DISC REVIEW
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激烈なデスコア・スタイルを武器に、10代という若さで颯爽とデビューしたBRING ME THE HORIZONが、10数年の時を経てここまでの進化を遂げることをいったい誰が予想できたであろう。もちろん、前作『That's The Spirit』の時点で荒々しいヘヴィネスは後退し、英国らしい憂いを帯びた哀愁のエモーショナル・サウンドへと生まれ変わっていた。だが、約3年ぶりのニュー・アルバムとなる本作における、格段に歌唱力を増したOliver Sykes(Vo)が歌い上げる美麗なメロディと、多彩なギター・リフの面白味、緩急自在のリズム隊が繰り出すグルーヴ、生音も打ち込みも自在に操り、細部にまでこだわりを見せる緻密なバンド・アンサンブルを肝としたドラマチックな音世界は、やはり衝撃的である。当然ながら、安易にエレクトロ・サウンドを取り入れれば誰でも成功するというわけではない。現代的なヒップ・ホップも、ニューメタル風のヘヴィ・ギターも、ブラス・サウンド(!)であろうとも、すべてがBMTHの名のもとに集結し、クロスオーバーし、付け焼刃ではない自らの音楽として昇華し、素晴らしい楽曲群を生み出した事実にこそ意味があるのだ。表面的な変化に戸惑う前に、可能な限り先入観なしで本作と向き合ってほしい。 井上 光一