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LIVE REPORT

神使轟く、激情の如く。

2025.01.22 @Zepp Shinjuku (TOKYO)

Writer : 宮﨑 大樹

今年2025年1月をもって7年間の活動に終止符を打つことを発表していた"神激"こと"神使轟く、激情の如く。"。神激が結成された2010年代のシーンと言えば、アイドル戦国時代と呼ばれ、数え切れない程のアイドル・グループが乱立していた時期だ。そんなときに、異彩を放ちながら台頭してきたのが他ならぬ神激だった。

当時はすでに様々なロック・ジャンルを扱う実力派アイドル・グループが存在していたが、そんななかでも目まぐるしい曲展開を見せるミクスチャー・ロックを軸とする神激の音楽は新鮮だったし、ツーステップをはじめとしたロック・シーンのカルチャーを持ち込んだり、メンバー単位でクリーン/ラップ/スクリーム/シャウトとパート分けをしたり、メンバーごとにデザインが大きく異なる衣装を制作したりと、神激はやることなすことが新しかったように思う。オンリーワンの存在として、アイドル戦国時代、そしてロック・アイドル・シーンの最前線を走り続け、一時代を築いてきた彼女たちの功績は大きい。

そんな彼女たちが、ラスト・ワンマン"Zepp Shinjuku単独公演-宣戦布告-"をZepp Shinjuku (TOKYO)にて開催した。当日は開演予定時刻からだいぶ押していて、神激に会うことが待ち遠しい気持ちと、ラスト・ワンマンが始まってほしくない気持ちとが同居する複雑な気持ちの神者(※神激ファン)が多かったのではないだろうか。それでも、始まりがあればいつか終わりは訪れる。それがアーティストの持つ儚さと美しさだというのは分かっているから、今から神激メンバーと共有する時間を心と身体に刻み込まなければならない。それが筆者含め会場全体の想いだったはずだ。

いよいよ開幕の時が訪れた。会場にSEが爆音で流れるなか、メンバーが1人ずつ姿を現す。最初にステージに立ったのは二日よいこ。ラップ担当の彼女は、(ステージを降りるとちょっぴりポンコツだけれど)神激の活動を経てシーンでもトップクラスのラップ・スキルを持つ程に成長してきたメンバーだ。天真爛漫なキャラクターで、誰からも好かれる、愛されキャラでもあった。続く生牡蠣いもこは神激のメッセンジャーとしてほとんどの歌詞を担当しつつ、下ネタキャラで地上波バラエティ番組などでも活躍し、神激の顔としてのイメージも強い。パーソナリティとしてはネガティヴで繊細な面があるが、そんな彼女が書く歌詞だからこそ、たくさんの勇気やパワーを貰ったファンも多くいたはずだ。

神激の中で誰よりもロックに熱かったのは三笠エヴァだろう。常に神激の活動やロックに対して燃えているメンバーで、切り込み隊長的な存在でありながら、その一方で彼女自身が抱える劣等感のようなものがときどき見え隠れしていたように思う。でもそれこそが、彼女の人間的な魅力になっていた。

TiNAは特徴的なハスキー・ヴォイスで神激の歌唱の幅を広げる、クリーン・ヴォーカルにおける飛び道具的な存在だった。その一方でお笑い担当でもあり、グループにポジティヴな空気を生み出すムードメーカーでもある。(もちろん全員に言えるけど)彼女がいなければ今の神激はなかっただろう。最年少の涙染あまねは、そのヴィジュアルからは想像できない凶悪なデス・ヴォイスを神激の活動で習得した、神激の"ラウド"な部分を支えるメンバーだ。ミステリアスな雰囲気が漂う彼女だが、意外に人懐っこいところが人を惹きつけていた。

そして、最後にステージに立ったのはメガネがトレードマークの実久里ことの。メンバーを束ね、支え、引き締める神激のリーダーであり、3人のクリーン・ヴォーカルの中で軸になるような歌唱も、聴き手の目頭を熱くさせるようなMCもできるオールラウンダーだ。そんな超個性的なメンバーたちが奇跡的なバランスで成り立っているのが、神激というグループだった。

メンバー全員が揃うと、ライヴは「合法トリップ:ボイルハザード」でスタート。荒波のようにうねるペンライトの海がフロアに出現するなか、よいこが"2025、1月22日。今日という日を全細胞に刻みつけていけよZepp Shinjuku!"と声を上げ、高速ラップで先導する。それを追随するようにあまねの叫びが空間を切り裂いていき、1曲目から神激も神者も全身全霊で燃え盛るようなエネルギーを交換していった。


続いて三笠が"来てほしかったような、来てほしくなかったような今日。それでもここに立ったら思うことは1個しかないな。ただ今日を楽しみたい!"と話し、「神奏曲:インフェルノ」を投下。バチバチの照明、バキバキのサウンド、轟音を渦巻かせながら続く「BAD CAKE」で尖りまくったリリックを飛ばし、さらにエモーショナルな夏曲「夏声蝉時雨」ではTiNAがまるで外タレのようなオーラのある歌唱で魅了した。

最強のスタートダッシュを決めてから、TiNAとよいこがMCのマイクを握る。TiNAがよいこに"記憶に残っているステージはありますか?"と聞くと、よいこは食い気味に"(日本)武道館("宣戦布告")でしょう"と即答。

よいこは日本武道館について"来世まで語り継ごうと思っている"と続ける。さらに"ここにいる全員、間違いなく幸せにして帰るって約束します! うちらの楽園へようこそ!"と意気込みを語り、「EGO PARADISE」、「生まれ変わっても自分になりたい」、「不器用HERO」を連続披露する。「不器用HERO」では、いもこが神者へ向けて"今日だけはいっぱい泣いていいよ。感情のままにやってやりましょうか!"と話し掛けるなか、Zepp(Shinjuku)を揺らすほどの特大シンガロングが発生した。

「ワールドブレイカー」の導入では三笠が"今までずっと真剣にやってきたライヴに勝ち負けなんてない。優劣だって付けられないって、そう思ってきた。けど、そんなわけねぇな。だって、今日この日に俺たちが今までやってきたライヴ、お前等と一緒に重ねてきた思い出、そのすべてに勝たなきゃ、やってきた意味がねぇんだよ! 今までの俺たち全部をぶっ壊して、今が最高潮だって、俺たちとお前等で証明していこうぜ"と煽りを入れた。そこから「神奏曲:テンペスト」、「ノクチルカ」、「SYZYGY」と畳み掛けると、いもこは声を詰まらせながらこう話す。

"やっぱ目を合わせちゃうとグッと来るものがあるなと思います。これまでの7年間、今までの人生を認めてくれるような、温かく包み込んでくれるような、そんな景色だなって感じました。上京前いろんなことを諦めて引きこもっていた過去も、神激に入ってからMCでボロボロになって何話しているか分からなくなって、逃げるように帰って散々怒られたあの日も。お母さんが死んじゃって、もう立ち直れないだろうなって思ったあの日も。

全部全部、苦しい日々や苦しいことは、あなたがいたから進むことができた。そして今日心から幸せだって思える景色を、生きてきて良かったって思える景色を、一緒に作ってくれて本当にありがとう! なんにもなかった私に居場所を作ってくれた神激へ。そんな私が作った歌詞を、私たちが作った音楽を愛してくれた君へ。そして何より、こんな素敵な世界に生んでくれた母へ。私の全てを込めて捧げます"

いもこの言葉で会場は感情が表面張力いっぱいの飽和状態になる。そんななか神激は「黎明ジャンヌダルク」をパフォーマンスし、神者とともに想いを爆発させた。そしてライヴ、神激は、ことのからの言葉とともにフィナーレに向かって走り出す。

"Zepp Shinjuku、笑えていますか? 泣いていますか? 私がこの7年間ワンマンでマイクを握ってしてきたこと。いつだってライヴの最後の最後、リーダーとして、「次はあのワンマンに行こうね」、「今年の夏はあのフェスに立とうね」、そうやって神激の未来を語ってきました。そして迎えた今日、何を話そうか悩んだんだけど、いつも通り未来の話をします。明日からも生きていってね。当たり前かもしれないけど、それが当たり前じゃない世の中じゃないですか。うちらは君等に生きてほしいから歌ってきたし、足が止まりそうなとき、背中を押してほしいとき、傍にいたいから歌ってきたし、幸いなことにうちらがやってきた音楽ってものは、うちらがいなくなっても聴いてくれるあなたがいる限り、必要としてくれるあなたがいる限り残り続けます。

だから一緒に生きていってください。毎日聴かなくたっていい。流れていくときのなかで、うちらのことを忘れていったっていい。でも、またいつかあなたがつらくなったときは傍にいさせてください。もう1つ、うちらも生きているから。今までたくさんの時間、いろんな景色を過ごしてきた縁のある仲間たちです。今日どうしても来られなくて画面で観ている君もそう、全員仲間たちです。どこかでまたすれ違う気がしているんですよ。そのときは「今楽しいよ」、「今もちゃんと生きているよ」、そう言い合える仲間でいましょう。そのために、君等のことをそんな切ない顔のままじゃ帰らせられないんですよ"

――神激は「神奏曲:ライトニング」、「宣戦布告」、「Supernova」で締めくくった。「Supernova」では神激と神者の大合唱から始まり、そしてステージ、会場全員で肩を組んで最期のときを迎えたのだ。神激と神者は、全てを出し切った。そのときの余韻は、まさに超新星爆発で生まれた"Supernova"のように、今でもみんなの心に残っているだろう。本当に、最後にして最高、集大成と呼ぶに相応しいライヴだった。

これで神激の活動は終了した――終了してしまったが、彼女たちの遺した音楽は消えない。誰かのスピーカーを通して楽曲が再生されるたびに、神激メンバーはずっと神激のままだし、神者のあなたたちもずっと神者のままだ。

それでも......また逢おう、神激。また逢おう、神者。そのときまでどうかお元気で。彼女たちが再び神話を紡ぎ出す、そんな日が来ることを願って。



[Setlist]
1. 合法トリップ:ボイルハザード
2. 神奏曲:インフェルノ
3. BAD CAKE 4. 夏声蝉時雨
5. EGO PARADISE 6. 生まれ変わっても自分になりたい
7. 不器用HERO
8. ワールドブレイカー
9. 神奏曲:テンペスト
10. ノクチルカ
11. SYZYGY
12. 黎明ジャンヌダルク
13. 神奏曲:ライトニング
14. 宣戦布告
15. Supernova

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