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INTERVIEW

ナノ

2016.10.24UPDATE

2016年10月号掲載

ナノ

Interviewer:沖 さやこ

-今作『DREAMCATCHER』は、オリジナル作品としては約1年ぶりのリリースです。この1年でリミックス・アルバム『nano's REMIXES』(2016年7月リリース)のリリースや、国内外で多数のライヴを行うなど充実した1年だったと思いますが、どんな期間になりましたか?

この1年はゆったりしたペースで活動できる期間もあったので、制作に時間も掛けられたんです。あと、2017年がデビュー5周年なので、それに向けた自分作りや、音作りをしていました。来年はとにかく自分を外へ、バン!! と出していきたいので、そのためにもエネルギーを作るというか、とにかく自分を発信していくのが重要な年になってくると思います。デビューしてからずっと走り続けてきたので、ここ1年間は一瞬足を止めて振り返ってみたり、学んだことや経験したことを全部見つめ直したりする期間でもあったかなと思いますね。

-リミックス・アルバムはEDMアレンジが施されていますが、なぜこういうアルバムを制作しようと?

1年前に「Freedom Is Yours」(『nano's REMIXES』収録曲)を作ったことが最初のきっかけです。この曲ができたときに、自分もこれは好きだなと思ったし、作曲をしたWEST GROUNDも同じ意見で。いずれはそういう引き出しを広げてみたくて、そこから1年経って"リミックス・アルバム作ってみようぜ"、"EDMに再チャレンジしようぜ"という話になったんです。「Freedom Is Yours」もリリースしていなかったのでちょうどいい機会でした。制作はすごく楽しかったです。特に今はEDMがものすごく求められてるし、流行っているので、それに乗っからない理由もないですからね(笑)。

-ロックで歌うのとEDMで歌うのと、感覚は違いますか?

正直あんまり変わらないですね。特に自分の楽曲はEDMでもロック寄りですし、自分は"EDMだからこう歌おう"、"ロックだからこう歌おう"という意識はあまりないです。自分の歌をただ歌うだけ。

-海外でのライヴはもうだいぶ慣れましたか?

この数年、いろんな国でライヴをさせていただいて。今日(※取材日は9月3日)から2週間後にニ度目のインドネシア公演があります。ニ度目があるなんて本当にありがたいことだし、また"ただいま"と言えるのは本当に嬉しいことです。もちろん日本は日本で今自分が拠点として活動している場所なので大事なんですけど、海外は日本と文化もリアクションも違うから、刺激を受けます。自分も英語でMCをするんです。(自分自身が)アメリカで育ったのもあって、(海外という)環境がどことなく懐かしくてホッとするし、あまり考えないで喋れたりもするんですよね。日本でのライヴだけでなく、そういう経験をどんどん積んでいくと音にも影響すると思うので、これからも国内外問わず活動の幅を広げていきたいですね。

-そんな1年間の様々なチャレンジの結果で見えたご自身のこととは?

何かが変わったというよりは"変わってないこと"に気づいたのかもしれないですね。"何があっても前向きでいたい"、"自分は常に自分の意識次第で変わることができる"という自分の芯はブレていない、ここにあるんだということを再認識できました。とにかく前進していきたいので、それを妨げるようなことは極力やらないようにしましたね。吸収することも始めることも大事で――自分は本当にハングリーな人間だなと思いました(笑)。

-今作の表題曲であるTrack.1「DREAMCATCHER」はTVアニメ"魔法少女育成計画"のエンディング・テーマ。今回も書き下ろし曲なんですよね。

制作を始める段階ではまだあまり情報も出ていないので、原作やアニメの脚本を読みながら"どんなアニメになるのか"と想像しながら制作をするんですよね。少ない材料で解釈して、それを料理して曲を生み出すというのが毎回の課題です。今回もまずWEST GROUNDからデモをもらって、そのメロディから受ける印象と、作品の素材をいただいて歌詞を書いていきました。でも今回はアニメの制作サイドから"自由に作ってみてください"と言っていただいたので、タイアップ曲の書き下ろしにしてはとことん自由に作りましたね。

-"魔法少女育成計画"は16人の魔法少女による、残留を賭けた、過酷な椅子取り合戦のお話。ですが「DREAMCATCHER」はシンセの音色が柔らかい、希望の光に満ちた歌で、物語から受ける印象とは異なるものでした。

今回は意外性を追求してみました。オープニング曲とエンディング曲の役割は違うと思うんですよね。"魔法少女育成計画"は激しかったり苦しかったりする側面があるので、エンディング曲はそうじゃない部分を表現できるチャンスでもあるんじゃないかと思って。みんなに癒しを与えて、次のストーリーに向けて心拍数を下げて、また次のストーリーになったときにオープニング曲で上げてもらう――そういうメリハリが1話ごとにを通してあるといいなと思ったので、こういう曲調にしました。本でも映画でも音楽でも何でもそうですけど、同じ作品であるにもかかわらず、観る人や読む人、聴く人によって解釈が違うじゃないですか。だから"魔法少女育成計画"という作品でも、激しさだけじゃなくて切なさや優しさを読み取る人もいるんじゃないかなと。マイノリティかもしれないけど、その部分を(視聴者が)より引き出しやすくするための鍵になってほしいとも思ったんです。そういう部分をサポートできたらいいなと思って。

-タイトルの"DREAMCATCHER"は、"夢を掴む"という意味だけではなく、魔除けのお飾りとも掛けられてるんですよね? 柔らかい曲調はアニメの登場人物の魔除けのようにも思えて。

あぁ、それを読み取ってもらえたのは嬉しいですね。"魔除け"は、"魔法"とも掛けてますし、夢を掴むために戦っているというのもありますし。いろんな意味の"DREAMCATCHER"が混ざっているんです。捻くれてるなと思うんですけど、こういうことを考えるのが本当に大好きなんですよね(笑)。言葉そのままの意味で受け取ることもできるし、ちょっとマニアックな人ならネットで調べて他の意味に辿り着くことができると思うし。深く追求する人へのご褒美みたいな感じですね。

タイアップ作品と自分の心情がハーフ・アンド・ハーフで込められた

-いつもナノさんが書く歌詞はネガティヴを描いたうえのポジティヴだと思うんですよね。だから「DREAMCATCHER」みたいなすっきりと前を向いた歌詞は新鮮でした。静かな夜明けを感じさせる楽曲のイメージともよく合っています。

これまではガツガツと戦う曲が多かったので、こういう曲をやる機会があまりなくて。だから今回はとにかく"癒しを与えたい! リスナーさんを癒そう!"と思って(笑)。今年は自分と向き合ったりして、ちょっとペースダウンできる時間があったので、それがここに表れているのかも。ゆったりした心が反映されていると思います。普段の激しい曲だと"戦っている最中の望みを手にしたい"という歌詞になるんですけど、これは"苦しみを乗り越えたあと"、"戦いのあと"というイメージなんですよね。WEST GROUNDは、この曲を作る前に自分自身の制作でちょっと行き詰まりを感じたりしてたらしいんです。そのいろんな気持ちを全部この曲にぶつけたと言っていましたね。なのでデモをもらったときに"ただものじゃないな"と感じるところはあって。一発ですごく好きになったし、"WEST GROUNDにとっても大事な曲だからその想いも汲みたい"と思ったので歌詞を書く筆も進みました。

-そのWEST GROUNDさんのエピソードも"戦いのあと"感がありますね。前しか向いていない曲になったのは必然かも。リスナーに、タイアップ作品に、そしてWEST GROUNDさんに向けたナノさんの愛ですね。

いやぁ、もう愛しかないですよ(笑)。WEST GROUNDにとっても自分にとっても、タイアップ作品と自分の心情がハーフ・アンド・ハーフで込められました。

-イントロのヴォーカルとウィスパー・ヴォイスの掛け合いもドラマチックでした。

あれはレコーディング中に"こうしてみようか"というアイディアが出て、試行錯誤して生まれたものです。こういうアプローチはあんまりしたことがないと思うので、リスナーさんからどんな反応が返ってくるのか楽しみですね。今回はとにかく優しく歌うことと癒すことを心掛けたので――とは言っても自分は完全な癒し系になるのは無理なので(笑)、"力のある癒し"のヴォーカルになったかなと。