LIVE REPORT
神使轟く、激情の如く。
2022.09.11 @豊洲PIT
Writer 宮﨑 大樹 Photo by 新倉映見
日本武道館単独公演の開催に"SUMMER SONIC"への出演。飛躍の日々を送っている神激(神使轟く、激情の如く。)の5周年記念単独公演が、豊洲PITで開催された。
"今、私が持ってるこの期待、君らが持ってきたその気持ち、足跡に変えていこう"、実久里ことのが言葉を放って「神奏曲:ライトニング」で駆けだすと、公演タイトル通りの轟音が鳴り響く。メタルコアを軸に目まぐるしく展開していく曲調に合わせて、スクリーム、ラップ、クリーン・ヴォーカルが絡み合っていった。「神奏曲:ライトニング」はメンバーにとっての高い壁として制作された楽曲だが、まるで暴れ馬のようなこの曲を、ライヴを重ねるごとに巧みに乗りこなせていく姿は実に頼もしい。"俺らが5年間やってきたこと、5年間重ねてきたこと、その答え合わせの日が今日この場やと思っています。お前たちの顔が、お前たちの上げてくれたその腕が、俺らにとって答え合わせ。「おめでとう」とか言葉はいらないんで、死ぬほど踊る体力と命をください、いいですか!?"(三笠エヴァ)と煽ってパフォーマンスした「自己都合主義メタモルフォーゼ」では、お馴染みのフリースタイル・ゾーンで神激と神者(※神激ファン)が一体となり、"死ぬほど"踊りまくって5周年を祝った。
「夏声蝉時雨」を経たMCは二日よいこが担当。この日に向けて、チラシを配っていたことに触れ"この出会いは絶対に偶然じゃないし、絶対に意味があると思っています。豊洲PITにいるひとりひとりとも、いろんなきっかけがあって。こんな広い世界の、こんな大都会の中に落ちているきっかけを拾って、ここまで来てくれました。今日はこの出会いに意味をつけに来ました"と話した。そうして、生牡蠣いもこの艶やかな歌声が光る「神奏曲:アブソルートゼロ」を披露。人口1,000万人を超える東京という街で、神激に出会い、この場に足を運んだオーディエンスたち。彼らの心に刻みつけるような、魂のパフォーマンスが痛快だった。
ここまで神激らしい熱くエモーショナルなパフォーマンスとMCが続いていたが、ここからTiNAがバラエティ番組の司会のような回しでメンバーに話を振っていく。ステージ上ではロック・アーティスト然としているメンバーたちの素を引き出すTiNAのキャラクターは、神激のライヴでのブレイクタイムとして生きていた。MC中にネガティヴ・モードに入ったという体(てい)の生牡蠣いもこに対して、"ネガティヴ警察"に扮したTiNAが「さよならネガティブ」を曲振りしてライヴは再開。続けて「捨て身ヒロイン卍」を投下するというレアなセットリストには、神者も大いに沸いたことだろう。続いて生牡蠣いもこが"嫌なこととか、日常の中でいっぱいあると思うし、「ここでストレス発散していってよ」って言いたい。でも、「日常を忘れろよ」っていうのは自分の中で違うと思っていて。こうやってたくさん楽しんで、自分自身と向き合って、現実と、しんどい毎日と強く戦っていけるような歌を、今日も君らに届けに来ました"と語る。そうして「不器用HERO」で"神者のヒーローになりたい"と願いを込めて歌を届けた。
この日はどのメンバーのMCも素晴らしかったが、その中でも中盤での実久里ことのの言葉にはグッと来るものがあったので、全文を記したい。
"気づいたら、活動している年の半分がコロナというものに蝕まれていて。今日という日も、君らの声を聞けずに迎えました。最初のころは「コロナなんてなければもっともっと」って、正直何度も思った。でも、思っていたってコロナはなくならないし、規制が緩くなるわけでもない。そのときだよ、ステージに出て、フロアを見た。「騒げないならその倍踊ろう」って、「歌えないならいつもの何倍も拳を上げよう」って、そんな君らを見た。めちゃくちゃカッコ良かったんだよ。そんな姿を観てさ、止まっていられる神激じゃないじゃん? だからただ前向いて走った。そしたらさ、結成当初から夢だった、あの武道館が足跡になった。ずっと出たい出たいと言い続けた「SUMMER SONIC」が足跡になった。そんで今日に辿り着いた。これが神激の5年間なんだ!"
そんな彼女の言葉で会場の熱がグッと高まるのを感じた。そしてここから神激の始まりの曲「宣戦布告」をパフォーマンス。5年間、神激メンバーと共に育っていったこの楽曲で、様々な光景や思い出がフラッシュバックした神者も多かったはずだ。
ライヴ中盤に「神奏曲:ガイア」で、曲中最大の見せ場となる無音ブレイクダウンからの凶暴なスクリームを涙染あまねが決めると、最新曲「ワールドブレイカー」に突入した。冒頭のヒップホップ調のパートで二日よいこが貫禄のラップを決め、ラウドな音世界へ突入。そこからキャッチーなサビメロへと移っていく神激らしい超展開と、海外ポップスを思わせるTiNAのガールクラッシュな歌唱といった新しさとの融合が見事。すでに新たなキラーチューンとしての存在感を放っていた、ハイライトのひとつだった。
ラスト・スパートは、「合法トリップ:ボイルハザード」、「神奏曲:インフェルノ」、「生まれ変わっても自分になりたい」と、熱さとエモさをこれでもかと詰め込んだ楽曲で畳み掛ける。豊洲PITの熱量が最高潮に達したところで、神激の5周年ライヴを締めくくったのは「Supernova」だ。6年目、そしてその先の未来に向けての想いを乗せた歌を届けてライヴは終幕。曲の終わりに6人で肩を組んだ光景が眩しかった。
「生まれ変わっても自分になりたい」の曲中に、生牡蠣いもこはこう語った。"私、このメンバーとスタッフも含めて、死ぬまで一緒にいれるって本気で思えるし、メンバーもそう思ってる。君らもさ、大切な人、仲間とかいるかな? いるならめっちゃ大切にしてほしい。もしこの中にひとりぼっちだなって感じている人がいるんだったらさ、それは違うって思うんだよね。だって、こんな暑苦しい歌を聴いてさ、受け取ってしっかり返してくれる、そんな気持ちを分かち合えるんだよ。これってさ、私たち、仲間なんじゃないのかな? もしここを出て、ひとりぼっちだと思ったらまたここに戻っておいで。いつだって居場所はここにあるから、また歌おう。また分かち合おう。そんで、死ぬまで寄り添う、死ぬまで歌う"。
冒頭で記した通り、神激にとっての2022年は、日本武道館単独公演の開催に"SUMMER SONIC"出演と、グループの歴史を語るうえで重要な1年になったのは間違いない。そして、それらを通過点として、彼女たちの歴史はこれからも刻まれ続けていくだろう。神激と神者で作り上げる神話は、6年目に突入する。
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