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INTERVIEW

H.E.R.O.

2022.03.15UPDATE

2022年03月号掲載

H.E.R.O.

メンバー:Christoffer Stjerne(Vo/Gt)

インタビュアー:菅谷 透

コロナ禍前の2020年初頭には日本での初となる単独公演を行い、同年リリースの前作『Bad Blood』は洋楽デイリー・チャートで1位を獲得するなど、高い人気を誇るデンマーク発のロック・バンド、H.E.R.O.。彼らの2年ぶりとなる最新アルバム『Alternate Realities』は、バンドの持ち味であるキャッチーなメロディはそのままに、過去最高にヘヴィでエモーショナルな、激情のラウド・サウンドを奏でる作品に仕上がっている。昨今の世界情勢や、フロントマン Christoffer Stjerneの家族との関係崩壊や、その後の癒しのプロセスというパーソナルな体験も反映された本作について、彼に語ってもらった。


こういうアルバムができてすごくハッピーなんだ。 H.E.R.O.史上最高のものができたって本気で思っているからね


-ちょうど2年前ですが(※取材は2月上旬)、2020年1月、2月にはH.E.R.O.として初めての日本での単独ライヴが行われました。当時のことで何か印象に残っているものはありますか?

もちろん! 日本で単独ライヴができるなんて、俺たちにとってまさに夢が叶った出来事だったよ。日本とはとても強い絆があるから、そこで自分たちだけのショーができるというのはとても大切なことだったんだ。最高だったよ。それにしてもあのショーができて本当に良かった。何しろあの直後にパンデミックが起こったからね。

-デンマークに帰国して間もなくパンデミックが起こったんですよね? 2ndアルバム『Bad Blood』のツアーが延期や中止になったと聞きました。

そうなんだよね。"このパンデミックはそう長くは続かないだろうから、発売日もキープしておこう"って、賢い決断をしたと思っていたんだけどさ......俺たちが間違っていたよ(苦笑)。ショーはたしか12~15公演くらい予定されていたんだけど、全部キャンセルになってしまった。しょうがないよね(苦笑)。今はもう少しいい状況に向かっているといいんだけど。

-本当ですよね。ちなみにデンマークではコロナ関連の規制がすべて撤廃されたとか?

そう。2月1日に規制がすべて撤廃されたんだ。今は完全にノーマルな状態に戻ったよ。

-影響があったとはいえ、ニュー・アルバム『Alternate Realities』を作ってくださって良かったです。アルバムの制作はいつごろからスタートしましたか?

世界中がシャットダウンしたときにはかなり落ち込んだよ。"これからどうしよう?"と思った。"これが新しい現実なのか?"ってね。デンマークではたしか2020年の3月中旬にすべてがクローズしたんだ。その次の月から夏にかけて最初の数曲を書いた。だから1年半くらい前からかな。

-そのころは『Bad Blood』が出たばかりでしたよね。すぐに新曲を書くムードになれましたか?

まぁね。何しろ他にやることがなかったんだから(苦笑)。全員自宅でじっとしていて、"どうする?"、"曲でも書くか"みたいな感じだったよ。

-そのおかげで、平常心を保つことをできた部分もあるのではないでしょうか。

そうとも言えるね。少なくともそうやってこの状況に対処したつもりだよ。ただ座って状況が緩和するのを待っているよりはアルバムを作ったほうがいいかと思ってさ。ただ、『Bad Blood』はある意味水の泡になってしまったけどね。ツアーもできなかったし、やりたい形でプロモーションができなかったからさ。それでも、もう1枚アルバムを書いたんだ。

-アルバム・タイトルの"Alternate Realities"はパラレル・ワールドなどを指すときに使われることの多い用語だそうですが、これをタイトルに掲げたのはなぜでしょうか?

タイトルは「Bring Me Back To Life」に出てくるフレーズから取ったんだ。これはコンセプト・アルバムではないんだけど、結果的に、ある意味それに近い形になった。どの曲も俺の過去やトラウマに関して書かれているからね。俺は今まで生きてきたなかで、自分と家族が"Alternate Realities(別の選択肢としての現実)"に生きているんだってことを受け入れなければならなかった。それと同時に、今の世界の状況をこの言葉が内包しているような気がしたんだ。今は世界中がコロナに直面していて、それぞれが違う受け止め方をしている。つまり、"Alternate Realities(パラレル・ワールド)"に生きているんだ。

-先にご自身の経験からこの言葉が生まれたんですね。今の世界の状況との偶然の一致にはいつごろ気づいたんでしょうか。

ずっとあとになってからだよ(笑)。たしか、アルバムの完成予定時期まで3週間くらいしかなかったんじゃないかな。"Alternate Realities"がいいって全員の意見が一致したあとで、"あれ、もしかして歌詞の内容と世の中の現状、両方に合っているんじゃないか?"と気づいたんだ。

-本作はChrisさんの家族との関係崩壊と、その後の癒しのプロセスというパーソナルな体験を反映した内容になっているということですが、今回そのテーマを取り上げようと思ったきっかけをうかがえますか?

曲を書くときは、いつも何か言いたいことがないか探すものだと思う。でも、俺のこの体験については別にわざわざ声高に歌にするものでもないとずっと思っていたんだ。もうずっと昔の話だし、俺自身とっくに乗り越えたことだったからね。でもこうやって突然世の中が変わってしまって、家で何もしないでいることを余儀なくされるとね......。あと、俺は3年くらい前に父親になったんだ。

-そうだったんですね!

ああ。子供が生まれると、世の中の見方が変わるものだよ。それで今回は結構早い段階から、こういうことを声高に訴えたいと思うようになったんだ。ちゃんと向き合っておかないと、って思ってね。俺にとってその手段は曲を書くことだった。だから、わりと早いうちにこれをテーマにしようというのは決めていたんだ。

-ご自身が親になったことがきっかけで、ご両親がどんな親だったかを振り返る機会ができたのかもしれないですね。

間違いないね。子供のおかげで面白い経験ができているよ。自分がどういうふうに育てられたかを振り返って、自分の子はこのあたりを違う育て方にしよう、とか考えるからね。それが今回のプロセスに役立ったことは間違いないよ。

-何だかいい形で一巡したような感じですね。

本当だよ! 俺にとってもかなりセラピー的なプロセスだったから、それも良かったね。

-サウンド面では、おそらくH.E.R.O.史上最高にヘヴィなのではないでしょうか。2ndアルバム『Bad Blood』よりもさらに深く重心を落としたような、エネルギーに満ちた、ヘヴィでラウドな仕上がりになっています。こうしたサウンドにたどり着いた経緯を教えていただけますか?

もともと俺たち全員のバックグラウンドがメタルに近いからね。それもあって、今君も言ってくれたように『Bad Blood』にもヘヴィな曲がいくつか入っているし、『Humanic』(2019年リリースの1stアルバム)にもある。それにずっと家にいて、世界中がものすごく沈んでいるのを眺めていたら......(※ニヤリと笑う)ハッピーでポップな曲を書くなんて無理だよ(笑)!

-(笑)

何しろみんなお手上げ状態で、状況がヘヴィなんだから(笑)。

-この状況に対する怒りや、フラストレーションも入っていたのかもしれないですね。

そうかもね。俺たちにとってはとても自然な流れだったよ。こういうアルバムができてすごくハッピーなんだ。H.E.R.O.史上最高のものができたって本気で思っているからね。過去の作品ほど内容が多彩じゃないって言う人もいるかもしれないけど、前よりフォーカスができていると思うよ。

-それでいてキャッチーな面は残った、H.E.R.O.ならではの作品になっていると思います。

そうだね。キャッチーさは俺たちのDNAだから、そこから離れることはないよ。

-こうしたヘヴィなサウンドのアーティストで、気に入っているバンドや好きなバンドはありますか?

もちろん! いろんなものがあるよ。俺はBRING ME THE HORIZONをよく聴くんだ。彼らは今じゃ世界一ビッグなロック・バンドだよね。あとはフランスのヘヴィ・メタル・バンドのGOJIRA。このふたつのバンドは、どこかの時点でメインストリーム入りを果たしたと思う。突然みんなに受け入れられるようになったんだよね。90年代、俺が子供だったころのことを思い出したよ。何もかもがハード・ロックだったころ。ああいうのを聴いていると、俺たちももっとヘヴィになっていいんじゃないかと思えてきたんだ。この手の音楽にもオーディエンスが存在すると確信しているよ。

-本作はこれまでライヴにも参加していたJohan Wohlert(Ba/MEW)が正式メンバーとして加入した、4人体制で制作された初のアルバムです。アタック感の強いベース音が、非常にインパクトがありますが、彼の加入でバンドに起きた変化はありますか?

そうだね......プロセスかな。Johanは『Bad Blood』のレコーディングにも参加したけど、今回は俺やAndi(Anders Kirkegaard/Dr)なんかと一緒に、エンジニアやミキシングを担当したJacob Hansenとの話し合いにも参加したんだ。今回はああいうユニークなサウンドのベースを強調したいというのがあってね。運良くJacobがそれを実現できる独特のミキシングの方法を編み出して、Johanのベースのサウンドをさらに新境地へと導いてくれた。それが今回の要になっている。これ以上ないくらいハッピーだよ。想像したよりもずっといい仕上がりになったからね。

-彼はソングライティングにも貢献しているのでしょうか?

メインのソングライターは俺で、デモも大半は俺が作っているけど、あいつには自由にやってもらったんだ。"俺はデモでこう作ったんだから、お前もまったく同じようにしてくれ"という感じじゃなくてね。クリエイティヴな余地を与えて、やりたいようにやってもらったんだ。そういう意味ではものすごく貢献したと言えるね。

-本作のジャケットには、日本人にとっては馴染み深い"折り紙"が描かれています。あれを見るだけで日本人は親しみが湧きますよね。

嬉しいね。あのジャケットのおかげで、日本で売れるかな(笑)?

-(笑)ジャケットのテーマをうかがえますか?

グラフィック・デザイナーと話をしたときに、折り紙がヴィジュアル的にクールだって意見が一致したんだ。そのあと、日本人は折り紙を折るときに願い事を込めるって聞いたんだ。例えば、病気が早く良くなりますようにとか。それを聞いてハッとしたんだ。折り紙が癒しのシンボルで、状況が改善することを願うものだってことは、俺のシチュエーションにぴったりじゃないか! と思ったよ。俺も癒しを求めていたしね。そりゃ、今はすべて過去のことにできたけど、折り鶴ならこのアルバムの内容をヴィジュアル的に体現できると思ったんだ。それに、言うまでもなく日本とは強い絆があるから、日本のみんなが身近に感じてくれるものがあるのはいいことだと思ってね。

-折り鶴の効果と同じように、あなたも癒しを得て今はずっといい状況にいるわけですし、希望の印にもなりますね。

そう言ってくれて嬉しいね。それから、折り紙のことについてはネットでちらっと見ただけで、日本のみんなにとって本当に癒しのシンボルかがわからなかったから、そうだとわかって良かったよ(笑)。

-「Gravity」はシンバル・カウントから強烈なリフが襲いかかる楽曲です。歌詞では身近な人と離れるための力を引力に例えていますね。

"Gravity"(引力)のメタファーは、俺の人生の中でのある時期に言及しているんだ。俺の家族はこっち方向に進んでいるけど、俺は反対方向に進むものなんだってことが明らかになった時期だった。ある意味、現実に殴られたような感じだったよ。引力が俺をその"反対方向"に引っ張り下ろしてくれたんだ。それがこの曲のメタファーであり要だね。少なくとも、ギター・リフに関しては一番ヘヴィな曲なんじゃないかな。あれをシングルとして出したことによって、どんなアルバムになるかを垣間見せたような感じだね。