MENU バンドTシャツ

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

LIVE REPORT

"VisUnite PRESENTS「VisUnite Fest Special Edition Vol.4」"

2018.12.10 @渋谷ストリームホール

Writer 杉江 由紀

近年の日本におけるV系は、アリーナ・クラスの会場で展開できるバンドが極端に少なくなっているため、全体的には停滞モードになっているという懸念があるのも否めないことであろう。そんななか、このたびはシーンの活性化をはかるべく"Visual-Kei"に特化したバーティカル・プラットフォーム・アプリ"VisUnite"(ヴィジュナイト)が主催する"VisUnite Fest Special Edition Vol.4"が渋谷ストリームにて開催されることになり、ここでは新進気鋭のバンドからすでに安定した人気を誇るバンドまで全4組がステージ上にてしのぎを削り合うことになったのだった。

ちなみに、本編に登場した4組以外にもこの夜のイベントではオープニング・アクトとして"VisUnite"アプリ内ランキングにより選出されたバンド re:gletAがまずは露払いをすべく舞台へと現れ、たった2曲ではあったもののファンタジックなパフォーマンスを披露してくれていたことをここに付記しておきたい。

そして、MCであるmasato(METROPOLIS de ONELIA/ex-SuG)と椎名ひかりに紹介されるかたちで本当の一番手としてこの場に斬り込んでくれたのは、自らの音楽性に対してHARMONIZED TIME PARADOXなる言葉を掲げて活動しているRides In ReVellionの面々。渚が5弦ベースを駆使してみせるなか、TaJI(Gt)はセットとして持ち込んでいた巨大な銅鑼をここぞというタイミングで打ち鳴らしてみせるなど、イベントならではのインパクト重視なアピールが多く見られた印象だ。フロントマンの黎(Vo)とドラマー 飴も含めて、限られた持ち時間でどれだけ爪痕を残せるかということに焦点を置いたステージングはある意味で正攻法だったとも言える。

一方で、前身バンドでの経験値も生かしつつ新たな次元を見据えながら2年前に新バンドとしてリスタートしたInitial'L は、ここまで比較的ノンジャンルな対バンで培ってきたライヴ・バンドとしての力量を、この夜のライヴにおいて遺憾なく発揮してみせた。そのアタック感とドライヴ感に満ちたサウンドで場内を熱く沸かせてゆく様は実に痛快で、椎名ひかりからの"アニメの「頭文字D」みたいなバンド名ですね"という素のボケに対して、MCで自らツッコミを入れていく臨戦態勢を見せていたところも粋であったと感じる。これからもいい意味でまだまだ化けていきそうな可能性を、今回Initial'Lのライヴ・アクトからは感じられた次第だ。

さて、こうしたなかで、いよいよイベントが後半に入り佳境を迎えようかという機にこの場をよりカオスな状態へと導いてくれたのは、「Invisible Chaos」からその世界を幕開けしてくれた摩天楼オペラにほかならない。JaY(Gt)を正式メンバーに迎えた現体制がスタートしたのは2018年5月からのことだが、このところの彼らは目下新体制での初アルバム制作に勤しんでいるそうで、今回のイベントにはそんな多忙の中での出演と相なったらしい。来年へと向け、ここからの摩天楼オペラがバンドとしての戦闘力をよりいっそうボトムアップしていくことは間違いないだろう。そんなふうに着々と前へ駒を進めていくバンドがいる反面、バンドには時に不変なままではいられない状況が発生してしまうことも決して少なくはない。

この夜、トリを務めたNOCTURNAL BLOODLUSTは、2018年内をもってCazqui(7strings)とDaichi(Gt)が脱退することを発表したという経緯があり、今回のステージはこの数日後に控えていたイベントを前にした現体制での準ラスト・ライヴだったことになる。しかし、その件にヴォーカリスト 尋が触れることは一切なく、彼らはあくまでも彼らとしての彼ららしいスタンスで、NOCTURNAL BLOODLUSTとしてのステージングを全うしたのみだ。V系寄りのメタルコア・バンドとして素晴らしい実績を上げ、さらなる活躍が期待されていただけに、彼らがいったんここで変革を余儀なくされることは残念でならない。しかし、これはこれでひとつの代謝であるとも解釈できるような気がする。様々なバンドが、それぞれのアーティストが、半ばギリギリのところで緊迫感を持ちながら切磋琢磨をし合っているこの日本のV系シーンが、来年以降さらにいい方向へ発展していくことを、今はただただ願い望むばかりだ。

  • 1