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INTERVIEW

YUNGBLUD

2022.09.01UPDATE

2022年09月号掲載

YUNGBLUD

Interviewer:菅谷 透

今夏開催された"SUMMER SONIC 2022"にて、破天荒なパフォーマンスで強烈なインパクトを残したYUNGBLUD。パンク・スピリットを体現したような反骨精神と、高度なファッション・センスで多くの若者から支持を受けている彼が、3作目のスタジオ・アルバム『Yungblud』を完成させた。セルフ・タイトルを掲げた本作は、"今までで一番パーソナルな作品"だと語る通り、内面を吐露した赤裸々な歌詞と、リスナーひとりひとりに目を向け、肯定するようなエネルギーが込められたエモーショナルなアルバムだ。激ロックは今回、"SUMMER SONIC"出演を終えた彼にインタビューを実施。ステージそのままのエキセントリックな人柄ながら、真摯に言葉を紡ぐ姿が印象的だった。


僕たちひとりひとりが美しくて、今までもこの先もいない存在で、アートなんだ


-今回の"SUMMER SONIC 2022"が初めての来日になりましたが、ライヴの感想をうかがえますか?

本当にクレイジーで、素晴らしいショーになったよ! ちょっとトラブルもあったけど......"(※日本語風の発音で)モッシュ・ピットー!"とかね(苦笑)。日本はずっと行きたいと夢見ていた国だったし、イギリスのミュージシャンにとっても日本に行くというのは大きなことで、"もう(日本に)行った?"って聞き合うくらいなんだ。だから、すごくクレイジーなショーになったことが嬉しいし、"SUMMER SONIC"はこれまでの人生で最高のライヴのひとつになったよ。

-オーディエンスの反応はいかがでしたか?

日本のオーディエンスは、ラウドになる瞬間と静かになる瞬間の波が素晴らしかった。新しい発見もあったね。冗談でバスケットボールをする真似をしてみたんだけど、日本の観客は"(※ドリブルをして)オーッ......"、"(※シュートを打って)オイッ!"って盛り上がってくれたんだ。これはこの先のライヴにも取り入れたいね(笑)。場所によって観客のマインドセットが違うから、それによって僕も"こういうパフォーマンスができるんだ"、"こういうパフォーマンスも面白いんだ"と、意図していないところから学ぶことができる。この体験は一生忘れないよ。すごくカッコ良かったね!

-今回が激ロックとしては初めての取材ということで、バイオグラフィについても簡潔にうかがえればと思います。"サマソニ(SUMMER SONIC)"で見せたような、自由奔放で反骨精神のあるパフォーマンスが魅力のひとつですが、インスピレーションを受けたアーティストについて教えていただけますか?

SEX PISTOLS、JOY DIVISION、David Bowie、LADY GAGA、OASIS、MADONNA、THE CLASH、THE SMITHS......自分の声を持っていて、それを世界に広めている人たちには、みんなインスピレーションを受けているね。僕はいわゆる"ヒット・ソング"みたいなものにはまったく興味がなくて、アートにしてもファン・ベースにしても音楽にしても、文化に影響するものがクールだし面白いと思うんだ。そういう作品やアーティストこそが、永遠に残るものだと考えているよ。

-メイクやスカートなどジェンダーレスなファッションもYUNGBLUDのキャラクターを特徴づけていますが、こうしたファッションを取り入れていくようになったきっかけはありますか?

13歳くらいのころからこういう格好をし始めたんだ。ファッションとは、言葉を発することなく自分を表現することができるものだと思う。いろんな人とコミュニケーションを取る手段でもあるし、自分が着ている服で表現することで、痛みや喜びなど、そのフィーリングをたくさんの人に伝えてコミュニケーションを取れるのは最高だよ。それによって自分が属する場所を見つけることができるだろうし、僕がこういう格好をすることで、みんなも自由に振る舞っていいんだと感じてくれたらいいなと思ってるよ。

-そういえば、今日もSEX PISTOLSのピン・バッジをつけていらっしゃいますね。

ああ。(同じくバッジをつけていた)SIOUXSIE SIOUXとかもそうだし、70年代のパンク――Vivienne Westwood、Malcolm McLarenとか――が進化してニュー・ウェーヴになったムーヴメントもお気に入りなんだ。パンクのころはアーティストが世界に何かを発信して、彼らが世界と繋がろうとしていたけど、ニュー・ウェーヴになったことでパンクが人々の一部になり、自分の中に見いだすようになったんだと思う。僕の3rdアルバム(『Yungblud』)も同じで、1stアルバム(2018年リリースの『21st Century Liability』)と2ndアルバム(2020年リリースの『Weird!』)は自分が世界に訴えて、何かをそこから探し出しているような状態だったけど、アーティストとして進化したことで、自分というものが見えてきて、それを表現できるようになってきた。だから今回は、鏡を見ているように自分自身の内面を反映した作品になっているんだ。

-それが今作でセルフ・タイトルを掲げた理由でもあるのでしょうか?

そうだね。3rdアルバムをセルフ・タイトルにするっていうのはちょっと変な感じかもしれないけど、キャリアを重ねるなかでYUNGBLUDの意味が見えてきたからこのタイトルにしたんだ。――YUNGBLUDの定義自体はずっとわからないままでもいいと思う。それを定めてしまったら、そこで終わりになってしまうからね――YUNGBLUDという言葉の持つフィーリングの意味がだんだんわかってきた。リスナーにも、ショーにおいても、人々にこういうフィーリングを受け取ってほしいというのが明確になってきたから、セルフ・タイトルを付けたんだ。フィーリングやエネルギーは嘘がつけないし、そこから出てくるのは偽らざるものだ。今自分がYUNGBLUDからどんなフィーリングを得たいかがはっきりしていて、それを作品に反映できたから、今作はこれまでで最高のアルバムで、最もピュアなアルバムになったと思う。それに今僕は、自分がどういう人間かを表現する勇気を得ることができている。YUNGBLUDという文化、ムーヴメント、コミュニティを堂々と伝える勇気をみんなのおかげで貰っているんだ。ようやく日本でこうやって紹介することができて嬉しいし、この3rdアルバムこそが、"これが僕だ"というのを説明する作品になっているよ。

-資料によると、アルバムのコンセプトには"Never Compromise / Imperfection is Perfection / Embrace the Strange / Never Judge / Tell the Truth / Pink Socks / Beer / Move(妥協しない / 不完全なままで完璧 / 異質なものを受け入れる / 決めつけない / 真実を伝える / ピンクの靴下 / ビール / 行動する)"という単語が掲げられています。こうした言葉はどこから浮かんだのでしょうか?

セルフ・タイトルを付けるにあたって、"YUNGBLUDとはなんだろう?"と考えてバーっと書き出した言葉がこれなんだ。もちろん、他にももっとたくさん出てきたけどね。この言葉は、僕のあばらにタトゥーとして刻んである。あばらと手のひら、それと足がタトゥーを入れると一番痛い場所だと聞いたから、"これがYUNGBLUDだ"ということを一生忘れたくないと考えて、あばらに入れたんだ。あと、QUEENS OF THE STONE AGEって知ってるかな? 彼らがどこかで公演をやったんだけど、それがあまりにも最悪なライヴで、その日を忘れないようあばらにタトゥーを彫ったって話を聞いたことがあったから、クールだと思って僕もそうしたんだ。自分がYUNGBLUDファミリーの一部であるってことを忘れたくないからね。世界が何を言おうと、人々が何を言おうと、インターネットが何を言おうと、自分の信念を忘れないためにタトゥーを彫った。今僕は、どこに属していて、何をしていて、何が使命なのかということに確信が持てているんだ。僕はいわゆる"ロック・スター"になりたいわけじゃない。YUNGBLUDの活動を通して、自分は力不足で不十分だと考えているたくさんの人たちが、自信を持っていいんだと感じられるようなコミュニティを作りたいと思っている。僕たちひとりひとりが美しくて、今までもこの先もいない存在で、アートなんだ。それを伝え続けていきたいから、覚悟を持ってタトゥーを入れたよ。