INTERVIEW
神使轟く、激情の如く。× 魔法少女になり隊
2020.10.12UPDATE
2020年10月号掲載
神使轟く、激情の如く。:生牡蠣いもこ 二日よいこ 三笠エヴァ
魔法少女になり隊:火寺 バジル(Vo) ウイ・ビトン(Gt)
インタビュアー:宮﨑 大樹
作詞をするときは自分の感情を下まで落としてます
悲しい映画を観たり、それでも落ちなかったら自分の悪口をネットで見たりして(バジル)
-今回、神激からましょ隊への質問もたくさん用意されているんです。ひとつは、作詞する際にどんなところで浮かぶか、もしくは決めた場所で書くルーティンがあるか知りたい、という内容で。
いもこ:自分が神激の曲の作詞をやらせてもらっているんですけど、風呂に入って頭を洗っているときに歌詞が浮かんだりするんですよ。で、歌詞がどういうところで浮かぶかとか、どういうところで書くかとか、他の人に聞いたことがないと思って。
バジル:他の人のって気になりますよね。ウイさんが曲を全部作っているんですけど、それを聴いて、私の場合は自分の感情をめっちゃ下まで落としてます。悲しい映画を観たり、それでも落ちなかったら自分の悪口をネットで見たりして。
一同:えぇー!
ウイ:見てもいいことないべ!
バジル:それで"うわぁ~"って自分を落として、"いや、こんなんじゃダメだな!"みたいになったときに言ってほしかった言葉とかをひたすらメモして。こういうときはこういうふうに優しくされたい、とか。自分が今これを言ってほしいなぁみたいなことを書いたりしてます。逆にかわいい曲を書きたいときはアイドルを見たりとかして、その時その時の気持ちとリンクさせて書いていることが多いですね。
エヴァ:めっちゃわかります。ライヴ前日にMCで何をしゃべろうかとか考えたりするんですけど、そういうときは自分も絶対に気持ちを落とすようにしてますね。ライヴハウスに来てるやつらって傷ついた人間が多いじゃないですか。だからこそ、そいつらに響く曲を作らないと、とか。そいつらに響く歌詞ってなると、自分がそこまで落ちないと絶対に刺さらないですよね。
バジル:ステージとフロアって1個の段があるけど、ライヴの間はそこの垣根をなくすというか、心を近くにしていたいんです。今はなかなかライヴができないから、元気がないときとか、通勤とか、学校に行くときにましょ隊を聴いてくれてると思うんだけど、より歌詞が聴ける環境で聴いてもらって、ちょっとでも日常が元気になったらいいなと考えて寄り添うようにしてます。
エヴァ:自分の弱さを感じたときとか、つらいときにましょ隊さんを聴くと元気が出るんですよね。自分のことを武装させてくれる曲だと思っていて。
-でもそういう作り方って、すり減りそうですね......。
バジル:めちゃくちゃすり減ります(笑)。
-気持ちを落とすみたいなルーティン的なものって、ウイさんが作曲するときにもありますか?
ウイ:僕はたっぷり寝てからやろうとしてます。 一同:(笑)
-対極的に、めちゃくちゃ健康なルーティンじゃないですか。
ウイ:眠いとどうしても集中力が......。気持ちが"眠い"に行っちゃうので。邪魔なものを取っ払ってから挑みたいんですよ。
バジル:じゃあ絶対にご飯も食べたほうがいいですね。
ウイ:そう。だから"お腹空いた!"ってご飯食べるじゃん? で、"お腹いっぱいだぁ、こんなんじゃ曲作れねぇよ!"となって、そのうち"だんだん眠くなってきたぁ"って。寝て食って、また寝る生活。
-作るが入ってないですね(笑)。
ウイ:曲を作るタイミングねぇ......ちゃんとコントロールできるようになったらいいですね(笑)。
バジル:うちのバンドは、作曲に関してメンバーが口を一切出さないんですよ。ドラムもベースもそれ以外も、全部ウイさんひとりでやっていて。バンドだったら普通はみんなでスタジオに入って練習しながら、ベースはベースを考えて、ドラムはドラムを考えて、となるところを全部任せちゃってるから、ありがたいなって思います。
ウイ:ギターしか弾けないのにね(笑)。
-話は変わって、お互いに名前が特徴的なのでそれに関することも聞いてみたいという話も出ているようです。
バジル:あぁ~。たしかに最初は(神激メンバーの)名前を読めなかったりしました(笑)。
いもこ:"火寺バジル"も、パッと見てなんて読むんだろうから始まるじゃないですか? 調べたら、ゲームネームを使っていたそうですよね。フルネームで使っていたんですか?
バジル:"火寺"は違うんですけど、"メイプルストーリー"っていうオンライン・ゲームをずっとやってて、そこで使ってたハンドルネームが"バジル"で、職業が魔法使いだったんです。
神激一同:へぇ~。
エヴァ:ウイさんの由来はなんでなんですか?
ウイ:ノリです(笑)。居酒屋のバイト仲間がメンバーだったりするんですけど、そいつが"ウイ君! バンドやるけどステージ・ネームどうするの?"って聞くから"ウイ・ビトンでいいよ!"って。
バジル:"ウイ"は本名なんです。ウイ・ビトンってル○・ヴィトンとかけてるんですけど、怒られないか冷や冷やしながらで(笑)。"ヴィ"にすると危ないから"ビ"。
ウイ:事務所の人が確認してくれてたらしくて、"これ以上は寄せないように"って(笑)。ということで、ノリでございます。
エヴァ:うちらもノリやもんな?
-神激のみなさんは、自分で名前を付けたんですか?
いもこ:そうですね。
エヴァ:私はいもちゃん(いもこ)に付けてもらいましたけどね。もともと"三笠"っていう名前だったんですけど、それを苗字にしちゃおうと思って。で、下の名前は何がいいかなって話してたら、"肩幅がエヴァンゲリオンっぽいし、エヴァでいいんじゃない?"って。
ウイ:それ悪口じゃね(笑)?
バジル:私の親友にも肩幅がガンダムみたいだから"ガンダム"ってあだ名を付けられた女の子がいたなぁ。
エヴァ:肩幅でかいやつってそうなるんですかね(笑)。"二日よいこ"も秀逸だと思います(笑)。
ウイ:プロフィールを見て想像してたのは、最初の顔合わせとかで"頭いてぇー!"って言ってたのかな、とか(笑)。
バジル:常にヘパリーゼを持ち歩いてるとか、ステージ・ドリンクがウコンとか(笑)。
よいこ:もともとお酒が好きなんです。アイドルのオーディションのとき、特技に"ウイスキーの小瓶一気飲み"って書いてました。アイドルってお酒のイメージがあんまりなくて、それで炎上しても困るので"名前にしちゃえば飲んでても違和感ないだろうな"って。ステージ・ドリンクがアルコールとかも認められる日が来たらぜひやりたいです(笑)。
いもこ:私が最初にグループにいたので、私をベースにみんなの名前が決まっていって、どんどんおかしくなっちゃったんです(笑)。
-バンド名やグループ名についてはどうですか?
バジル:バンドをやろうってなったときに、gari(VJ/Vo)さんはコミカルだし、もともといたベースの人も格闘家みたいなガタイのいい人で、ウイさんだけ会ったことはなかったけど写真を見せてもらったときに、白衣みたいな、料亭で着るやつみたいなの(調理白衣)を着ていたんです。すごくRPGのパーティー感があるなと思って、で、バンド名は決めていいよって言われて、私が魔法少女になりたかったから付けたんですけど、意外とそれにも深い理由があって......ね?
ウイ:うん。
バジル:女の子って魔法少女に憧れたりするじゃないですか? "おジャ魔女どれみ"とか"プリキュア"とか、夢を見たりするものだけど、大人になると現実をだんだん見ていって、夢を諦めちゃうと思うんです。小さい頃って"魔法少女になりたい"とか、なんでも言えていたのに、大人になっていくにつれて言えなくなってしまうのはすごくもったいなく感じて。私が"魔法少女になり隊"っていう名前で活躍して、いろんな人に"魔法少女になり隊の火寺バジル"っていう名前が広まったときに、私は本物の魔法少女になれると思っているんです。そういう想いで付けたので、本物の魔法少女になれる日を夢見てます。
エヴァ:エモい......。
-関連して"魔法少女になりたい! という夢を語ると変な目で見られることもあると思うのですが、そのときはどんな気持ちで頑張ろうと思うようにしていますか?"という質問も挙がってます。
バジル:バンド名だけを見てアイドルと間違えられたりするんです。あと、名前だけでイメージを持たれて聴いてくれなかったりとかして。
ウイ:"サブカル系でしょ?"みたいな。食わず嫌いみたいな感じで。
バジル:そうそう。逆に、聴いてギャップを楽しんでくれる人もいるから、そこも美味しかったりするし、まぁ両方あるんですよね。
ウイ:まだ食わず嫌いしている人はもったいないよね。
エヴァ:もったいないです。うちも"神使轟く、激情の如く。"という名前と、革ジャンで出てきた時点でもう会場から出ていっちゃう人がいて。かわいいハムスターを観に来たのにゴリラ出てきた! みたいな(笑)。
いもこ:だいたい最初に(エヴァが)出ていくので、強そうなのが来たなって(笑)。
バジル:名前のイメージって結構引っ張られますよね。
ウイ:そうだね。そのぶん、ちゃんと聴いてくれた人が"魔法少女になり隊ってすげぇいいよ"って言ってくれるのは本当に嬉しい。
バジル:あと、1回見たら忘れないっていうパンチはありますね。"KNOTFEST"に出たときも私たちとTHE冠さん以外みんな英語で、すごく浮いていて(笑)。フェスとかで名前が並んでいても目立つのはいいところ。
いもこ:神激の名前も、アイドルにはなさそうな漢字をいっぱい使って見つけてもらおうっていうところで、特にめちゃくちゃ強い意味がないんです。ノリで決めちゃった感じなんですけど、見つけやすいっていうのは一緒かもしれないですね。
-バジルさん向けに、"アニメ声でとてもかわいい歌声で憧れるのですが、何かボイトレや歌う際に意識していることがあれば教えていただきたいです!"という質問も来ています。
よいこ:私の声はもともとガサガサなんですけど、初めてバジルさんの歌声を聴いたときにアニメ声でかわいいなと思いまして。
バジル:私が通っているボイトレの先生は、技術的なことよりも、身体が楽器だから身体のメンテナンスからやっていかないとっていう方で。もともと錆ついてる楽器からはどんなに練習をしてもいい音が出ないから、身体の錆を落とすように気をつけなさいって。負担をかけないように、いい姿勢で、いいところから声を出す練習とかしてます。ボイトレに行っても1時間あるうちの55分をストレッチしたり、マッサージを教えてもらったり、自分のメンテナンスをするんです。そうやってから歌うと発声が全然違って、きれいな声が出るんですよ。
よいこ:へぇ~。
-最後は、"アイドルとツーマンをするなど、アイドルと親和性が高いと思うのですが、アイドルへ意識している部分や、理想のアイドル像などありますか"という質問についてです。
エヴァ:バジルさんってアイドルが好きなイメージがあるので、バジルさんの思うアイドル像とか、アイドルに求めているものってあるのかなと思って。
バジル:あぁ~。ひとりで"TIF"に行ったりするくらいアイドル好きなんですよ。乃木坂46さんの握手会も行くし、ライヴも行くし。自分は表に立っているけど、誰よりもオタクの気持ちがわかる立ち位置にいるからこそ思うこととかがいっぱいあって。オタクの心理的に一番グッとくる瞬間は、頑張ってる瞬間を見たりとか、それに自分で気づいたりしたときだと思うんです。私は、歌もダンスも別に下手でもいいと思っていて、でもその子なりにすごく頑張っていたら、"頑張ってるなぁ"みたいな感じになるんです。今までは内気だった子が、MCで大きい声を出した瞬間とかに泣き崩れちゃったりする(笑)。頑張ってる姿とかって意外とオタクは見ていると思う。
エヴァ:そういう裏側ってアイドルならではですよね。
バジル:そうそう。これが苦手だったけどめっちゃ頑張ってる、とか。逆にグループ全体で見たときは、ダンスがビシっと決まってるとか、一体感とか、グループのパワー、団結力が大事だなと思っていて。グループによって大事にしているものって違うと思うから、そういうところを観ながら推しメンができちゃうみたいな感じで(笑)。いろんなアイドルのイベントを観に行ってますね。
エヴァ:いろんなイベントに行っているなかで、神激ってもともと知ってました?
バジル:名前は見たことあるけど、曲とかは聴いたことなくて。今ってイベントがなかなかできないから発掘があまりできないんですよ(笑)。激しい、ラウド寄りのアイドルって増えてるじゃないですか? その中でここだけは負けたくないなっていうのはありますか? こういうふうになりたいな、とか。
エヴァ:抽象的な言い方になってしまうんですけど、私は"生き様"です。もともと音楽が好き、ロックが好き、フェスが好きとかあるので、そういうロックンロールな部分だけは絶対に負けたくないなって思ってます。1本のライヴに懸ける熱量、そのライヴで落とす汗の量だけは、なんだったらメンバーにも絶対負けなくない。他のアイドルにはマジでそこだけは負けねぇと思っているので、そういう全力さ、剥き出しな感じを一番大事にしてますね。
よいこ:私は、初めて神激を観たときの心が動かされる感じを大事にしていますね。アイドルはかわいいって思われたり、ラウド系でもカッコいいって思われたりで終わっちゃうことが多いんです。神激のメンバーは黒歴史を持っている人が多いんですけど、"それを越えてここに立ってるんだ"みたいな、人生を懸けているライヴみたいな感じは負けないかなと。そういうのを武器にして、いろんな人の心を動かしていきたいなっていうのはあります。
いもこ:私はもともと引きこもり陰キャみたいな感じだったので、自分と似た人に響く音楽とか歌詞とかを作れたらいいなとずっと思っています。最近、仕事とかで苦しんでいる人とかが"いもちゃんの歌詞を見て元気が出たよ"って言ってくれたので、もっともっといろんな人に響くような歌詞を書けたらなと。何もなかったからこそ、人生を全部懸けられる場所ができたのが本当に嬉しくて。ここまで人生を懸けて一緒に走ってくれるメンバーは今後見つからない気がするんですよ。自分たちだけでなくファンの人たちも人生を懸けてくれているので、すべてにおいて人生を懸けてくれている最高のグループだと思っています。
バジル:聞けて良かったです。ライヴで観てみたくなりました。