INTERVIEW
神使轟く、激情の如く。× Rhythmic Toy World
2020.11.12UPDATE
2020年11月号掲載
神使轟く、激情の如く。:実久里ことの 涙染あまね TiNA
Rhythmic Toy World:内田 直孝(Vo/Gt) 岸 明平(Gt)
インタビュアー:宮﨑 大樹 Photo by 新倉映見
背中を押す感じは似ている気がします(岸)
そういうところがこのふた組を引き寄せたのかもしれないですね(内田)
-ところで、神激メンバーは今日のために質問を用意してくれていて、そのために音源を聴いたり、過去のインタビューを読んだり、Twitterを掘っていったりしていたようです。
岸:怖い怖い(笑)。
内田:そういうところがストイックなんですよね(笑)。
-その質問のひとつが、リズミックがコロナ禍でも3ヶ月連続デジタル・リリースや配信ライヴをしていて、先がわからないなかで原動力になったものはなんですか? というもので。
内田:2月28日のワンマン・ライヴ([new T.W.I.M BOMB NIGHT - 1st anniversary of "STORE RELOCATION" Rhythmic Toy World special one-man live!!])が自粛前最後だったんですよ。で、3月から全部白紙になって、漠然とした不安というか、世の中がどうなっていくのかなぁみたいなものはあって。でもちょうどそのとき、3月の頭くらいに"ポケモンカードゲーム"のルール・ソングを作るっていうオファーをいただいたんですよ。8月くらいまでは自分たちの作品と向き合う仕事があったので、心が折れずに済みました。
-3ヶ月連続の配信はどうやって決まっていったんですか?
内田:夏に向けて少しでもみんなのテンションが上がっていくように、最後は真夏に曲が出るようにして3ヶ月連続でやろうと。毎月1日に出すことで、また来月の1日まで過ごそう、頑張ろう、生きていこうって、その人の数パーセントでもきっかけになればいいよねってみんなで話していました。基本的に抜け駆け体質というか、これが落ち着いたときに、ボーっとしていた人と、そうじゃなかった人で絶対差が出るっていうのもありましたね。自分の興味があることや、苦手な部分とか長所を伸ばすとか、真面目なモードで過ごしていたので、今日に至るまではすぐでした。なのでテンションは高くて、あんま落ちたときがなかったです。でも周りの人に聞くと落ちることがあったみたいで。
岸:自分は、これからどうなるんだろうと思っちゃっていました。それでも、そろそろいいんじゃないかっていうのでスタジオとかに入り始めたら、そのときがめちゃくちゃ楽しかったんですよ。"アンプうるせぇー!"って(笑)、初めてメンバーとスタジオに入ったときみたいな感覚を思い出して。音楽やるのは楽しいなって初心に帰った感じでした。
-神激のモチベーションはどうだったんですか?
ことの:この期間中に技術を伸ばそうと各々が発声練習を見つめ直したり、いろんなアーティストさんのライヴ映像を見たりする勉強期間でもありました。あとは新曲や過去の曲をレコーディングし直したりとなんだかんだで忙しい時間を過ごしていたのでモチベーションがブレることはありませんでした。
TiNA:ここで止まったらダメだぞっていう意識が全員にあったので、この自粛期間中でいかに他と違うことができるかみたいなことをずっと考えていました。
-話は変わって、リズミックが連続配信をした曲がすべてアルファベット4文字表記なのは何か意味が込められているんですか、という質問もあります。
内田:3部作とか好きなんですよ。今回は1曲目に出した曲が「VITE」(2020年6月配信リリース)だったので、全部の曲を英語4文字にしようと思って。今年は5年後とか10年後とかにも誰もが忘れていない1年になっているはずなので"あのとき3曲連続で英語4文字の曲を出したよね"みたいに、振り返ったときにわかりやすい目印にしました。英語の縛りだけでも良かったんですけど、僕らはメンバーが4人なので、どうしても4が良かったっていうところはありましたね。4人で作っている、この期間で誰ひとり欠けることなくやっていくという気持ちを4という数に込めていました。
岸:初めて知った。
-すごくいい話ですね。制作について、"歌詞は全部ノンフィクションで"という部分を深く聞いてみたいとのことです。
ことの:うちは生牡蠣いもこが全曲の歌詞を書いていて、彼女の経験とか神激で見てきた景色、それぞれの特徴を書いている曲とかがあるんです。リアルな歌詞って歌いやすいし、感情をすごく込めやすいなというのがあって。歌詞を書くときに気をつけていることはありますか?
内田:大事にしたいと思っているのは、基本的には日本語でという部分。自分の気持ちを伝えるツールとして確実に日本語が一番強いので、なるべく日本語を使っています。フィクションかノンフィクションかに関しては、僕らは人の人生において何かのきっかけとか、一歩踏み出す勇気みたいなものになればっていうところが根底にはあるので、人のリアルを応援するのにリアルを歌わないっていうのは自分の中ではNGだなっていうのがありますね。ファンタジーでも物語風でも人を勇気づけられるっていうのはもちろんあると思うんですけど、僕は向いていないからノンフィクションで攻めたいという部分で。
-なるほど。
内田:他に気をつけていることというのは――これは知人に言われてハッとした言葉なんですけど、"作詞においては死なない程度に毒を盛れ"という言葉がありまして。すごく素敵な言葉やと思ったんです。そのままなんですけど、歌詞で殺しちゃだめなんですよ。打ちのめしてしまったらダメというか、頑張れない人が"頑張れないやつは生きている意味がないんだ"って言葉を聴いたら、もしかしたらそれ以上立ち上がれなくなるかもしれないじゃないですか。でも多少の毒を盛ることで、"ナニクソ!"って思わせるその塩梅みたいなところを楽しんでやっています。殺しちゃいけない、でも毒を盛っていこう、みたいな。「絶対領域」(2020年4月リリースのデジタル・シングル)っていう曲があるんですけど、"「努力は決して人を裏切らない」/サンタでもつく嘘だ"っていう歌詞が、僕の中での毒なんです。サンタって嘘をつかないような存在じゃないですか、でもそんなサンタでさえもそういう嘘をつくんだよっていう攻撃力があって。そういうのを出すことにすごく時間をかけてます。
TiNA:曲を聴いていても、そこの歌詞が耳にすごく残りました。
内田:良かったです。そういうのを日々探してます。
ことの:神激も似た部分があると思っていて、嘘をつかないのはもちろんだし、自分の等身大以上のことは書いていないですね。例えば「不器用HERO」(2019年10月リリースのデジタル・シングル)っていう曲も、全員のヒーローにはなれないけど、今目の前にいるあなただけは救える歌を歌いたい、とか。背伸びしすぎないというか、大きくなりすぎないようにはしていますね。
岸:うん、背中を押す感じは似ている気がします。
内田:そういうところがこのふた組を引き寄せたのかもしれないですね。
-TiNAさんは、リズミックのメロディが気になっているそうですね。
TiNA:そうですね。特に「CTOC」(2020年8月リリースのデジタル・シングル)っていう曲がすごく好きで。サビに行くまでの音がめちゃくちゃ難しいじゃないですか? なのにサビではきれいに"ドレミファソラシド"でまとめるっていうのがグッと来て。歌詞ではなく音を作る意味でのこだわりも聞いてみたいです。
内田:あぁ~、僕は僕自身の感覚なんです。だけど、一緒に曲を作っている明平から見たときに、僕の作る曲がどう感じられているのかは、この場を借りて聞いてみたいですね。
岸:音楽的な話になりますけど、曲ってコードにメロディが乗っているじゃないですか。コードの構成音っていうのがあるんですけど、彼のメロディは構成音に乗っていないんですよ。ドミソのコードだったらドミソの中でメロディを普通は作るんですけど、レが鳴ってたりするんです。で、トラックとメロディが独立しているみたいな。ただ、メロディが難しいほうに行っちゃっても、トラックは別で生きているから大丈夫なんです。
内田:"弾き語りしづらい"って言われたことはありますね。"なぜその音に行くのかがわからないときがある"って。
岸:曲作りのときも"このコードのときは絶対にこの音はないよ"みたいな話をするんですけど、結局曲にしてみたら全然不自然じゃなかったりとかして。
内田:最近もありましたね。「犀日」っていう今月末に出る曲があって(11月28日に配信リリース)。どうしても僕の中で鳴っている音があるんですけど、彼からは"このコードからの流れでこの音は鳴らないんだよ!"みたいなやりとりをずっとしていました。そうして何度かやりとりをして、最後はおっさんふたりで"これだ!"って(笑)。
岸:そういうのが面白いんです。自分は理論で、彼はノー理論で、その組み合わせで作っています。でも、神激さんもめちゃくちゃメロディが難しいですよね。テンポも変わるし、転調も多いし。
ことの:そうなんです(笑)。初めて観た人には"今何曲目かわからなかった"って言われます。
内田:作っていらっしゃる方が相当な変態なんじゃないかって(笑)。
岸:俺らも転調だったりテンポ・チェンジだったりをよくやっていたんです。でもなんか、怖くなって......ね?
内田:一時期ね。11周年を迎えた僕たちからは今後また出てくると思うんですけど、1回トリッキーなことは封印していたんです。で、檻から解き放ってみたらああいうメロディになりました。
-話は変わって、あまねさんからは"内田さんはアニメ好きだからこそ、アニメのタイアップを取ったときはどんな気持ちでしたか?"と質問が用意されています。
内田:あれは、単純に嬉しいですよね。
あまね:"弱虫ペダル GLORY LINE"(※OPテーマ:Rhythmic Toy World「僕の声」)を観ていたんですよ。
内田:あ、本当ですか! アニメは僕も観ていたんですけど、マンガを全巻読むところから始めて、こんなに毎回泣けるやつある? みたいな感じでした。1巻ずつ泣いたのは初めてかも。"アニソンをやりたいです"ってずっと言っていたんです。5年くらい言い続けてお話をいただけたので"アニメ好きが書くアニソンはひと味違うぜ"みたいな気持ちでやりました。あれがきっかけでいろんなことが起きて、いろんなことを運んでくれたので、すごく感謝してますね。
-内田さんは、アニメだけじゃなくゲームもお好きですよね。
あまね:Twitterであつ森(あつまれ どうぶつの森)のつぶやきをたくさん見ました(笑)。
内田:そうなんです。ファンのみんなとやったりして。あとはモンハン(モンスターハンター)で内田組というのを作って入団してもらってます。そこもひとつのホームになればいいなっていうのがあるんです。僕がいなくても、そこで繋がった人たちが仲良くなったらいいなと。
岸:でも、めっちゃ搾取してるよね(笑)?
内田:貢物があるんです(笑)。それを見た健全なユーザーが"こんなことはしちゃいけない!"みたいな(笑)。でも面白いんですよ、ラフな感じで。
-神激もわりとアニメ、ゲーム好きが多いですよね。
ことの:多いですね。わりとみんな......TiNA以外(笑)?
内田:(笑)でも、何かと合いますね。基本的に僕らってひっきーなんですよ。(神激も)わりと家で過ごす時間が苦じゃないっていうタイプなのかなって......TiNAさん以外は。
TiNA:え! 今、うんうんって頷いてましたよ(笑)!
一同:(笑)