LIVE REPORT
"LOUD PARK"
2023.03.26 @幕張メッセ
Writer : 米沢 彰 ©LOUD PARK All Rights Reserved.
CARCASS
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その次は、"リヴァプールの残虐王"と形容される通り、アンダーグラウンドな空気を纏ったヘヴィな音を鳴らすCARCASS。1曲目からオーディエンスの盛り上がりがすごい。全体にこれでもかと低音に振り切ったサウンドで、独自の空気を作り出していく。ベース・ヴォーカルのJeff Walkerが煽ると、フロアのずいぶん後ろまで拳が上がる。熱狂的な一体感をフロアに作り出し、ステージをあとにした。
STRATOVARIUS
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悪辣としたCARCASSの空気感と打って変わって、パワー・メタルのヒーロー感や多幸感を1曲目からしっかり体現するのはSTRATOVARIUS。クラシカルなフレーズの速弾きをギターとキーボードのユニゾンでしっかりと弾き切ることで、音楽的な懐の深さと素養の高さを要所で見せてくるもんだから、暑苦しいぐらいの主人公感&RPG感にものすごい説得力が出てくる。ステージの熱にフロアも湧き上がって応え、まるでアーティストとオーディエンスが臨界に達したかのように、一緒に上がっていくテンションが圧巻のステージとなった。
NIGHTWISH
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NIGHTWISHのステージは、スクリーンを3分割し真ん中だけが実際のライヴ映像で左右は曲の展開に合わせた映像が流れるという不思議仕様なのだけど、オペラ調の重厚なシンフォニック・サウンドと相まって世界観がより色濃く引き立てられている。Floor Jansenが繰り出す圧巻のヴォーカルと、映画の登場人物かのようなルックスのTroy Donockley(Uilleann Pipes/Low Whistle)が奏でる様々な音色にぐいぐい引き込まれる。来日延期にヤキモキしたファンも多いはずだが、このステージを観ればそれも無事に乗り越えられひと安心だったはず。
KREATOR
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KREATORが登場しMiland "Mille" Petrozza(Vo/Gt)が "トーキョー!!"と呼び掛けると特大の歓声が上がる。"日本式のウォール・オブ・デスを見せてくれ!"と煽られ割れるオーディエンス。"Eins, Zwei, Drei, Vier!"とカウントをナチュラルにドイツ語で発したのがお茶目に感じられる。スタートから熱狂が巻き起こるのも当然の重厚な音圧がBIG ROCK Stageを満たす。ここまで、同期やシンセ・サウンドが強いアーティストが続いたこともあり、最小編成でこれだけの音を鳴らすことの凄みがよりいっそう浮き上がる。時代的にも同期があって当然どころか、同期で音圧を稼いでいるようなアーティストも目立つなかで、このライヴを今見せられると、必要以上にその意味や深みを勝手に感じてしまう。生身の人間が今この場でしか生まれないシナジーを生み出していくのがライヴなんだ。そう考えさせられるハイエナジーなステージとなった。
PANTERA
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いよいよトリのPANTERA。まさに物理的にライヴの幕が落とされると割れんばかりの歓声が上がる。それもそのはず、1曲目から「Mouth For War」なんだから。Phil AnselmoがスクリームするAメロからすでにオーディエンスのシンガロングが巻き起こる。冒頭からフロアはいきなりクライマックスのような熱狂。Zakk Wyldeの髪を振り乱しながらのギター・ソロにもガッツリ歓声が上がる。"ソロ不要論? ばっかじゃねーの?"ここにいる全員が普段からそう思ってるはず。
曲間にもPANTERAコールが湧き上がり、Charlie Benante(Dr)がそのリズムに合わせるなど、異様な盛り上がりを見せる。約20年ぶりの再結成。その間の2度のメンバー喪失も含め、ここで今、PANTERAとしてのパフォーマンスが行われている奇跡を、バンドも、オーディエンスも、その全員が噛みしめるようにしてライヴが展開していく。いよいよ最終盤に差し掛かったところで繰り出される「Walk」。さらに後ろから前へと人が流れ、さらにヴォルテージを上げていきながら「Domination」、「Cowboys From Hell」とさらなる熱狂を作り上げその幕を閉じた。
親子連れをはじめ、まさに老若男女様々な層が集まったフロアを見ていると、ワンマンや対バンではなかなか実現できない裾野の広さがフェスには間違いなくあり、継続的にフェスが行われることがシーンを継続させ、広げていく重要なミッションを担っていることを実感できる。この音楽ジャンルが継続して楽しめるカルチャーとして残り続けるために、フェスがなんら制限なく続く未来を期待しつつ、限定復活だけにとどまらないという話もある今後の"LOUD PARK"の歩みにも期待したい。