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INTERVIEW

ナノ

2019.02.06UPDATE

2019年02月号掲載

ナノ

Interviewer:吉羽 さおり

ナノのニュー・シングル『KEMURIKUSA』が2月6日にリリースされた。タイトル曲は、1月から放送中のTVアニメ"ケムリクサ"のオープニング・テーマであり、どこかメランコリーを帯びつつも激しく力のあるヴォーカルとサウンドとで、カタルシスのある展開を果たす曲となった。アニメ作品そのままのタイトルを付けることはほとんどないナノだが、今回は、"KEMURIKUSA"というこのミステリアスで得体の知れない響きが曲のフックになっていて、引き込んでいく。カップリングではストレートなEDMをクールなヴォーカルで聴かせるなど、2019年第1弾として新鮮な手触りがある作品だ。

-ニュー・シングル『KEMURIKUSA』は、アニメ"ケムリクサ"のオープニング・テーマということですが、今回、ナノさんとしては珍しくアニメと同じタイトルを曲にも付けていますね。

そうですね、今回は行けるところまでとことん行っちゃおうじゃないかというのがありました。アニメ自体が今までにない作品でもありましたし。正直言うと、最初にアニメの監督と打ち合わせをしたときに、その段階で作品の世界観を100パーセント把握できたかと言うとできなかったんですよね。その理由としては、監督の世界観が独特なものであり、監督自身もとても個性的な方で。"この解釈でいいのかな"って、わからない点もいっぱいあったんです。その段階でまだ曲はできていなかったので、思い切って"KEMURIKUSA"というタイトルを付けることで、曲へ入り込みやすくなる気がしたんです。これが"ケムリクサ"の曲なんだっていう気持ちで挑めたので。解釈とか理解はあとから徐々についてきたものだったんですけど。それはそれで良かったなという気持ちでしたね。

-たしかに、どんな内容、ストーリーなのかなとアニメのホームページを見たんですが、どういう話なのかが掴めないままでした。

放送された1話目を観たあとでも、まだ謎がいっぱい残るというか。たぶん、それは意図してやっていることだと思うんですけどね。その謎を楽しみながら観る作品だなって。すごくわかりやすい作品もあれば、謎に満ちた作品もあるし、わけのわからない作品もありますけど、この作品はいい意味で謎の多い作品だなと。

-この曲とアニメとが連動して進んでいって、内容が深まっていくのは面白いですね。内容的なところでは、困難があり、葛藤しながらも、突き進んでいく曲で。特に今回は、1番、2番と進むごとにサビの歌詞もフレーズや心境が変わっていく感じになっています。最後までうねるような展開をしていく曲だなと思うんですが、ナノさん自身はこの曲をどういう思いで描いていたんでしょうか。

この曲は、今年の一発目として、とにかく人の心を揺さぶるものにしたいなと考えましたね。自分自身にとってもそうですけど、何かを変える力がある曲だと思ったので。1年をスタートする、勢いのあるものにしたいなと。

-最初は苦悩に満ちたなかでうずくまっているようなところから、徐々に動き出していく、何かを掴んでいくドラマチックな曲になっていますね。今回は熱いラップ・パートも長くあって、曲の構成としても面白い。

結構ハードな曲ではあるんですけど、ただただハードなだけではなくて、その裏には繊細さと弱さがあるかなと。そこをうまく自分で表現できたらいいなと思います。

-壊れてしまった世界が描かれてもいますが、自分の内面的な部分にはどう引き寄せていったんですか。

アニメの世界観を参考にして歌詞を書いているんですけど、自分で観た感じでは、廃墟のような世界でやっと生きているという感じのキャラクターたちがいて。その尊い命が、ものすごく大切に感じたんです。この残りの命たちがいつ壊れてしまうのかわからないという駆け引きや不安もあって。それを歌詞にしたいなと思いました。

-作品として一番シンパシーを抱いた部分は、どんなところでしたか。

大切なものとか本当に自分にとって必要なものって、いつどこで、どういうふうになくなってしまうかがわからないことですよね。世の中に絶対はないし、一生もないから。そういう手放したくないものほど、手放してしまったときの喪失感が大きいなと思うんです。それが家族だったり、もちろん音楽だったりとか、自分にとっての大切なものってすごく脆くて、フラジャイルなものだなと。そこはアニメやファンタジーとは関係なくあるものだなって感じますね。

-ナノさん自身、そういった何か大切なものが壊れてしまう、手放さなければいけない状況になった経験はありましたか。

デビューしてからは、そういう経験はないんですけど。デビューをする前は、音楽だけではなくて、いろんな面でたくさんのものを手放してきたなっていう場面が、人生の中でありました。でもそれって"本当に手放さなきゃいけなかったのかな?"って自分に問い掛けると、もしあそこで粘っていれば、手放さなくても済んだものもあったなと思うんです。だからこそ本当に、今の活動、デビューしてからのこの6年間は、これだけは死んでも手放せないなと考えていますね。いろいろと苦しみがあったときでも、これだけは犠牲にできないって思ってやってきましたので。もしかしたら過去に経験したロス、喪失感が、今、音楽に強く入れ込んでいる理由にもなっているのかなと思います。

-たしかにそうですね。

失う経験をしたからこそ、失いたくないっていう気持ちがより強くなるっていうか。

-MVのショート・バージョンもいち早く公開されましたが、ヘヴィなバンド・サウンドでストレートに魅せる、ライヴ感のある仕上がりですね。

結構激しいものになりましたね。でも、音源だけを聴くとシンセとか現代的なサウンドでもあるんですよ。MVを想定して作ってはいなかったので、こんなにバンド感のあるものになると思っていなかったんです。曲ができあがって、年末であまり時間が取れないなかで、どういうMVにしようかって考えたときに自分が思いついたのが、すごく派手な曲だからこそシンプルにバンド・サウンドだけで見せたら、この曲の良さが引き立つんじゃないかということで。ディレクターさんともそういう話をして、凝った演出はなしで、バンドだけでやってみようっていうことになりました。それで、バンドのメンバーとMVの撮影をやり遂げたんですけど、翌日はみんな首やら腕やら身体が死んでる状態でした(笑)。

-ライヴ状態だったんですね(笑)。

もう、ライヴ以上でしたね。

-たしかに、音源だとシンセの印象が前に出てきますが、MVだとバンド・サウンドのソリッドで生々しい音が逆に聴こえてくる。それがまたこの曲のパワーを映しているようですね。

そうですね。今年はもうちょっとあまのじゃくになろうかなと思っているんです。期待されているものじゃなくて、期待を裏切るようなことを積極的にやっていきたいなって思って。"これはこうだ"って決めつけないで。逆に、これは絶対にこうじゃないだろうっていうのをあえてやってみたりして、いろんな人を驚かせたりとか。もちろんそれは自分にとっても学びや経験になるし、時にはそれが失敗に繋がる可能性もあるとは思うけど。でも失敗を恐れないでいきたいなと思っているので。