INTERVIEW
OUTRAGE 映画"鋼音色の空の彼方へ"公開記念座談会
2022.05.18UPDATE
2022年05月号掲載
今年デビュー35周年を迎えたOUTRAGEのドキュメンタリー映画"鋼音色の空の彼方へ"が、ついに劇場公開される運びとなった。今回は地元Zepp Nagoyaで行われた一夜限りのOUTRAGEのフル・オーケストラ共演を観た翌日に、映画公開を目前に控えたタイミングで話をうかがうことができた。OUTRAGEから阿部洋介、丹下眞也、映画の中で役者として登場する秋田卓郎(丹下役を演じる山内 聡役)、岡 陽介(NAOKI役を演じる前田 徹役)、さらに山田貴教監督、クラファン用に漫画を書き下ろしたあんど慶周先生と、多彩なメンバーでそれぞれの立場からクロス・トークを展開。本テキストを読んで、映画公開の日を楽しみに待っていてほしい。
OUTRAGE:阿部 洋介(Gt) 丹下 眞也(Dr)
山田 貴教(監督)
秋田 卓郎(山内 聡役)
岡 陽介(前田 徹役)
あんど慶周(漫画家)
インタビュアー:荒金 良介
普遍的な友情、成長、青春みたいなものが根本に流れている(秋田)
-昨日のOUTRAGEとオーケストラによるコラボ・ライヴ("35th Anniversary Special Live OUTRAGE & Outrageous Philharmonic Orchestra")を終えた感想から聞かせてください。
丹下:ようやく終わったなと。それぐらい緊張感がありました。初日のリハから全然上手くいかなくて。自分のノリをオーケストラが掴みづらかったらしく......リハは苦労しましたね。本番は会場もリハとは違ったので、心配はあったんですよ。でもめちゃめちゃいい経験ができたし、周りの反応もすごく良かったので、安心しました。
阿部:リハを3日間やって、そこで仕上がった感触はあったんです。いざ本番に臨んで、言ったら4回目で一番いい出来でしたね。ホッとしました。
-観る限り演奏がズレている印象はなく、ちゃんと形になっていました。
丹下:ズレている演奏にオーケストラのみなさんが合わせてくれたので、感謝しかないです(笑)。
阿部:総動員で丹下さんに合わせるというね。
-山田監督はいかがでした?
山田:リハも観たんですけど、まぁ演奏が合わないわけですよ。ちょっとヤバいなと思いました。だけど、プロだなと思ったのは2日目、3日目とオーケストラと一緒にやるうちにお互いが歩み寄った部分もあるだろうし、本番に強い人たちと言うんですかね(笑)? 本番は噛み合ってましたから。
秋田:最初はヘヴィ・メタルとオーケストラがマッチするのかなと思ったんです。もし違和感があったら、なんて感想を伝えようかなと思ったんですけど、想像以上にマッチしているなと。最初にコラボした「MY FINAL DAY」(1991年リリースのアルバム『THE FINAL DAY』収録曲)で衝撃を受けて、鳥肌が立っちゃって。ワクワクしたし癒されたし、ちょっと悲しい気持ちになるパートもあり、35周年の歴史が詰まっているなと。オーケストラとコラボして可能性が広がったというか、僕が言うのも生意気ですが、まだまだ飛躍しそうだなと。
阿部:上手に喋るねぇ(笑)。
秋田:いえいえっ!
-喜怒哀楽、様々な感情を刺激されたと?
秋田:大海原に流されているような強さを感じたり、大事な人と別れたときの悲しさだったり、いろんな感情が湧き上がってきました。
-岡さんはいかがでした?
岡:僕はOUTRAGEさんのライヴを観るのは初めてだったんですけど......すごかったですね。オーケストラと一緒にやってどうなるかなと思ったけど、かっこ良くて。劇中で使った曲も興奮して聴かせてもらいました。こうなるんだ! って。僕らが劇中でやっているよりも何十倍もすごいことをやっているし、音の出方も違いますからね。
阿部:オーケストラとやったらどうなるんだろう、というのはやってる側も同じだから(笑)。
-ライヴ自体は3部構成になっていました。特に感動したポイントがふたつあり、ひとつ目は「SAD SURVIVOR」、「VEILED SKY」(共に『THE FINAL DAY』収録)の2曲の流れで、OUTRAGEとオーケストラの融合ぶりが凄まじく、楽曲が何十倍にも化けてましたね。
阿部:どちらかといえば、「SAD SURVIVOR」はコミカル寄りのタイプだね。
丹下:編曲してくださった小塚(憲二)さんは夢があるなと。俺たちのメタル曲を聴いて、ああいうふうにアレンジしてくれたので、すごい想像力だなと思いました。
阿部:ロマンチックだよね。
-曲が持っているドラマチックな要素をより引き出して?
丹下:はい。いろんなバリエーションをつけてくれたから、こう来たか! って。
-もうひとつ感動したポイントは「RIVER」(『THE FINAL DAY』収録)、「DEADBEAT」(2004年リリースのアルバム『CAUSE FOR PAUSE』収録)の2曲の流れです。映画の中でも描かれている通り、NAOKI(Vo)さんが一度脱退し、OUTRAGEには3ピース時代がありました。「RIVER」はNAOKIさんとオーケストラ、「DEADBEAT」は3ピースとオーケストラという組み合わせで披露してくれましたよね。
丹下:35年の歴史の中で10年は3人で活動してましたかね。歴史の一部だし、もう1曲追加してもいいくらい(笑)。
阿部:今回のセットリストで「DEADBEAT」が一番好きだった。面白かったなと。
丹下:ただ、残念ながら、俺の場所からオーケストラの音は聴こえてなくて。本当はどんなアレンジになっているのか、あまりわからないんですよ。これから映像を観て、それを確認しようかなと思っています。
-苦しい3ピース時代を駆け抜けたからこそ、今回の映画や、オーケストラとの共演も生まれたんだなと思い......。
阿部:いや、本人たちは苦しくはないんですよ。好きでやっているだけだから。
丹下:映画のストーリーではエンターテイメントとして描かれていますけどね。
山田:でもそこはかなり重要なところで。セールスとか関係ないんですよね。お客さんがいなくてもロックやるぜ! と言う人はいるけど、それを本当に体現している人たちだから。
阿部:山田さん、インタビューの腕が上がったね!
山田:いや、俺は補足しているだけだよ(笑)。
-3ピース時代の楽曲にオーケストラが入ることで、あの時期も祝福してくれるような印象を受けたもので。
丹下:OUTRAGEというバンドもそうだけど、役者のみなさんや学生さん、誰もが結局人生でいいことも悪いことも、喜びも悲しみも経験するわけじゃないですか。それは映画を観ても、みなさんが共感できる部分かなと。
-"迷惑かけても、続けるんだよ!"と伊藤(政則)さん役の方(須藤正男/三根孝彦)が言われてましたが、まさに続けなければ到達できなかった景色があるんだなと。そして、映画がもうすぐ公開されますよね?
丹下:バンド側は"お願いします!"という立場ですからね。特に意見も言っていないし、映画は監督、脚本家、役者さんが作り上げるもので僕らはただの題材に過ぎないんですよ。途中経過は聞きましたけど、最後に観させてもらえればというスタンスでした。
阿部:僕はなるべく映画を初見で観たかったので、距離を置いていたんです。台本も事前にいただいていたけど、あえて開かずに映画を観たんですよ。素晴らしい映画でした。
-山田監督は完成した今どんな気持ちですか?
山田:ついに劇場で一般の方に観ていただけるのは嬉しいですね。
阿部:本当にできちゃうもんなんですね。
山田:やっぱり長かったですね。
阿部:コロナもありましたからね。
山田:うん。撮影するのも、稽古するのも、脚本ができるまでも大変でした。
秋田:映画は監督のものだと思いますが、みんなで稽古の時間を設けたので、一般の方に僕らが作ったエンタメ作品がどう評価されるかなと。名古屋愛、ヘヴィ・メタル愛が詰まっているし、普遍的な友情、成長、青春みたいなものが根本に流れていますからね。
山田:さっき秋田君は、映画は監督のものだと言っていたけど、僕よりも上の監督の方はそういう意識が強いと思うんですよ。僕はそれがまったくなくて、チーム・プレイだからこそ面白いわけで、役者が演じる芝居によって変化するところがまだ面白いから。彼らの芝居を稽古で見て、そうくるんだ! って。もちろんこうしたほうがいいとかは言いますけど、芝居していないときの表情も大事だからとかは伝えました。バンドの映像を撮るときも、こうしろ! と言ったことはないですからね。
阿部:言われても無理ですけどね(笑)。
-役者さんの芝居を見て、新たなキャラクターが見えたところも?
山田:監督役の山中(裕史)さんが、ちょっと勘違いしていて、自分のことをイケメンだと思っているんです。
一同:ははははは(笑)。