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INTERVIEW

H.E.R.O.

2022.03.15UPDATE

2022年03月号掲載

H.E.R.O.

Member:Christoffer Stjerne(Vo/Gt)

Interviewer:菅谷 透

-続く「Lead The Blind」では、"get the blind to lead the blind"というフレーズが印象的です。

デモの段階ではイントロがすごく長かったから、これはストレートに核心を突くように持っていったほうがいいと思ったんだ。"get the blind~"のフレーズはコーラスにも出てきて、コール&レスポンスの形をとっている。そこから取ったんだけど、楽器がないところで歌うだけだとなんだか響きが悪かったんだよね(苦笑)。それで代わりに囁いてみたんだ。実は、歌詞を書いた時点では気づかなかったんだけど、"get the blind to lead the blind"(盲人が盲人の道案内をする=よくわかりもしないことを他人に教え導くこと)的なフレーズは聖書にもあるらしいんだ。

-たしかに、聖書に出てきそうなフレーズではありますね。

そうなんだよ。俺は知らなかったけどね。ただ、すごく腑に落ちたんだ。俺が家族と別れたのも宗教的な理由だったから。曲はまったく宗教とは関係ないけど、歌詞のテーマとそれが関係しているというのは納得がいった。出てくるべくして出てきたフレーズなんだなと思ったよ。

-また、この曲ではNORMANDIEのPhilip Strand(Vo)がフィーチャーされています。彼を起用した経緯を教えていただけますか?

いつかは外部のアーティストをフィーチャーしたいという考えは、俺たちの中で結構前からあったことなんだ。ただ、それに合う人やシチュエーションが今までなかった。俺はずっと前からNORMANDIEのファンで、Philipの存在も知っていたんだ。個人的に知り合いだったわけじゃないけどね。でも(共にプロデュースを手掛けた)Jacob Hansenが、別の人のアルバムでPhilipがフィーチャーされていたのをミックスした関係で、Philipの電話番号を知っていたんだ。それで、たしか「Lead The Blind」のミキシング段階だったと思うけど、"ぜひ彼に電話してくれ"と頼んだ。そうしたら興味があるか聞いてくれた。彼がトラックを気に入ってくれてラッキーだったよ。予想以上の結果を出してくれたしね。彼を入れるというのは即決だったよ。

-彼とは実際知り合いになれたのでしょうか?

実はまだ会えていないんだ。彼はスウェーデンのどこかに住んでいて、当時はロックダウンもあったから、まったく会えなかった。本当は彼にコペンハーゲンに飛んでもらってMVで共演するっていう話もあったけど、それも隔離とか、いろいろ問題があって頓挫してしまった。代わりにネット上で会ってはいたけどね。あとはメールをやりとりする程度だけど、ナイス・ガイだってのがすごくわかるよ(笑)。参加してもらって良かった。

-もしかしたら、将来的にはスウェーデンやデンマークで共演できるかもしれないですね。

本当だよ! そうなったら最高だよね。機会があったらノーなんて言わないよ(笑)!

-もうひとり、「Monster」ではRAGE OF LIGHT/AD INFINITUMで活動するヴォーカリストのMelissa Bonnyをフィーチャーしています。どういったきっかけで彼女を起用したのでしょうか?

あれは最後にやった曲だったということもあって、Philipのフィーチャーとは違うものにしたかったんだ。それで彼女にしたというのもあるけど、1年半くらい前に彼女のバンドのAD INFINITUMに曲(「My Justice, Your Pain」)を作ったんだよね。

-そうだったんですね。

ああ。だから彼女が人間としてもシンガーとしても素晴らしいってことは知っていたんだ。最終版のマスターを納品する直前に、この曲にMelissaを入れたいという話になった。それで電話して、Melissaにやる気はあるかと聞いてみたら、ふたつ返事で乗り気になってくれてね。自分のヴォーカルを全部自宅で録音してくれたよ。それを聴いてみたら"Wow!"という感じだった。まったく新しい曲になったんだ。彼女に参加してもらってなかなか楽しい経験になったよ。実は今度「Monster」のMVを一緒に撮るんだ。今度は一緒に参加できるからきっと楽しいよ。

-Melissaはスイス出身ですよね?

実は、彼女は出身こそスイスだけど、デンマークに住んでいるんだ。彼氏がデンマーク人だからね。

-そうなんですね。

俺も初めは知らなかったんだけどね。スウェーデンのヘヴィ・メタル・バンド、AMARANTHEのドラマー(Morten Løwe Sørensen)と付き合っているんだ。知ってのとおり、Jacob HansenはAMARANTHEともよく仕事をしているからね。そういう縁もあったんだ。

-このアルバムではいろんなことが巡り巡っているみたいですね。

本当だよ! 今こうして話していて気づいたけどね(笑)。

-「Oxygen」ではこれまでにないほどの高音のヴォーカルが披露されています。

この曲は、MEWのコンサートに行った数日後に書いたのを覚えているよ。あのバンドは男性のファルセットを結構使っているんだ。そのショーですごく刺激を受けたよ。俺たちもああいう高い声を使った曲が欲しいなと思ったんだ。もちろんMEWよりずっとヘヴィなサウンドでね。そのショーを観たあとの月曜日にスタジオに入って、"俺が出せる一番高い声はどのくらいだろう?"なんて実験してみたのを思い出すよ(笑)。そこから始めてみようと思ってね。そんな感じに書いた曲なんだ。

-素晴らしい仕上がりになりましたね。

そうだね。そうやってインスピレーションがはっきりしている曲だと、書くのも楽なんだ。アルバムの中でも個人的に気に入っているよ。

-第1弾シングルとしてリリースされた「Made To Be Broken」はノイジーなデジタル・サウンドと激しいリフが融合した、本作を象徴するような楽曲です。

最初に書いたのがあの曲だったんだ。Andy(Anders "Andy" Kirkegaard/Dr)とスタジオに入ったときのことを覚えているよ。初めはエレクトロニックな音でいろいろ遊んでいたんだ。最初に思いついたのがすごく不快なシンセサイザーの音で、メインのリフみたいにピッチが下がる感じのものだった。"これを使って何かクレイジーなものを書こうぜ"という話になって、まず俺がギター・リフを作ったんだ。そこから発展していった。この曲がきっかけで、新作のソングライティングへのモードに入ったと言えるね。以前よりヘヴィな方向に進むだろうと思ったのもこの曲がきっかけだったんだ。

-全体の雰囲気がこれで決まった感じですかね。

そのとおりだね。

-そうして発展していったなかで生まれた「Cynical」は、壮大で叙情的なサウンドスケープとヘヴィなサウンドで、これまでとはまた異なるスタイルを披露しています。

そうだね、俺もそう思うよ。このアルバムではいろんなスタイルを試してみたんだ。というのも、前作から1年も経っていなかったなかで作ったアルバムだから、短い間にどういうふうに自己改革していくかというのが大事だったからね。今までやったことをいかに繰り返さないかには気を使ったよ。プロダクションやギターの感じもそうだけど、メロディの面でも今までとは違ったものを求めていたんだ。「Cynical」はそんななかでも、ドリーミーな雰囲気を出しながら壮大なサウンドを作るという狙いがあった。

-本編を締めくくる「Heavy Heart」は傷ついた心を癒やすようなバラードで、ラウドだった他の曲との対比も興味深い楽曲です。

俺もあの曲はとても気に入っているんだ。通常H.E.R.O.がああいう曲をやるときは、最初スローで静かに始まって、そのうちバンド全員が加わって壮大なロック・ソングになるというのがお決まりだった。

-あぁ、たしかに。

でも今回は、ささやかな雰囲気とエレクトロニック感をできるだけ残したかったんだ。そのアイディアをプロダクションの段階からずっとキープしていた。実は1回目のデモではもっとアコースティック・ギターが使われていたんだけど、それを削除して、ピアノをちょっと弾いてみた。そうしたら儚げな雰囲気が出て、アルバムの締めくくりに相応しい感じになったんだ。

-傷つきやすい心がアルバムの最後に癒しを得る、という感じになっていますね。

そう、それが狙いだったんだ。ここでも巡り巡った結果になっているよね(笑)。

-ボーナス・トラックには2曲が収録されています。個人的に「Hopeless」は『Bad Blood』のポップな感触、「Is It Me You're Looking For」は『Humanic』のオルタナティヴなロックのスタイルを感じたのですが、これらの曲についてもうかがえますか?

まさに、という感じの意見だね! 「Hopeless」はたしか「Made To Be Broken」の直後に書いたから、まだアルバムの曲作りを始めたばかりのころだったんだ。トラックリストのメインに入れるにはちょっとインパクトが足りないかな、と思って入れなかったけど。「Is It Me You're Looking For」は昔からあるデモで......たぶんこのバンドの結成当時からあるんじゃないかな。

-そうだったんですね。

ああ。『Humanic』のときもメンバーにこの曲を聴かせた記憶があるよ。『Bad Blood』のときも(笑)。で、今回も聴かせたわけだけど、"曲はいいんだけどね。でもH.E.R.O.の曲なのか、それともお前がソロでやったほうが相応しい曲なのか......"なんて言われたんだ。それでも俺は推したんだけどね。それでボーナス・トラックに使ったわけだけど、たしかに『Humanic』に入っていてもおかしくない曲だよね。

-なるほど。これら2曲がバンドとしての『Alternate Realities』への進化を表しているかもしれませんね。

そうだね! そう言えると思うよ。

-リリース後のバンドの活動予定について教えていただけますか? 海外では4月に出るんですよね?

実はリリースが早まって3月になったんだ。日本が3月16日で、他の国が18日だったかな。日本が最初だよ(笑)! いくつか予定が入っていて、4月から5月にかけてデンマークでいくつかショーがあるんだ。それから......日本のコロナ状況がクール・ダウンしてくれることを願っているよ。そっちに行きたいからね。言うまでもなく、日本には一刻も早く行きたいと思っているんだ。夏に行ってオッケーってことになったら、最初の飛行機に乗るよ! ......で、秋にはもう少しハードなツアー・スケジュールを入れることになるんじゃないかな。

-最後に、日本のファンへのメッセージをお願いいたします。

もちろん! まずどうしても言いたい大切なことは......日本のファンのみんな、本当に本当にありがとう! もう何年も会えていないけど、今もしょっちゅうメッセージを貰ったりTwitterでタグづけしてもらったりしているんだ。感謝してもしきれないよ。早くまたそっちに行って、ライヴをやって、みんなに会いたいね!