LIVE REPORT
神使轟く、激情の如く。
2021.03.05 @豊洲PIT
Writer 宮﨑 大樹
神激(神使轟く、激情の如く。)が豊洲PITで開催した単独公演は、"神激、豊洲PITで無銭ライブやるってよ!"のタイトル通り、一部の席を除いてフリー・ライヴとして行われた。最大規模のライヴハウスで無料公演を行うというその破天荒っぷりは、実に神激らしいと言える。それに、自分たちの力なら"無料であれば"と試しに会場へ足を運んだオーディエンスを、自分たちの虜にできるという自信の表れとしても受け取れた。
"約半年前、私たちはここで、豊洲PITでワンマンやりました。みんなはさ、同じ景色を観に来たのか? 違うよな? 24時間×180の答えを観に来たんだろ!?"実久里ことのが激しく煽っての開幕曲は「神奏曲:テンペスト」。ツーバス仕様で疾走感のある、ゴリゴリのラウド・サウンドに乗せた涙染あまねのスクリーム、二日よいこのラップをはじめとしたそれぞれの武器が光る。急激なテンポ・チェンジも織り交ぜられた変幻自在っぷりは、これぞ神激サウンドという印象だ。間奏では、神者(※神激ファンの総称)がこれまでに溜め込んでいた想いを吐き出すように、大きく大きく声を上げる。その光景を見ていると、失われたかつての日常が少し戻ってきたようで、なんだか嬉しい気持ちにもなった。
今を全力で生きようとする意志の表れた歌詞が、この時代だからこそより響く「夏声蝉時雨」。続けて「自己都合主義メタモルフォーゼ」へ。曲の頭でTiNAが放った"最高の一体感ここで作り出していこうぜ!"という言葉を体現するように"神激万歳"の大合唱で神激と神者がひとつになっていく。お馴染みのフリースタイル・ゾーンでは豊洲PITを左右に揺らしたり、ツーステしたりと熱量がグングン高まっていった。高速チューンの「神奏曲:アブソルートゼロ」から畳み掛けるように披露した「風Zing!雷Zing!」、「生まれ変わっても自分になりたい」の流れでは、生牡蠣いもこをはじめとして、各メンバーの歌唱表現、歌唱力に一段と磨きが掛かってきていることに気づく。暴れ馬のような神激節の音楽に食らいつくように、メンバーも進化を重ねているようで、とても頼もしい。
勢いを落とさずに「宣戦布告」から後半戦へ突入。アグレッシヴな曲調から一転して、体操パートで跳ねたり、コールしたり、ツーステしたり、初見では絶対に予測不可能な展開はやはり中毒性がある。"この場所が世界で一番幸せだなって、胸を張って言えます。今俺は、誰のことも羨ましいなって思ってない。どんなステージよりも、どんなフロアよりも、ここにいるお前らと楽しんでいる。そんなライヴハウスが一番だと思っているからです"(三笠エヴァ)、聞いているだけで自然と拳を握りしめそうになる魂のMCを経て披露した「神奏曲:ガイア」では、スキルが備わっているからこそカッコ良く魅せられる、ラップとシャウトの掛け合いが熱かった。
さらに「合法トリップ:ボイルハザード」で怒濤のラスト・スパートを仕掛け、"こうやって歌えることが幸せでたまらない"(生牡蠣いもこ)と語ってから、彼女たちが最後に届けたのは「不器用HERO」だった。豊洲PITに集まった人々を、誰ひとりとして置いていかず、音楽の力で救っていこうとするヒーローの姿がそこにはあった気がする。
終了後、主催ライヴ・シリーズ"LEGIT"を今春より開催することを発表した神激。バンド・シーンへの進出を目指していた彼女たちが、いよいよバンドとの対バン・ライヴ・シリーズに動き出したようだ。アイドル・シーンを飛び出した神激チームが、これからバンド・シーンにどんな風を吹かせるのか。この先の展開に、なんだかワクワクしてきた。
[Setlist]
1. 神奏曲:テンペスト
2. 夏声蝉時雨
3. 自己都合主義メタモルフォーゼ
4. 神奏曲:アブソルートゼロ
5. 風Zing!雷Zing!6. 生まれ変わっても自分になりたい
7. 宣戦布告
8. 神奏曲:ガイア
9. 合法トリップ:ボイルハザード
10. 不器用HERO
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