LIVE REPORT
"NEX_FEST 2023"
2023.11.03 @幕張メッセ
CVLTE
前方のオーディエンスが沸き上がり、CVLTEのメンバーがステージに上がってきたことが音と視覚で伝わってくる。"CHURCH_STAGE"にも多くの観客が詰めかけ、とても前では見れる状況ではない。後ろから見るとその盛り上がりから、熱狂的なファンと初見に近い層とが混在しているように感じられる。1曲目からフロア全体をカルト(異常宗教)の熱狂に取り込んでいき、早くも2曲目の終盤には全体の半分以上で手が挙がる状況に。"(メイン・ステージではなく)こっちを選んでくれたみんなに"とMCで語り掛け、フロアのボルテージをしっかりと上げていく。「happy.」ではミッドテンポながら変態的な符割りでフロア全体に独特の浮遊感を作り出し、続く「scorpion.」では突き上げるビートで会場に一体感をもたらす。思うようにフロアを扇動する様はまさにカルト宗教そのもの。
ヘヴィでグルーヴ感に溢れるCVLTEのサウンドと、ステージ全体に投影される映像が、いっそう深い没入感を作りだす。集まったオーディエンスがどんどんと自我を失い、CVLTEに取り込まれていくかのような様子は一種異様でもあるが、そうすることでより深い幸福を得る一種のイニシエーションのようでもある。最後はより精神性の強い「bloodbath.」から、ブレイクダウン気味のパートも含みつつ、メロディ要素が強くドラマチックな「memento molly.」でステージを締めくくった。
BABYMETAL
煽り動画から始まるあたりにBABYMETALのエンタメ性を強く感じつつ、こういう大型フェスのための曲なのでは? と思うぐらい完璧に仕組まれた「BABYMETAL DEATH」でライヴがスタート。これはもうイニシエーション(=儀式)と言っていいだろう。"B・A・B・Y・M・E・T・A・L"の合唱で会場がひとつに統合されていく。そして1曲目とはまったく思えない超絶ギター・ソロ。"これがBABYMETALぞ!"とばかりに冒頭から超満員のフロアに全力全開のパフォーマンスをぶつけてくる。続く「ギミチョコ!!」でイタズラっぽくおどけながらパフォーマンスをするMOAMETAL、MOMOMETALの姿を見ていると、神バンドの超タイトな演奏とのアンバランスさはむしろオリジナリティであり、重要なエッセンスなんだと不思議と納得させられる。特に初期楽曲ほど違和感が大きいように感じられるあたり、今やその違和感を武器として使いこなしていることの証なのかもしれない。
続いて「PA PA YA!! (feat. F.HERO)」、「Distortion (feat. Alissa White-Gluz)」、「BxMxC」、「MAYA」、「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」と方向性も音楽ジャンルも異なる楽曲を次々に繰り出し、いずれも高い演奏力と歌唱力でぐいぐいと引き込んでいく。力強く明るく盛り上げたかと思えば、「Brand New Day (feat. Tim Henson and Scott LePage)」のように繊細なヴォーカル・ワークで歌い上げるSU-METALの表現力の多彩さが光る。このパフォーマンスを見れば彼女たちを"神バンドに担がれた神輿"のように扱おうとは誰も思えないだろう。むしろ自分たちの表現で神バンドを牽引している存在だとしか思えない。真似事とかエッセンスを拾いましたみたいなレベルではなく、圧倒的なクオリティでジャンルごと飲み込みBABYMETALの楽曲として昇華させて見せてきたことが、ここまで評価を高めてきた一番大きな理由なのだろう。
「Monochrome」ではSU-METALが"この暗い世界をみんなで照らしてほしい"と呼び掛け、フロアはスマホのライトを灯して応える。見わたす限り純白の光がスモークの中に浮かび上がり幻想的な光景が広がる。会場をしっとりとさせたあとは「メタり!! (feat. Tom Morello)」、「メギツネ」と上げに上げて超速且つ大団円を見せる「Road of Resistance」で締めくくった。3人の表現力に加え、Tom Morello(RAGE AGAINST THE MACHINE/Gt)、Tim Henso & Scott LePage(POLYPHIA/Gt)、Sam Totman & Herman Li(DRAGONFORCE/Gt)と錚々たるギタリストをフィーチャリングした楽曲を手癖のニュアンスも含めて完璧に再現しきっている神バンドの末恐ろしさを見せつけられるステージだった。
Paledusk
"行くぞ東京ーーー!!!"、いきなりトップギアに入れたギンギンのテンションでPaleduskのステージがスタート。ヘヴィなサビではシンガロングの声がそこかしこで上がる。特別なセットなどないシンプルなステージだが、唯一掲げられたバックドロップには"日本"と"福岡"の文字が並び、彼らが背負っているものが正々堂々と表されている。"飛べ飛べ!"とKaito(Vo)が煽ればフロア中が一斉にジャンプ。これだけリズム的にも展開的にも変態な曲揃い(褒め言葉)にもかかわらず一体感が半端ない。次々にダイバーがフロアから飛び立ち、セキュリティに回収されてはステージ後方の導線からフロアへとリサイクルされていく。
"思いが募りすぎてしゃべることができん!"と博多弁混じりでKaitoが叫びMCへ。息を切らしながら、ストレートで実直な表現で"夢は叶う"と語り掛ける姿に力を貰ったオーディエンスも多いだろう。そのあとスタートした「RUMBLE」では後半にサプライズでcoldrainのMasato(Vo)が参加しフロアは最高潮に。世代的にも憧れの存在であったであろうMasatoと共に、BRING ME THE HORIZONが、Oli Sykesが作ったステージに立っていることの意味を噛みしめながらパフォーマンスを続けているようにも見える。向かい合って歌ったあとは熱い抱擁を交わし、見ているだけで胸が熱くなるような気持ちが沸き上がる。"NEX_FEST"(BRING ME THE HORIZON)側からの指名を受け、アメリカ・ツアーの途中で帰国してこのステージに臨んだことをKaitoが明かしつつ、そのアメリカでもめっちゃやってきた曲だと告げて「Q2」でステージを締めくくった。
BRING ME THE HORIZON
長い1日も、いよいよトリのBRING ME THE HORIZONを残すのみとなった。開演前からステージ横のモニターには某ホラー・ゲームのタイトル画面風に"POST_HUMAN"の文字が浮かび、コンセプチュアルな世界観を提示している。開始時刻になり場内が暗転するとカーソルが動き出し、難易度"EXTREME"でショーがスタート。EVE(EVE-L)と名乗る、90年代ゲームを思わせるグラフィックの女性型AIが登場し、"人生最高の夜の準備はできているかい?"と問い掛けたところで、教会の祭壇のようなイメージが巨大スクリーンに投影された神秘的なステージが姿を現していく。ド派手な演出にボルテージが高まるなか、「Can You Feel My Heart」で壮大な儀式がスタートし、ド頭から特大シンガロングの盛り上がりだ。ハイパーポップからハードコアまで咀嚼した「AmEN!」で巨大な火柱が立ち上がり、「Teardrops」ではOliがフロアまで駆け寄るサプライズも。「Happy Song」では冒頭のチャントから大合唱が起こり、「The House Of Wolves」に移るとOliの音頭でサークル・ピットが出現。約4年ぶりのライヴを堪能するような熱狂を見せていた。会場が暗転しEVEが再び登場すると、"一緒にマントラを唱えましょう"のひと言で大歓声が。
しかし、その裏で"ケルベロスが脱走した"という通信が入り(効果音が完全に某ステルス・ゲームのオマージュだ)、何やら不穏な雰囲気も醸し出している。"人類を革新に導く"とか、怪しいことも言ってたっけな......。そんな空気を吹き飛ばすように「Mantra」では多幸感溢れる空間が作られたが、直後にけたたましいサイレンが鳴り響き、サーチライトが点滅しだす。どうやら脱走したケルベロスが教会に向かっているようで、"教会ってここのことだよな......"と思った瞬間、背景のステンドグラスを突き破り黒い影が姿を見せ、暴力的な「Dear Diary,」のイントロが鳴り響く! ストーリー性の高い演出に否応なくテンションがブチ上がる。
続いては黄色い毒ガスのようなヴィジュアルが用いられた「Parasite Eve」が披露され、コロナ禍で生まれた楽曲を大観衆の中で聴く感慨に思わず浸ってしまった。背景が今度は雪景色に変わり、アルバム『Sempiternal』のアートワークが浮かび上がると「Shadow Moses」でフロアが沸騰。YUNGBLUDを迎え披露された「Obey」では巨大な人造人間が登場し、シンガーふたりの熱演にさらなる相乗作用を与えていた。"愛してるよ、日本"との言葉から放たれた「DiE4u」や「DArkSide」で熱気を高めたところで、アコースティック・バージョンで演奏された「Follow You」では優しく心地よい雰囲気に包まれた。"今年は『Sempiternal』の10周年なんだ"という紹介から「Sleepwalking」が披露されたあと、"実は、今年は『Suicide Season』の15周年でもあるんだ......疲れたから正直この曲はやりたくないけど(笑)"というジョークも交えて、まさかの「Chelsea Smile」がドロップされ、古くからのファンには激アツのサプライズとなった。本編ラストには「LosT」が演奏され、紙吹雪の舞う極彩色の空間の中でエモーショナルな幕引きを迎えた。
アンコールでは、EVE-Lの通信の様子が再度映し出される。どうやら反乱軍のサイバー攻撃によってAIたちの野望は打ち砕かれたようだ。そのサイバー攻撃の名は"PROJECT KINGSLAYER"と呼ばれている――ここで大歓声が上がる。高揚感を煽りに煽るビートに続いてBABYMETALの3人、最後にOliが登場すると、「Kingslayer」のパフォーマンスが実現! "NEX_FEST"のラインナップを見た瞬間から多くの人々が期待したであろう、今回ならではのスペシャルな共演となった。Oliは"本当に信じられないよ! これは僕たちの夢だったんだ。みんなの国が本当に大好きだよ"と感謝の思いを伝え、「Drown」と共に観客へ歩み寄っていく。そしてフロア中央にある照明用のやぐらをよじ登ると、ファンひとりひとりと一体となって合唱する、感動的な光景が広がった。ラストは「Throne」で観客のエネルギーをすべて爆発させたようなシンガロングを巻き起こし、圧巻のステージを締めくくった。
ボーダレスなアーティストが自らのパフォーマンスを遺憾なく発揮し、ヘッドライナーのBRING ME THE HORIZONも多彩な音楽性を革新的な演出と共に披露した"NEX_FEST"は、ヘヴィ・ミュージックを新たなフェーズへと進化させるような、まさに伝説のイベントだった。今度はこのイベントに触発された新たなスターの登場や、それを迎え撃つためにさらなる進化を遂げたカリスマの姿を見てみたい。