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INTERVIEW

BRING ME THE HORIZON

2019.02.02UPDATE

2019年02月号掲載

BRING ME THE HORIZON

Member:Oliver Sykes(Vo)

Interviewer:菅谷 透

今やイギリスを代表するバンドの一角へと登りつめたBRING ME THE HORIZONが3年ぶりにリリースしたニュー・アルバム『Amo』は、劇的なスタイルの変化が話題を呼んだ前作『That's The Spirit』の遥か先を行く、新次元の進化を遂げた1枚となった。リリース直後から賛否両論を巻き起こしている今作だが、少なくとも2019年必聴のアルバムのひとつであることは間違いないだろう。激ロックでは、アルバムを引っ提げた北米ツアーを敢行中のバンドから、フロントマンのOliver Sykesにインタビューを実施。今作に込めた想いを語ってもらった。

-海外では1月25日にニュー・アルバム『Amo』がリリースされましたね。今の心境を教えていただけますか?

ありがとう。すごくいいよ。今のところ反応も素晴らしい。アルバムを作っているときに様々な反応があることはわかっていたし、このアルバムを聴いてムカついている人や、がっかりしている人がいることもわかっている。でも全体的に喜んでくれているファンが多くて、徐々に受け入れてくれている感じがするんだ。個人的には完成したことでほっとしているし、またアルバムを出せたことに感謝と喜びを感じているよ。

-本作はロサンゼルスでレコーディングされたそうですね。(2015年リリースの)前作『That's The Spirit』はギリシャのサントリーニで制作されていましたが、今回なぜロサンゼルスを選んだのでしょうか?

特に意味はないんだよね。曲作りはすべて地元のシェフィールドで行っていて、1年ぐらい作業に取り掛かっていたんだけど、ずっとどこにも行かずに制作をしていたから、どうしてもシェフィールドから離れたくなったんだ。ロサンゼルスにスタジオを持っているバンド仲間がいて、泊まらせてあげるって言ってくれたから、そこでレコーディングをすることに決めたんだよ。ロサンゼルスに行くことで環境の変化もあったし、新鮮な気持ちでレコーディングに取り組めたから、結果的にいい選択をしたと思う。

-タイトルの"Amo"は、ラテン語やポルトガル語などでは"愛"を意味しています。このタイトルとなった由来はなんでしょうか? また、今作のテーマについてもうかがえますか?

そのとおり、"Amo"は"愛"という意味だね。いつも今の妻が愛していると言ってくれるときにこの言葉を使うんだ。すごく深い意味がある言葉で、いろんな愛情や愛し方を意味するんだよ。このアルバムの基本は"愛"だから、一番適しているタイトルだと思ってこれにしたんだ。

-前作『That's The Spirit』と同様に、今回もあなたとJordan Fish(Key/Vo)がアルバムの共同プロデュースを担当しています。これは前作の制作プロセスに手応えを感じてのことでしょうか?

何かをちゃんとやりたいときは、自分でやるしかないと思っているんだ。もちろん、いろんな意見やアドバイス、コメント、サポート、そういったものはいつでも歓迎しているけれど、自分たちの音楽に関しては自分たちが一番よくわかっているから、プロデュースは自分たちでやりたいんだ。朝起きたときから夜寝るときまで、もしかしたら寝ている間も、常に自分の音楽に浸っているから、これを言葉だけで他人に任せることはできないと思ってる。Jordanも同じ気持ちだから、ふたりでプロデュースをしているとスムーズだし、仕事が早いんだ。僕たちが作り出したものだし、それを形にするのは自分たちしかいないからね。自分が求めているサウンドになるまで時間と労力を惜しまず、いくらでも注ぎ込む。それが僕たちの仕事のやり方で、そこは変わらないと思う。

-前作『That's The Spirit』は音楽シーンに変革をもたらし多くのフォロワーを生んだ、まさにゲーム・チェンジャーと呼ぶべき作品でしたが、今作ではさらに様々なジャンルの要素を取り込み、別の次元へとバンドを引き上げたような印象を受けました。今作ではどのような音楽性を目指したのでしょうか?

正直に言うと、方向とか音楽性とかはまったく意識しないで作り始めた。ただ"違う"ものを目指したかっただけだよ。最初はどんなサウンドになるかもわかってなくて、何をどうしようかとも考えてなかった。期待もなかったし、予想もできなかったよ。ただ単に音楽を作りたかったし、もう人の反応とか、意見とかを気にしないでアルバムを作ってもいいんじゃないかと思うようになったんだ。本当にやりたいことを、楽しみながらやりたかった。自分たちが納得できるようなサウンドにしたかったんだよ。もちろん僕たちのバンドの原点も、ファンのこともすべて理解している。オーディエンスのことはしっかりわかっていないといけないって常に頭にあったけど、別にファンを喜ばせるために音楽を作ったつもりはなかったんだ。今までは、彼らが離れていくようなことはやらないようにしてきたつもりだった。だけど、今回はそういう考えをすべて捨てて、やりたいようにやって、もしファンの中で誰かが気に入ってくれるなら、それで十分だと思うようにした。自由に音楽を作ることで生まれたサウンドなんだ。

-今作であなたはよりクリーンなトーンの歌唱や、Track.9「Why You Gotta Kick Me When I'm Down?」などではラップのフロウのような歌いまわしを披露しています。ヴォーカリストとして意識したことはありますか?

常に意識しているよ。歌っている内容にマッチしたヴォーカル・スタイルを身につけることは、大事なことだと思っている。どんなジャンルでも、感情の表現はヴォーカルがするからね。そのためにも今回は異なったスタイルを取り入れたんだ。もう、いつも怒っているような歌い方は避けたかった。ヴォーカリストには自信がないといけないから、そのあたりも意識して、うまく自分の気持ちを伝えるようにした。リスナーも声のトーンや言葉で曲の意味を理解するから、嬉しい曲なら嬉しく、悲しい曲なら悲しく、感情的でいいと思うんだよ。エモーショナルな経験を素晴らしく表現できるからこそヴォーカリストになるんだ。

-ここからは楽曲についてうかがいます。まず、先行シングルのTrack.2「Mantra」を初めて聴いたときは驚かされました。あなたがカルト宗教の指導者になるというミュージック・ビデオも印象的でしたが、この曲のテーマについて教えていただけますか?

このアルバムが今までとまったく違うサウンドになるから、アルバムから最初に世の中に聴かせる曲を何にするかすごく悩んだ。いや、悩んだというか、かなり焦っていたって言った方が正しいかもしれないね。「Mantra」は、ある"危機"のあとにできた楽曲だった。実を言うと、それまで作詞でスランプに陥っていたんだ。愛について書くのに抵抗があったし、別れた妻についても書きたくなかったし、恋愛関係のことも触れたくなかった。まだ深い悲しみを感じていたころだったけど、それを受け止め、乗り越えないといけない時期だということもわかっていたんだ。「Mantra」は、愛について自由に書くことを初めて許した楽曲だった。最初は愛について書いていることすら気づいてなかったんだ。"カルトを始める"って歌っているのに、知らないうちに恋愛関係のことを歌っていた。そのあとは、何もかもわりとすぐにできてきたように思えるんだ。いろんなことがうまくいくようになっていたから、この曲を最初に世の中に聴かせる曲にしたかった。

-また「Mantra」は第61回グラミー賞の"Best Rock Song"にノミネートされていますが、発表されたときはどんな気分でしたか?

信じられないけど、ものすごく光栄だよ。嬉しいね。

-続くTrack.3「Nihilist Blues Feat. GRIMES」は、トランスなどのエレクトロを大胆に使った、これまでの楽曲とは最も異なるサウンドのひとつになっています。GRIMESをフィーチャーしていますが、彼女を起用したきっかけはなんでしょうか?

GRIMESの大ファンなんだ。僕が一番好きな音楽も彼女の楽曲なんだよね。このアルバムに女性のエネルギーを注入したくて、女性と仕事をしようと考えたんだけど、彼女しか思いつかなかったよ。彼女を誘ってみたら、快く引き受けてくれたね。