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INTERVIEW

ナノ

2025.08.13UPDATE

ナノ

Interviewer:吉羽 さおり

近年、海外でのライヴも多くなり、"DO OR DIE!! Rock Your Heart Out"と題したツアーでは東京、上海、北米、そして初のヨーロッパでのツアーを行ってグローバルに活動を広げているナノ。まとまった作品としてはアルバム『NOIXE』(2023年リリースのアルバム)以来となる最新EP『aИomaly』では、まさにナノの今のモード、挑戦的に自身の世界やサウンドスケープを広げた、より力強くもエモーショナルなロック・アンセムが詰まっている。Survive Said The ProphetのYosh(The Hideout Studios)とShow作曲、ナノが作詞をしたリード曲「ENDGAME」をはじめ、"ライヴ"で気持ちを1つにする曲も多く、熱いエネルギーで貫かれた作品となった。作品について、また8年ぶりとなる国内ツアーについても、現在のナノの思いを語ってもらった。


最近は闇というよりは、希望や未来を感じさせる何かを伝えたい


-今年は北米ツアー"DO OR DIE!! Rock Your Heart Out in North America"から始まって、7月には初のヨーロッパ・ツアー"DO OR DIE!! Rock Your Heart Out In EUROPE"を行いました。帰国間もないところでのインタビューとなるので、まずはヨーロッパ・ツアーの感触を聞かせてください。

予想をいい意味でめちゃくちゃ超えました。ずっとやりたかったので、また1つ大きなマイルストーンを通過したなという気持ちです。

-もともとヨーロッパでもリスナーが多かったんですか。

正直言うと、ドイツに関しては、初めて行った海外のライヴがドイツ("DoKomi")で、それが12年前だったので、ドイツには(リスナーが)少しはいるなという感覚があったんですが、他のアーティストさんも同じなのか分からないですけど、ヨーロッパの市場ってちょっと見えにくいというか。アジアや南米は積極的にSNSでメッセージを送ってくれたり、Spotifyで数字を見ると上位にいたりするんですけど、ヨーロッパに関しては把握しきれないところがあって、あとは何が流行っているのかも他の地域と違うので。今回は、向こうのイベンターさんもうちのチームもチャレンジというか、見えないなかでの挑戦だったと思います。

-それでも蓋を開けてみれば、いい盛り上がりになった。

そうですね。数字だけではなくて、熱量は本当にすごかったと思います。それに一番驚いた感じでしたね。

-ナノさん自身はデビュー当時から長く海外でのライヴを行ってきましたが、そのなかで日本の音楽やカルチャーの受け取られ方の変化等体感できるものはありますか。

めちゃくちゃありますね。コロナ禍というタイムスタンプみたいなものがあったとすると、それ以前とそれ以降では世の中がいろんな意味で変わって、音楽的にも変わった気がしていて。それまでもたくさん行っていたのに、コロナ禍以降のほうが、全体的にすごく熱量やパッションがレベルアップしていると感じますね。もしかしたら、自分側がもっと届けられる状態になったというか、成長してステージに立っているのかもしれないですけど。いろんな意味でここ5年間はますます熱量が上がってきている気がします。

-日本の音楽への見方や興味も変化しているんでしょうね。

それも半分あるのかもしれないですね。コロナ禍以降、アニメや日本のカルチャーが海外でもものすごく受け入れられるようになって。アメリカでも南米もヨーロッパも、入国審査とかで"ジャパニーズ? コンニチハ"って笑顔で言ってくれたり、日本人に対して好感を持っているようで。自分が子どもの頃アメリカに住んでいたときは、オタク文化っていうか、アニメなんてかっこ悪いぞみたいな感覚もありましたけど。今では街中で普通に"ONE PIECE"のTシャツを着ている人がいて、"ONE PIECE"のタトゥーを入れてるファンもいたし、世の中変わったなっていう。今こそ日本のアーティストはどんどん海外に行くべきだなっていうのは思ってます。

-そういう海外でのライヴが続いてきたなかで、ニューEP『aИomaly』がリリースとなりました。まとまった作品としては久々で、またライヴに向いた曲が多いなと感じる作品となりましたが、今作はどのように形作っていこうとスタートしましたか。

デビュー・アルバム(2012年リリースの『nanoir』)以外は、良くも悪くもアルバムを作ろうと思って作品を作り始めるのではなくて。曲を作っていって、そろそろいいアルバムになるなってところで、アルバム制作っていうプランニングがスタートしていくことがほとんどで、今回もそうだったんですけど。この数年で作っている音楽が1つのプロジェクトとしてまとまると、自分の2~3年間がぎゅっと詰まったなというか。バラバラなのかなとも思いつつ、最終的には曲が集まるとちゃんと自分のタイムラインになっていて、最初にレコーディングしたのが「Devil In Me」で2022年なんですけど、今聴くと新鮮な感じがありますね。

-そこに続いていったのが「Oblivion」と「Lost in Gray」になると思いますが、この2曲はソングライター/プロデューサー、Seann Boweさんの曲で、ナノさんの曲の中でも新しいタッチのサウンドとなりました。Seann Boweさんとはどういう感じで一緒にやることになったんですか。

違ったサウンドに挑戦してみたい時期だったんです。じゃあどういう方向のサウンドに挑戦するのがいいかと考えたときに、ここ数年海外のライヴが多くなって、海外の人たちをもっと巻き込んで歌を届けたい気持ちが強くなっていたので。これまであまり海外のクリエイターさんと曲を作ったことがなかったので、そこで勉強になることや新しいナノサウンドが生まれるんじゃないかということで、ナノチームにいろいろ探ってもらったんです。Seann Boweさんはいろんな方のプロデュースをしているんですけど、MIYAVIさんの音楽も作っていらして、私、MIYAVIさんが大好きなので、もしお願いできるのであればやってみたいっていうことだったんですよ。

-そこでどういう曲にしていきたいかは実際Seannさんとも話をしているんですか。

これまでは曲に関して深く打ち合わせをしてから作ることはなかったんです。クリエイターさんが作った曲に対してちょっと注文をすることはあっても、最初からこういうムードでこんなテンポ感でこんなメロディラインでというのは、そこまでやったことはなくて。でもSeannさんはゼロから話し合ってくれたことに驚きでした。まず"ナノはどういうメッセージを伝えたいの?"ってところから始まって。これが海外のクリエイターの主流なのか、それともSeannさんがそういう作り方をする方なのかは分からないですけど、おかげで、一緒に作っている気持ちになったし、その分納得いく歌詞が生まれたし。新しいサウンドなのに自分らしさが詰まった2曲になったなと思います。

-一番はどういう話をしたんですか。

ライヴに向いている曲ですね。昔はあまりライヴを意識して曲を作っていなかったというか、アニメのテーマ曲等が多かったので、作品に合う曲やアニメで映えてインパクトがあってという曲作りが多かったんです。実際にライヴで歌いにくいとか、ものすごくカロリーが高い曲が多いんですけど、ライヴがメインになると、ライヴでお客さんと上手く繋がることができるかどうかが大事になってきて。全曲ではないですけど、お客さんが覚えやすいメロディや一緒に歌えるメロディ、フックになるフレーズがあるとか、腕を振りたくなる、飛び跳ねたくなる要素がほしいというところから始まるんです。
あとは、一時期は自分は闇にいるなという時期があって、そんな歌詞になりがちだったけど、自分としては今の人生のステージが闇じゃなくて。最近は闇というよりは、そこから開けて、ポジティヴではないですけど、希望や未来を感じさせる何かを伝えたいってのが大きいんです。

-たしかに、この2曲はそういった思いが強くあって、特に「Lost in Gray」は外に開いていく感覚、高揚感がありますね。

そうですね。あとは単純に自分はカメレオンタイプで、わりとクリエイターさんに影響をされるというか、この人はどんな気持ちでこの曲を書いたんだろうって想像しちゃうんですよ。Seannさんは、これは自分の勝手なイメージですけど本当に心が純粋な方で、だから、闇が書けないんですよね。「Lost in Gray」では特に彼の心境を想像しながら、自分の心境と彼の心境を混ぜて(歌詞を)書いてみました。

-EPの流れとしても、最後にこの「Lost in Gray」が来て、歌の伸びやかさと相まって気持ちが解きほぐされていく感覚があります。こうした新しい制作を経験することで、次のものづくりへのスタンスも変わってきそうですね。

Seannさんはレコーディングにも立ち会っていて、その人その人でレコーディングの仕方は違うんですけど、日本の方のレコーディングの仕方ともまた違って、ものすごい自由なんですよね。効率の良さとかではなくて、やりながら相談したり、一緒にハモを作ったりコーラスを作ったり、"ちょっと僕もブースに入って一緒に歌うわ"みたいな感じで、2人でマイクの前でコーラスをやったり。その場その場のインスピレーションでやることは、今までそんなになかったので、すごくいい勉強になりましたね。

-今回のリード曲となった「ENDGAME」にもそんな空気感を感じました。Yosh(Survive Said The Prophet/The Hideout Studios)さんとShow(Survive Said The Prophet)さんによる作曲ですが、こちらはどうですか。

「ENDGAME」ではSeann Boweさんから学んだことを100パーセント生かしてみました。初めてSurvive Said The Prophetの方たちとタッグを組んで曲を書いてもらって、ドラムのShowさんにスクリームとしても参加してもらっていて。

-この終盤でのシャウト・パートはShowさんだったんですね。

そうなんです。コーラスの部分は同じマイクでやったり、同じ空間でいろんなマイクの距離感を試してみたりしながらやりましたね。人と同時に歌うことで自分も煽られるし、すごく人間らしさが増す気がするんです。曲にもよりますけど、こういうタイプの曲は決め込むよりは、その場で感じたことをやってみる方が上手くいくかなと思います。