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INTERVIEW

神使轟く、激情の如く。× CIVILIAN

2021.08.10UPDATE

2021年08月号掲載

神使轟く、激情の如く。× CIVILIAN

神使轟く、激情の如く。:実久里ことの 生牡蠣いもこ 三笠エヴァ TiNA
CIVILIAN:コヤマヒデカズ(Vo/Gt) 純市(Ba) 有田 清幸(Dr)
インタビュアー:宮﨑 大樹 Photo by 上坂和也


展開が変わっていくのが全然嫌じゃない。サビがしっかりしてるから全体に1本の柱が通ってる(コヤマ)


-純市さんはコヤマさんの音楽のどこに魅力を感じてますか?

純市:一番は声が好きですね。あとは、人が好きです。コヤマにはダメな部分もすごくあるんですけど、こういうやつだからこのワードが出るんだろうなぁとか、あとは柔軟にいろいろな人の言うことを聞いて、それを超えたものを持ってくるとか、そういうところは尊敬していますね。

ことの:うちは生牡蠣いもこが全曲の歌詞を書いていて、昔は敵対心むき出しな歌詞だったんですけど、どんどんファンへの愛が入ってきているんです。それを見て、私もこいつにしか書けない歌詞だなと感じていますね。

純市:やっぱり人間嫌いってそうなるんですかね(笑)。

いもこ:だいぶ好きになってきたほうです(笑)。

純市:コヤマと似てるかもしれないね。

いもこ:ちょっと似てるなって思う部分があったので聞きたいんですけど、"自意識の歌詞から周りの世界のことも表現するようになった"と言っていたインタビューを読んだんです。そのきっかけになった出来事はありますか?

コヤマ:最初のころは、"自分の抱えている気持ちは誰にもわかってもらえるわけない"と思ってずっと曲を作っていたんですよね。"歌でも歌ってなきゃやってらんねー!"って。そうやって歌を作って自分で自分を慰めていたんですよ。でも、気がついたらだんだんと共感してくれる人が増えてきて、いつの間にかたくさんのお客さんに囲まれるようになりました。わかってくれる人が目の前に少なからずいて、共感してくれる人もいると気づいて、そこに目を瞑ったままで相変わらず"誰にもわかってもらえねー!"と歌うのは嘘かなと思うようになったんです。それからちょっとずつ、自分とわかってくれる人たちとのあいだの歌とか、そういうものが書けるようになってきました。そんな感じだったような気がします。だから、同じような感じじゃないかな。

いもこ:同じだと思いました。あと"人の痛みに敏感な人なのかな?"と勝手に受け取ってしまったのですが、3人ともメンタルは強いですか?

有田:(笑)俺はよく知り合いに"メンタルお化け"と言われます。弱いほうではないと思いますね。

コヤマ:俺は世の中の人間の中で最弱だと思います(笑)。めちゃくちゃ弱いです。定期的に全部のSNSをやめたくなります。"アカウント消そうかな"みたいな。でも思い留まる。

エヴァ:LINEとかも全部ですよね。めっちゃわかります!

コヤマ:なんなら携帯壊そうかなみたいな(笑)。

純市:俺もめちゃくちゃ弱いですね。ライヴ前はやっぱり緊張しますし。それで"よし! やってやる!"と力が入って、悪い方向に行っちゃうとかあります(笑)。

有田:繊細だからね。

純市:こんな見た目で繊細だなんて(笑)。

-質問をした、いもこさん自身はどうですか? 今までの話からすると弱めな気がしますけど。

いもこ:そうですね。めっちゃ弱音を吐くし、めっちゃメンタル弱いんですけど、図太いからずっといます。やりたいことはあるので、そこはブレずに弱音を吐くんです。

-メンタルが弱い人だからこそ書ける歌詞もあるんでしょうね。

有田:繊細じゃないとやれないと思いますよ。俺みたいな"メンタルお化け"は発信したいことが少ないというか、わざわざ曲にしてまで発信しようとならない。やっぱり、言いたいことがあるからしっかり歌詞が書けるんだと思います。逆に俺はズバズバ言ってるから、言いたいことが全然溜まっていかないんです(笑)。そこに対する細かいディティールを捉えられるから、ミュージシャンをやってるんだろうなと思いますね。

-続いて、ことのさんからの質問です。

ことの:VOCALOIDの曲を作るときと、バンドの曲を作るとき、それぞれ意識していることなどはありますか?

コヤマ:自分が歌う曲を作るときは最終的には自分がお客さんとの窓口になるので、自分の声とか、自分の歌ってる姿で一番伝わるものを書こうとしているんです。でも、初めてボカロで曲を作ったときに何が面白かったかというと、女性ヴォーカルで、しかも自分の好きに歌わせられるのがすごく楽しくて。自分の外見と声で歌うのはちょっと気持ち悪いなと思っていた歌詞も、自分の好きに歌わせられることが楽しかったんです。今でもそれはあるかもしれないですね。自分が作っているんだけど、その発信する窓口が自分じゃないぶん、自分とは違う一面で曲を書けたりするというか。それはあるかもしれないです。

ことの:ちょっとずれちゃうかもしれないんですけど、誰が歌うかってすごく大事だなと思うんです。神激はヴォーカルが6人いるなかで、作曲してる方が私たちの特徴とか声色をちゃんとみて、私たちがいることを想定したうえで曲を作ってくれています。なので、誰がどこを歌うか、どんな曲を歌うかってすごく大事なんだなと。

コヤマ:そうですね。同じ歌詞を歌っていても、歌う人の人柄だったり声質だったり、そういうので全然伝わり方って変わると思います。誰が窓口になってるかは大事ですね。

-ボカロ曲は女性ヴォーカルを念頭に置いて書くわけですよね。でも、時としてそれが戻ってくるというか、セルフ・カバーをして自分で歌うことになるのが面白いです。そういうときは、どういう気持ちになるんでしょうか?

コヤマ:例えばさっきお話に出していただいた「ハロ/ハワユ」を作った瞬間は、自分で歌うことを全然考えていなくて。当時の自分には歌えないことだったんですけど、こうやってバンドを長く続けていくうちに、変に頑なになっていた部分とかが自分の中でもだんだんなくなっていきました。"今だったらこういう歌を歌っても大丈夫かな"みたいに思えたところもあって。それでセルフ・カバーをすることになっていった感じでしたね。"絶対自分じゃ歌わない"と思って作っていたからこそ、自分でそれを歌ってみて、"こういう歌を歌うと自分はこういう感じになるんだな"と新しく発見することはありました。

TiNA:たくさん曲を聴かせていただいたんですが、どの曲もサビの入り方がとても気持ち良くて疾走感のあるものが多い印象でした。サビを作るうえでこだわっている部分とか、共通点などがあれば教えていただきたいです。

コヤマ:感覚的なことなのでうまくは言えないんですけど、特にJ-POPとか日本の歌モノとかって、イントロ、Aメロ、Bメロがあってサビが来るじゃないですか? だから、聴いてるみんなをサビで一番解放したいというか、自分も放出したいし、お客さんもそこで解き放ちたいみたいな想いがあって。曲って、イントロの最初の一音が鳴る瞬間とか、ヴォーカルがAメロで最初に歌い始める瞬間とか、サビに入る瞬間とか、1曲の中にもいくつも最初の瞬間があるんですよね。そこでお客さんに"おっ!"と思わせられるかがすごく大事だなと思って。なので、サビの入り方はできる限りハッとするような感じというか"サビが来た!"と感じるものになれという想いを込めて作っています。

TiNA:神激は、プログレッシヴ・ミクスチャー・ロックというジャンルをやってるので、Aメロ、Bメロ、Cメロとかで、ある意味ごちゃ混ぜの曲をやってるんですよ。一見するとすごくグシャグシャに見えるんですけど、サビだけは一貫してキャッチーにしています。それがあることで曲がまとまって聴こえるんです。サビって、曲の要になるのですごく大事じゃないですか? 始まった瞬間にハッとするというのは、言っていただいた通りだなぁと。

コヤマ:いろんな展開を持ってくると、下手したらごちゃごちゃになっちゃうし、聴いてる側にとっては、"もうちょっとこれ聴きたかったんだけどな"みたいな感じになっちゃう危険性もあるんですよね。でも、曲を聴かせてもらって、展開が変わっていくのが全然嫌じゃなくて。それはたぶんサビがしっかりしてるから全体に1本の柱が通ってる感じになってるのかな。お話を聞いていてそんな気がしました。サビは大事ですよね。

エヴァ:深く美しい言葉や、物語らしくなっている歌詞の曲が多く、どのようなときに歌詞を考えているのか教えていただきたいです。また、自分にインプットしたいときは、何を観たり、読んだり、聴いたりしますか?"

コヤマ:もちろん普段からいろんな曲を聴いたり、アニメを観たり、ゲームしたり、漫画を読んだりは日常的にしてるんですけど、日常的に触れているものの中から自然と影響を受けているような気がするんですよね。だから、歌詞を書くときに改めて何かを参考にしようというのは、そんなにないかもしれないです。よっぽど"何も書けねぇな"みたいなときは、"インプットが足りてないんだな"って感じで、いったん歌詞を書くのやめて、ひたすらゲームをやったり映画観たりはしますけど。

TiNA:日常生活の中で"あっこれ歌詞に使えるな"みたいな瞬間はあるんですか?

コヤマ:メモったりはしてますね。電車に乗ってるときとか、風呂に入ってるときはよく思い浮かぶ感じがします。

いもこ:私は、歌うのが私だけじゃないので、日常生活の中でメンバーと話し合ったりしたときに、"こいついいこと言うやん"と思ったことのメモとか、ライヴ動画を保存して文字に移して書いたりしますね。

コヤマ:そうやって人と話したことから影響を受けるときは俺もたくさんありますね。最近はコロナで全然誰とも会ってないんですけど、前に飲みに行ってたときは、他愛のない話があとになって"あのときのあれってああだったな"となったりして。人と関わったことを書くときは、俺もすごくあります。