INTERVIEW
OUTRAGE
2020.04.10UPDATE
2020年04月号掲載
Member:NAOKI(Vo) 安井 義博(Ba)
Interviewer:荒金 良介
OUTRAGEのニュー・アルバム『Run Riot』をすでに聴き込んでいる人も多いだろう。今年1月に発売予定だったものの、3ヶ月遅れでついに世に放たれることになった(3月7日に先行配信リリース)本作。ファンを驚かせた前作『Raging Out』は傑作の名に値する出来映えだったので、今作を聴く前は不安がなかったわけではない。しかし、ここに届いた新作を聴くと、思わずガッツポーズを取りたくなる素晴らしいアルバムではないか! 前作とは似て非なるバンドの魅力を掘り下げた今作の完成度について、NAOKI、安井義博のふたりに話を訊いた。
今作はこれまでの全作品を振り返った
-前作『Raging Out』(2017年リリースの13thアルバム)に引き続き、今作も素晴らしいアルバムができましたね! まずは作り終えたおふたりの感触から聞かせてもらえますか?
安井:客観的にまだ聴けなくて、実感はないんですよね。
NAOKI:1枚の作品として流れで聴いてなくて......1曲ずつ聴いただけなんですよ。逆にどんな反応を貰えるのか楽しみです。
安井:ただ、前作とはまた違うところに行けたと思う。
NAOKI:うん、前作までは何か新しいものを取り入れよう、少し若返りを図ろうみたいないやらしい根性があったんだけど(笑)、今回はいい意味でそういう強い意志みたいなものはなくて......違う言い方をすると少し自然な感じに戻ったというか、その時々の流れに任せて録った感じかな。それを聴いた人がクレイジーだな、アグレッシヴだなと受け取ってくれたら嬉しいですね。
-NAOKIさんとして自然体に近い感覚で取り組めたと?
NAOKI:そうですねぇ。歌メロに関しては作曲者に一番委ねた作品だと思う。だから、作曲した人の意図を再現することに務めました。逆に俺らしさみたいなものを他のメンバーの方が熟知しているところもあるだろうしね。全力で歌っているんだけど、気負いはない。
-その気負いのなさに関しては安井さんも同じなんですか?
安井:そこは同じかもしれない。前作は成長しきれていないおっさんという感じだったけど、今作はただブチ切れた親父みたいな(笑)。
-はははは(笑)。今作は前作以上にOUTRAGEの初期衝動感が炸裂してますよね。
NAOKI:自然体が一番クレイジーかもしれないね。
安井:前作は若い人もできるかもしれないけど、今作はジジイにしかできないかなって(笑)。
-OUTRAGEのアイデンティティをさらに突き詰めた濃厚な仕上がりだなと。
安井:『BLACK CLOUDS』(1988年リリースの1stアルバム)から『Raging Out』まで全部入ってるかな。前作は20歳のOUTRAGEに影響を受けた自分たちみたいなイメージだったけど、今作はこれまでの全作品を振り返った人たちみたいな(笑)。
-けど、過去のどの作品にも似てませんよね。
安井:うん、そうだと思う。
NAOKI:アティテュードは変わってないと思うんだよね。自分たちの音楽に影響されたり、日々塗り替えられる音楽シーンにも刺激を受けていたりするだろうし、それを自分たちの変わらないアイデンティティに取り込んでいくから。他のメンバー3人を俯瞰で見たときにも変わってないからね。で、今はお互いのことをより理解できるようになったし、若い頃と比べても、むやみやたらにぶつかることはなくなった。ただ、本質は変わってないと思う。
安井:常々そうだけど、過去の焼き直しはやりたくないし、前作と同じことはやりたくなかったから。
-なるほど。
NAOKI:とりあえずデモを集めましたみたいなノリはあるかもしれない。ここからまた発展して、ひとつかふたつ突き抜けたところに行ける可能性を秘めた作品だなと。ここからまた新しいものが出てくるかもしれないし、また全然違うものが出てくるかもしれないね。
-今作はライヴ映えする楽曲が多くて、そういう意味でも衝動性の強い曲調が揃ってます。それが、安井さんが言った"ブチ切れた親父"という表現とも繋がるのかなと思いました。
安井:"前作よりもアグレッシヴにしよう!"という話は出てたんですよ。
NAOKI:よっちゃん(安井)はOUTRAGEだけじゃなく、いろんなバンドでベースを弾いてるから、OUTRAGEでやるときはアグレッシヴな部分だけを抽出してやれるのかなと思うね。それでブチ切れたテンションを持ってきたのかなって。
安井:こないだ53歳になったんだけど、ファン目線で見たときに"(これまでより)余計に頭おかしくなってない?"というバンドでいたいから。
-前作以上にクレイジーにいきたかったと(笑)。
安井:うん、まだ落ち着きたくはないかな。
NAOKI:シンガーとして歌い込んだものやバラードみたいな曲が以前の作品にはあったけど、今回はないもんね。
-たしかにスロー・テンポのナンバーは皆無ですよね。
安井:曲のリストにも上がらなかったもんね。
NAOKI:無我夢中だったから、それが初期衝動に繋がるのかなと。
-初期にあった密室感みたいなものを感じます。
安井:曲的にどのへんを言ってるかはわかる。
-例えば、冒頭を飾る「Edge Of A Blade」は1stアルバム『BLACK CLOUDS』収録の、「EOS」から「EDGE OF DEATH」の流れに通じるものを感じます。
安井:初期の頃にあったヨーロッパ的な雰囲気があるということね。今作の1、2曲目(「Edge Of A Blade」、「Blood And Scars」)あたりにそういうイメージを持つのはわかる。「Machete Ⅲ」が1曲目だったらまた印象が変わるだろうしね。前作の1曲目(「Doomsday Machine」)も哀愁っぽいし、この曲(「Edge Of A Blade」)もそうだから、次のアルバムでは違う雰囲気の曲で始めたいな(笑)。
-「Hot Rod Immunity」などは、『THE FINAL DAY』(1991年リリースの4thアルバム)に収録されてもおかしくないサウンドですよね。
安井:橋本さん(NAOKI)が戻って一発目のアルバム(2009年リリースの『OUTRAGE』)から作曲者が丹下(眞也/Dr)&阿部(洋介/Gt)、俺という形でチームが2パターンに分かれたんですよ。今作の3、5、7、8、9曲目(「Hot Rod Immunity」、「Silver Screen Hero」、「Machete Ⅲ」、「Supernatural Outlaw Of The Cosmic Void」、「Science Spirit Hits」)は自分が作曲したものなんですよ。
NAOKI:歌メロも自分で歌ってきたものを渡してくれてね。
安井:あくまでもガイドだけどね。そのまま歌ってもらってもいいし、変えてくれてもいいからって。