INTERVIEW
BRING ME THE HORIZON
2020.10.30UPDATE
Member:Oliver Sykes(Vo)
Interviewer:大野俊也(FLJ)
昨年リリースされたアルバム『amo』がキャリア初の全英1位、グラミー賞ノミネートを獲得するなど、大きな注目を集めるUK発モンスター・バンド、BRING ME THE HORIZON。彼らのニューEP『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』が10月30日に配信リリースされた。本作には、先行配信された「Parasite Eve」、小島秀夫監督のPlayStation®4ゲーム"DEATH STRANDING"に書き下ろした「Ludens」などが収録されているほか、BABYMETALやAmy Lee(EVANESCENCE)など多岐にわたるアーティストとのコラボも見逃せない。パンデミックの渦中、"今"という時代を映し出した本作に迫る。
-『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』は、タイトルからして未来の人間のあり方を意味しているわけですが、これまでのOliの問題意識とコロナ時代の到来と今回のEPは奇しくも繋がってしまいましたね。コロナ時代にOliは何を考え、どのように音楽として形にしていったのでしょうか?
「Ludens」をリリースしたときから始まったんだと思うよ。この曲は小島秀夫監督の"DEATH STRANDING"(※PlayStation®4用ゲームソフト)のために作った曲で、ゲームに関連した曲ではあるんだけど、自分の頭の中で描いていたことを形にしてるんだ。僕たちの音楽は常に人間の感情、人間のあり方について歌ってる。去年作った曲ではあるんだけど、「Ludens」は今後起こりうる未来の世界について歌ってるんだ。そこで必要とされるのは、新しいものの見方なんだよ。「Parasite Eve」という曲も、作ったのは去年のパンデミック前で、当初はサバイバル・ホラー的な曲を作りたいと思ってたんだ。今の世界を見ると、地球温暖化の副産物として様々な弊害が起こってるよね。例えば、気温の上昇によって新たなバクテリアが出てきたりする。こういうことは今後人類が直面しなくてはいけない問題のひとつになるんだ。そういう問題意識があったうえで書いた曲なんだけど、まさかこれほどまでに早くそういうことに直面するとは思ってなかったよ。今年パンデミックになって、クレイジーな状況になってしまったから、この曲が今の時代にハマってしまったんだ。未来を歌った曲のはずだったのに、今起こってることを歌った曲になってしまったんだ。
-「Parasite Eve」を作ったとき、当初はその内容のきわどさのために、一度制作を止めたらしいですね。
もともとは未来についてのことを曲にしたわけだけど、パンデミックが拡大してしまったんだ。しかもイギリスではひどい状況になってしまった。曲を作っていくうちに、コロナウイルスの死亡者数の数が500人、600人、1,000人とどんどん増えていった。最初はそれで僕も食らってしまってね。今こんな曲を出すのは無神経なことじゃないかと思ってしまったんだ。歌詞のラインに"When we forget the infection/Will we remember the lesson?(僕たちがこの感染を忘れたときに/そのときの教訓を思い出せるのか?)"っていうのがあるんだけど、もともとは"When we survive the infection/Will we remember the lesson?(僕たちはこの感染を生き延びたときに/そのときの教訓を思い出せるのか?)"という歌詞だったから、あまりいい気持ちにはならないよね。それで僕は"この曲は発表したくない。あまりにも生々しすぎるよ"ってなったんだ。でも、しばらくしてみると、現実から目を背けてばかりではいけないなと思った。今のこのハードでクレイジーな現実は現実として存在するわけだから、この曲はリリースすべきじゃないかと思うようになったんだ。というのも、音楽は聴き手にモチベーションを与えるような、スゴくパワフルなツールになり得るわけだから。僕の書いた歌詞が聴き手を冷酷な気持ちにさせるのではなく、何か新しい考えを持つような機会になればいいと思ってね。それで、「Parasite Eve」をリリースすることに決めたんだ。そこには今世界で起こってることが描かれてるわけだから、たとえどれだけそれがダークなものであったとしても、出すことに意義があると思ったんだよ。
-結果として、「Parasite Eve」を出したあとのリアクションはものスゴく大きなものになりましたね(2014年にリリースしたシングル「Drown」以来、バンドにとってストリーミング最高初動、Spotifyグローバル・トップ50最高チャート位、ミュージック・ビデオ再生回数最高初動、全英シングル・チャート最高位を記録)。
結果を見て思ったのは、僕たちの決断は間違っていなかったということだね。それで新しいレコードに対する制作意欲も増したよ。そこで今という時代を映し出した音楽を作ろうと思ってね。「Ludens」はすでにリリースされてたんだけど、曲の持つ意味がますます時代に合うものになったわけだし、「Parasite Eve」はまさにタイムリーな曲になった。僕たちが乗り越えようとしている時代を描くこと。"Post Human"の本質はそこにあるんだ。人々は立ち上がってるし、情熱を持ってるし、変革を求めてるし、何かを要求したいと思ってる。そういうところからインスピレーションを受けてこのレコードを作ることにしたんだ。
-"Parasite Eve"は瀬名秀明の小説"パラサイト・イヴ"のタイトルであり、ゲームでもありますよね。
"パラサイト・イヴ"はゲームが大好きなんだ。でも小説が先にあったんだよね。ぜひ読んでみたいな。
-"Post Human"は4枚のEPをリリースしていくプロジェクトとのことですが、アルバムではなく、EPというフォーマットでのリリースを選んだ理由はなんでしょうか?
今まで何枚もアルバムを出してきたわけだけど、今回は違うことをやりたくなったんだよね。アルバムは制作するのにスゴくたくさんの時間を要するんだ。2年間も曲を作り続けるなんてことはもうやりたくないんだよ。ハード・ワークすぎるよ。太陽の光も見ないでうちにこもって毎日制作するなんて嫌だよ。インスピレーションというものは、浮かんではすぐに消えていくものなんだ。だからアルバムとは違う音楽の作り方をやってみたかった。インスピレーションが湧いたときに、いつでも自由に音楽を作りたいからね。僕たちには常にレコードを作り続けなければいけない義務がある。それに僕たちには歌いたいことがたくさんある。それで今回はアルバムの代わりに、9曲をまとめてEPとして出すことにしたんだ。そのほうがよりフォーカスできるしね。4枚のEPを異なるテーマ、異なるサウンドでリリースしていくというアイディアはそんな感じで生まれたんだ。それに、今の時代をテーマにした曲をすぐに出すわけだから、反応も早いほうがいいんだ。現在の状況に対する反応が早ければ、それは次のレコードにも反映できる。例えば、次の大統領は誰になるのか。そういうトピックだってすぐに反映できるわけだ。それに、4枚のEPはそれぞれが独立したものになるから、EPごとにテーマもサウンドも変わってくる。次のEPがどういうテーマでどういうサウンドになるのか、前もってわからないというのも面白いからね。
-できるだけ音楽を新鮮なうちに届けたいわけですね。しかも、インタラクティヴなものにしたいわけですね。
そのとおりなんだ。
-次のEPがどのようになるのかをあらかじめ決めないものの、4枚のEP全体のアイディアは考えているんですか?
抗議デモみたいな感じだね。何千人もの人たちが抗議してるようなもの。それがEPのアイディアだよ。感情が高まった人たちが、精神的なレベルでも繋がって、今世界で起こってることを理解してる。僕としてはなるべく多くの人たちに何かしらを感じてほしいと思ってる。そうすれば僕たちは前に進むことができるし、人類が種として進化できると思うんだ。人間がお互いを愛し、お互いをケアできるようになれたらいいと思ってるからね。このEPでは、他のみんなと同様、僕たちが頭にきてるし、恐れてるし、怒ってるという事実を認めてほしいというのが大きいね。それでスゴく攻撃的な内容になってるんだ。僕たちが内面で何を感じてるのかを表現してるから。サウンド的には、今まで以上にヘヴィで怒りに満ちたものになったね。それは歌詞やテーマと自然と繋がってるからなんだ。とにかく、今回は今までとは違うものを作りたかった。僕たちは過去に生きてるバンドじゃないし、新しいものを作るのであれば、今までとは違うものを作らなくてはいけないんだ。それで、今回はサイバー・フラッシュ・パンクで、ディストピアで、フューチャリスティックで、ビデオ・ゲーム的で、SF映画のサウンドトラックのようなものを作りたかった。だから制作においても新しいサウンドを導入したかったんだ。フューチャリスティックで、スゴくダークで、今までとは違うエッジを持ったものにしたかったんだよ。
-音楽プロデューサーのMick Gordonを起用したのも、そういうサウンド作りを目指したからですか?
そうなんだ。僕はゲームの"DOOM Eternal"が大好きなんだけど、Mick Gordonは"DOOM Eternal"のサウンドトラックを手掛けてる。スゴくヘヴィで、インダストリアルで、フューチャリスティックで、超クールなヘヴィ・サウンドなんだ。メタルにはないサウンドだし、エレクトロニック・ミュージック、ダブベースに近いんだけど、さらにヘヴィでパワフルで、しかもノイズなんかじゃなく、低音とリズムが強力なものなんだ。今までは僕とJordan(Fish/Key)がサウンド作りをやってきたんだけど、今回はサウンド・プロダクションに長けた第三者を入れることによって、僕たちはよりソングライティングに集中したいっていうのもあった。だから、Mick Gordonと仕事ができて最高なんだよ。僕たちの作った楽曲に対して、僕たちの想像をはるかに上回る、最高にクールな音を作ってくれたからね。おかげでこのEPにはスゴく強力なヴァイブスが宿ることになったよ。
-Mick Gordonと一緒に制作をすることによって、どのようなケミストリーが生まれましたか? 彼はまったく異なるフィールドの人間ですし、彼が加えたテクスチャーやエレメント、アプローチは今までとはかなり違うものになりましたよね。
最初に一緒にやった曲は「Parasite Eve」なんだけど、すでにできあがった曲に対して、新たな要素を加えたり、いろいろなものをミックスしたりしてくれたんだけど、とにかく彼のヴァイブスは強力だし、スゴくサウンドのエッジを立たせてくれたね。ヘヴィ・ロック・ミュージックの場合、新しいサウンドに仕上げて、しかもカッコいいものにするのはスゴく難しいことなんだ。だけど彼はサウンドを見つけ出してくれたし、フィーリングをちゃんと組み込んでくれたよ。