、もっともっと広く届けたいという願いなどが織り込まれた作品だと思います。一音一音への音へのこだわりも感じる、とても真摯な作品だなって。

あぁ、すごく嬉しいです。

-まず昨年のベスト・アルバム『I』以降、ナノさんとしてはどのように音楽に向かい、作品へと取り掛かっていったんですか?

ベスト・アルバムを出した段階でひと区切りではないですけど、新しいスタートを切るチャンスだなって思ったんです。このタイミングを逃してしまったらないなって思ったので。そこでナノ・チームで、これを機に改めて音作りを研究してやってみないかという話をしていたんです。そこから曲を作ったら必然的にアルバムを作ってみようということになって。ただ、自分もデビューして9年間歌ってきたけど、これまでずっと同じディレクターさんとやってきて、手取り足取りじゃないですけど、その方にはすべてプロデュースしてもらって、育ての親みたいな方だったんです。今回はその方とは、いったん離れてみようというのがありました。このチーム全員が、デビューしたての新人みたいな気持ちで挑む形だったんです。なので、明確なゴールがないなかでのスタートで。今まで言ったことはなかったんですけど、アルバムのスタートのときはすごく不安でした。

-自由にやっていいとなったら、それはそれで難しさがありますね。

そうですね。今まで自由にやれなかったわけではないんですけど、本当にただただ自分がやりたいことだけに専念するというのは、やっぱりデビューしてからはなかったんですよ。好きだった音楽が仕事になって、アニメのタイアップとかもやらせてもらって。デビューするまでは趣味でやっていたので、100パーセント自分のやりたいことだけだったんですけど。まさかここのタイミングでこういうチャンスがくるのは、想定してなかったので。やりたくて仕方ないんだけど、何をやったらいいかわからないっていうジレンマがあった気がします(笑)。

-そこからどう、今のナノさんを捉えていこうとしたんですか?

とりあえず行動を起こさなきゃ始まらない、曲がないと話が始まらないと。その曲を作るにあたっても、自分ひとりでは難しいので、一緒に作ってくれる人を考えたいと思って。迷いもせず一瞬で出てきたのが、中西航介さんだったんです。彼とは過去にも、"一緒に何かやりたいね"、"また曲を作りたいね"という話はしていたので。"これから新しいナノとしての音作りを探したいんだけど、それを一緒にやってくれないか"とお願いしたんです。でも、これってすごく責任感重大というか、大きなお願いだったので彼も最初はちょっと悩んだんですよね。にもかかわらず、今回役目を引き受けてくれたことは、感謝しかないというか。

-曲作りは、ふたりでいろんな話をしながら、掘り下げていく作業だった感じですかね。

彼とは付き合いが長いですけど、ここまでじっくりといろいろ話したことがなかったんですよね。過去に彼と出した曲も、ディレクターを通して作ったりしていたし、ふたりだけで何かをやりとりをするとか、曲作りからナノが関わることがそこまでなかったので。ある意味初めましてみたいな気持ちで、お互いに探り合いで始まりました(笑)。

-いろいろと曲を作ってみたんですか?

なんとなくミニ・アルバムっていうことが決まった段階で、彼とはマックス3曲くらいは作れるかなと。3曲作れば、ある程度アルバム自体がまとまるかなと思ったんです。

-「AUTOBIOGRAPHY」、「All I Need」、「LINE OF FIRE」の3曲ですね。

全部を違うクリエイターさんにお願いするよりも、軸として3曲くらい彼と作ることで、よりナノという未来のサウンドに近づいていくんじゃないかって。そこで何をリファレンスにしたかといったら、例えば最初の「AUTOBIOGRAPHY」に関しては、未来も見つつも、今までのナノらしいサウンドを取り入れようというところからスタートしたんですよ。この曲では、趣味でやっていた頃の遊び心というか、ポップな感じを取り入れたいなと思っていたんです。かっこいいというよりも、聴いていて"すげぇ楽しい!"とか、笑顔になっちゃうのが目標というか。

-ナノさん自身では、漠然とでも作品へのヴィジョン、サウンド的な面でのヴィジョンというのはあったのでしょうか?

今までやってきた曲の感じは、アニメ・ソングのタイアップが多かったので、必然的に邦楽寄りになるというか、日本語詞が多めで、日本のシーンに合うようなサウンドをやってきたんですけど。ナノ個人は、育ちがアメリカで、聴いてきた音楽も一番ルーツにあるのは洋楽だったりするんです。なので、今回は自分の原点に戻るではないですけど、自分の血液にあるもので音作りをしてみたいって。自分の中にしかないものプラス、自分がやりたいことを調理して形にしてみたいって思ったので、全体的な雰囲気や、サウンドはすごく洋楽らしいというか、大人っぽい感じを目指しましたね。

-それは「All I Need」を聴くとよくわかります。洋楽的なメロディのグルーヴ感や、言葉の乗せ方があって、こういったルーツがあるんだなという曲です。

まさに「All I Need」に関しては、大人っぽさがありますね。中西さんと3曲制作するにあたって、まず作る前からテーマを決めたんですよ。1曲目は古き良きナノを取り入れる。2曲目はやったことないタイプの、大人っぽい感じを目指す。3曲目はそのマリアージュ。1と2のいいとこ取りプラス、人を驚かせるインパクトをというもので。「All I Need」は、他の2曲に比べてはローダウンなんですけど、これを研究しないでは3曲目には至らなかったなと思うので、流れとしては、すべてが段階を踏んでちゃんと繋がっている感じがあります。

-歌っていてすごく気持ち良さそうなんですよね。歌い方や、キーも自然というか。

「All I Need」はちょっとエモい感じのフィーリングが自分の中ではありますね。今回は3曲共メロディをナノ自身が書いているので。そのメロディを書いたことによって発見したのが、やっぱり自分が書くと自分が歌いやすいものになるんだなっていうか。自分に馴染むメロディというか、キーのレンジも自分で作れるので、今までで一番力を抜いて歌えた。すごく気持ち良かったですね。

-歌詞を書くことに関してはどうでしたか? 自分の思いを掘り起こすことはもちろんですが、現在大きな変化を感じざるを得ない世の中で、手探りでの生活や不安な状況があって。だからこそ、音楽がそこで何か、新たな役割をしてくれるかなというのもあったと思いますが。

もともと自分は小さい頃から歌よりも先に文章を書いたり、作詞をしたりすることが一番好きだったんです。なので、表現には苦労はしないんですけど、今回に関しては例えばアニメ作品や、何かの世界観に対して書くとか、誰かに満足してもらうために書くとかではなくて、何もない白紙の状態でどうぞご自由にと言われるのが久々だったんですよ。その状態って逆にすごく悩むというか。正解がないし、誰かに聞きたくても、そんなの自分で考えてよってことなので(笑)。最初は悩みましたけど、結局自分の中にないものを書いても仕方ないというところに辿りついて、とにかく自分の中にあるものを書こうと。で、書き出したらどんどんどんどん、制作しながら進化/変化をしていくんじゃないかって思ったので。最初は日記のように、今思っていることや、どうでもいいこともバーっと書き出して、その中で、一番自分の中で浮き上がってきたものを曲にハメ込んでみたりもしました。でも、コロナ禍でこの日本だけではなくて全世界で悩んだり苦しんだり、今までにない苦しみを抱える人たちが多くいて。そういう初めての苦しみって、どう乗り越えたらいいかわからないし、途方にくれることもいっぱいあったと思うので、そんなときに音楽や誰かのちょっとした支えが、大きな力になってくれることがあるんじゃないかと。ナノの音楽がそれになってくれたら嬉しいなと思って。だから、自分のできるかぎりのこと、世の中の支えになれるものというのをこのアルバムのテーマにしたいって考えたんです。

-日記のように書き出したものを、自分で客観的に見たときにどう思いましたか?

自分ってめちゃくちゃナイーヴだなって思いました。アニメのタイアップや、何かの世界観を彩るための曲では、いくらでもかっこいいことを書けるし、自分が経験してないことも想像で書けたりするんだけど。自分のことを書くってなるとダサいし、恥ずかしいし、ナイーヴだし自信ないし、めちゃくちゃ苦しい。あぁ、自分人間だなって感じて。改めてそういうのがこれからの自分のテーマなんだなって思ったんですよ。かっこいい自分を見せていくのではなくて、聴いてくれる人に寄り添うというか。みんなの弱さを受け止めたり、寄り添ったりするためには、自分も弱さを曝け出さないといけないんだなっていうのをすごく感じたから。今までとは真逆のやり方で、人を癒していきたいなってすごく思いました。

-力強く抱きしめるだけじゃなく、隣に一緒に座ってくれる感覚ですね。

そうそう。一緒に泣いてあげるとか、なぐさめるとかだけでなく、分かち合うということも時にはいいのかなって。