FEATURE
BRING ME THE HORIZON
2021.01.27UPDATE
2021年01月号掲載
Writer 山口 智男
彼らに対する筆者の認識不足もあったかもしれないものの、Xperia 5のテレビCMに出演しているバンドがイギリスの5人組、BRING ME THE HORIZON(以下:BMTH)だと知ったときの驚きはそれなりに、いや、かなり大きかった。結成からすでに15年。その間進化も含め、劇的に音楽性を変化させてきたとはいえ、そもそもはデスコアと謳われていたバンドである。その彼らが日本の地上波で流れるテレビCMに起用される日が来るなんて、誰が想像しただろうか。
そんなテレビCMをはじめ、BMTHにとって2019年は、ある意味問題作だった6thアルバム『amo』をリリースしたことに加え、ここ日本においてファン層をぐっと拡大した年として記憶されることになるに違いない。
2019年1月にリリースした『amo』が日本でもヒットしたのは、2009年5月の初来日以来たびたび日本に足を運んでファン・ベースを築いてきた、精力的な活動の延長上で、音楽性の幅を広げた『amo』のインパクトが今一度、バンドの人気を跳ね上げた結果と考えられるが、そこからさらにあのHYDEやBABYMETALとの共演、そして前述したCM出演を通して、BMTHはこれまで出会うきっかけがなかった日本のリスナーに、自分たちの存在をアピールすることに成功したのだった。
中でも2019年11月、BABYMETALによる"METAL GALAXY WORLD TOUR IN JAPAN"のさいたまスーパーアリーナ公演、および大阪城ホール公演にスペシャル・ゲストとして出演したインパクトが、その後の彼らのキャリアに及ぼした影響を考えるとわくわくせずにいられない。そこでBMTHのパフォーマンスを観て、新たにファンになった、あるいはファンにはならないまでも興味を持ったという人は少なくなかったはず。また、共演をきっかけにBABYMETALとBMTHのコラボレーションが実現した、「Kingslayer Ft. BABYMETAL」という曲にも同様のことが期待できそうだ。
その「Kingslayer Ft. BABYMETAL」を含むBMTHの最新EPが本日1月27日、ついにCDとしてリリースされた『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』だ。
バンドはこれから"Post Human"と題した連作EPをリリースする予定だという。人類の進化や食物連鎖のルートから、完全に踏み外してしまった人間の現在という共通のテーマはあるものの、それぞれの作品はトーンやムードが異なるものになるようだ。
時間をかけてアルバムを完成させるより、そのときの世の中の空気や、世界が必要としている新曲を、もっとタイムリーに出していきたいので、EP複数リリースという形を取りたい、とOliver Sykes(Vo)は連作EPをリリースする理由を語っているが、『amo』がBMTH史上初の全英No.1ヒットになったことに加え、世界で最も権威があると謳われるグラミー賞(の最優秀ロック・アルバム賞)に初めてノミネートされるなど、バンドのキャリアを見事更新したことを考えると、ここでいったん気持ちも新たに、その時々の興味や気分の赴くまま、自由に曲を作りながら、今後の方向性および可能性を探ってみたいという思いもあるんじゃないか。
どれくらいのペースでどんな作品を届けてくれるのか、早くも興味は尽きないが、それはさておき、その第1弾となる『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』は、連作シリーズのスタートということもあるのか、ファンの間で賛否が分かれた『amo』の延長上で、バンドのポテンシャルを限定せず、あらゆる可能性を追求しているように感じられる。
収録曲は先述した6曲目の「Kingslayer Ft. BABYMETAL」と、そのイントロとも言える、1分30秒弱のショート・チューン「Itch For The Cure (When Will We Be Free?)」を含む全9曲(+ボーナス・トラック)。EPとはいえ、全然物足りないという印象はない。
ロック・シーンの頂点を究めた5人組があらゆる可能性を探る全9曲を収録
トップを飾る「Dear Diary,」は原点回帰なんて言葉が頭を過ぎるハードコア・ナンバー。ファン歴が長いリスナーは快哉を叫ぶに違いない。しかし、それが可能性のひとつであることは、すでに書いたとおり。2曲目の「Parasite Eve」はエキゾチックな女性コーラスやシンセの音色も使いながら、歌をじっくりと聴かせるミッド・テンポのメタル・ナンバー。日本のサブカルチャーから影響を受けているBMTHらしいタイトルに思わずニヤリだが、Oli(Oliver)によると、コロナ禍と向き合うなかで生まれた悲しみと怒りに包まれた、希望のメッセージなのだそうだ。
続く3曲目の「Teardrops」も歌モノのメタル。Oliのシャウトもふんだんにフィーチャーしながら、メランコリックなメロディが耳に残る。
イギリスの新世代ポップ・スター、YUNGBLUDをゲストに迎えた4曲目の「Obey With YUNGBLUD」は、メタルはメタルでもグルーヴィな演奏が聴きどころ。OliとYUNGBLUDが操縦する巨大ロボットが戦うという日本の特撮へのオマージュが感じられるMVは、Oli自ら監督したという。
そして、BABYMETALとのコラボが話題の「Kingslayer Ft. BABYMETAL」は、もはやBMTHの持ち味と言えるメタル×EDMのミクスチャー。グロウル、スクリームもふんだんに聴かせながら、ダンサブルなサビにフロアがひとつになることは必至。イギリスの女性ロック・デュオ、NOVA TWINSの歌声をフィーチャーした7曲目の「1x1 Ft. NOVA TWINS」、そして9曲目の「Ludens」共に、メタリックなバンド・サウンドにヒップホップのトラックメイキングの手法を取り入れ、BMTH流にコンテンポラリーなポップ・ソングにアプローチしている。
そして、Oliがウィスパー・ヴォイスで歌い上げるバラード「One Day The Only Butterflies Left Will Be In Your Chest As You March Towards Your Death Ft. Amy Lee」が、深遠な世界観を描きながら、EPの最後を飾る。フィーチャーリングされている女性ヴォーカルは、EVANESCENCEのAmy Leeによるものだ。
タイムリーにということを考え、2020年10月30日に配信リリースした『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』は、今回のCDリリースをきっかけに、さらなる注目を集めることだろう。ゲストの顔ぶれからもジャンルやシーンを限定せずに、様々な可能性を探ろうとしていることは明らかだが、その豪華さからはトップ・クラスのバンドとしてのBMTHの風格が窺えるようだ。ロック・シーンの異端児も今は昔。新たな王者がここから始めるさらなる挑戦に大いに期待している。
RELEASE INFORMATION
BRING ME THE HORIZON
NEW EP『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』
NOW ON SALE!!
SICP-6467/¥2,200(税別)
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TOWER RECORDS
HMV
[Sony Music Japan International]
・初回仕様ステッカー・シート封入
1. Dear Diary,
2. Parasite Eve
3. Teardrops
4. Obey With YUNGBLUD
5. Itch For The Cure (When Will We Be Free?)
6. Kingslayer Ft. BABYMETAL
7. 1x1 Ft. Nova Twins
8. Ludens
9. One Day The Only Butterflies Left Will Be In Your Chest As You March Towards Your Death Ft. Amy Lee
10. Mantra (Live In Tokyo) ※国内盤CD限定ボーナス・トラック
11. Medicine (Live In Tokyo) ※国内盤CD限定ボーナス・トラック
12. Ludens (Live In Tokyo) ※国内盤CD限定ボーナス・トラック
■国内盤CD購入者特典
・TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く)
メンバー別キャラクター絵柄ステッカー全6種(ランダム配布)
※Oliver Sykes(Vo)のみノーマル絵柄とキラキラ絵柄の2種ございます。
※絵柄はお選びいただけませんのでご了承ください。
・Amazon.co.jp
『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』メガジャケ
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