LIVE REPORT
Fear, and Loathing in Las Vegas
2014.12.09 @Zepp Tokyo
Writer 村岡 俊介(DJ ムラオカ)
3rdフル・アルバム『PHASE 2』のリリース当日の8月6日、同アルバムを引っ提げて行う全国ツアーのファイナル・シリーズを発表。9月4日の新木場 STUDIO COASTからスタートした本編35本に加え、ファイナル・シリーズとして12月に札幌、東京、名古屋、福岡、大阪の5ヶ所をまわることに。そのファイナル・シリーズの東京場所であるZepp Tokyo公演でレポートを取らせてもらうこととなった。
各公演に1組以上のゲスト・アーティストを迎えて行われてきた当ツアーだが、Zepp Tokyo公演のゲストはなんとアイドル・フリークだけでなくロック・ファンにも一目置かれているコアなオタク・アイドル・ユニット"でんぱ組.inc"。激ロックのニュースでも出演がアップされるや否やBUZZが起きていた彼女たちの出演だが、実際、オープンからすでにいつものラスベガスのライヴの雰囲気とは異なるザワザワ感が会場を覆っていた。しかし実際に"でんぱ組.inc"のライヴが始まると、ジャンルは全く違えど曲によってはラスベガスに通じるエレクトロ感やメンバーの"最上もが"が大のラスベガス・ファンを公言しているだけあって、ラスベガス目当てのキッズからも終始温かく歓迎されてのパフォーマンスであった。
でんぱ組.incが十二分に会場を温めた後はメイン・アクトのラスベガスの出番である。セット・チェンジのBGMが突如止み会場が暗転。SEが流れ出すと会場にはレーザーが飛び交いレーザー光線がステージのバックドロップのラスベガスのロゴをなぞるように照らし出し浮き上がらせる。そしてメンバー6人が登場。Taiki(Gt)の白タイツにオレンジのヘア・バンドという想像以上に奇抜なファッションに若干ビックリさせられたが、彼らの人気からすると不釣り合いなキャパのZepp Tokyoでチケット争奪戦を勝ち抜き参戦してきた猛者たちの気合は十分すぎるほどで、すでに登場の段階で彼らの興奮は1度目の沸点を迎える。So(Clean/Scream Vo. & Prog.)が初っ端から"Zepp Tokyo!本気で行くぞー!"と叫び、そしてSEに合わせ"オイッオイッオイッ!"と拳を上げ叫び観客を煽る。SEはそのまま『PHASE 2』のイントロ「Are You Ready to Blast Off?」へと繋がり、"今日を最高の日にしようぜー"とSoの煽りからアルバムの流れのまま"All right? Dancing floor for you is ready~"というフレーズから始まる「Rave-up Tonight」へ。会場は一瞬にしてダンスフロアと化しキッズたちはところ狭しと踊り狂いダイバーも多数出現。Minami(Scream Vo. & Keyboards)はMV通りあっさり側転を決め、中間部の百烈拳では"アタタタタタタタッ!"と叫ぶSoに負けじと観客の叫び声が会場中に鳴り響く。そして間髪入れずに2ndアルバム収録の「Scream Hard as You Can」へ雪崩れ込む。ブレイク後のレイヴィーなパートからじわじわアゲていく展開は何度体感しても毎回鳥肌が立つほどだ。開始からわずか10分という短時間で会場をここまでカオスな空間へ変貌させるバンドはラスベガス以外思いつかない。ここでSxun(Gt)の始めてのMCが入り"Zepp Tokyo調子はどうですか!?"続けて"さっきでんぱ組.incの時の光る棒はなくなっちゃったんですか? せっかくでんぱ組.incと一緒にやってるんだから全然ありだと思う。タオルでも光る棒でも思いっきり振ってください!"と叫び、『PHASE 2』収録の「Swing It!!」を披露。名曲「Jump Around」の進化系を目指して作られたトラックだが、彼らの狙い通り会場一体となってみんな笑顔でタオルや光り物を頭上で勢いよく振り回す。2階席からの眺めも感動的だ。そしてKeiのバキバキな高速スラップ・ベースとソリッドなツイン・ギターのコンビメーションが冴える「Thunderclap」、超絶変則的でプログレッシヴな「Counterattack by the Sesame Sized Bodies」とアグレッシヴでテクニカルなコア・サイドの楽曲が続くが、メンバーに負けじと観客も必死に食らいついてくる。「Counterattack~」終了後、SxunがMCを挟む。先ほどのMCでも感じたが、SxunのMCはいつにも増してリラックスして肩の力が抜けている。以前のライヴでは暗記したセリフを一語一語反芻しているようなカッチリしたものだったが、今日のMCは大枠だけ決めアドリブも挟みながら話している、そんな印象だ。こんなところからも35本という長いツアーでの成長が垣間見える。来年1月リリースのシングル『Let Me Hear』についてMCで語った後、そのまま「Let Me Hear」が披露され白光のレーザーや派手な照明が飛び交う。アニメ"寄生獣 セイの格率"のオープニング・テーマとしてすでに前半部分を耳にしているファンは多いだろうが、前日の札幌以外ではまだ披露してないのでフルで聴くのはほとんどの観客にとって初体験だったはず。アニメのオープニングだけでは予想できない、目まぐるしくギアを上げていく展開に嬉しい驚きを感じたファンは多かったことだろう。またTaikiのヴォーカリストとしての役割が増しており、『Let Me Hear』以降の彼らの方向性が占える楽曲だと言えるかもしれない。そしてシンセ/エレクトロ感の強い「Ley-Line」では、観客だけでなくステージ上のメンバーも無心に踊りまくる。ライヴ開始直後から感じていたが、打ち込み中心の曲でも以前より生音が前面に出てきているようだ。ラスベガス流バラードの「Rain Inside Your Eyes」では煌めくミラーボールの元、自然に観客の手が上がる。彼らの音楽性の幅を広げた1曲であり、今回のような長いセットリストではより映えるので、今後も重宝されるのではないだろうか。
SxunがMCで"でんぱ組.inc"への感謝を述べた後、「Just Awake」へ。ラスベガスが初めてチャレンジした日本語詞は会場中に大合唱を巻き起こす。Soひとりのマイクを通した声と3000人近い観客の生声が交わり会場中に一体感を生み出している。そしてMinamiが血を吐くように叫び倒すカオティックな「Step of Terror」、そしてエモーショナルでポップ・ロックの雰囲気を感じる「Flutter of Cherry Blossom」と、落差のある楽曲をうまく配置し観客を飽きさせないセットリストになっている。"今回のツアーでは物販を手伝ったり、ツイッターを書いてファンと接したりと初心を忘れないというテーマを掲げ全国を回って来ました"というSxunのMCに続き"初心にかえる"というテーマの元繰り出されたのは、1stミニ・アルバム『NEXTREME』収録の「Chase the Light!」、そして1stフル・アルバム『Dance & Scream』収録の「Love at First Sight」と初期ラスベガスの名曲が続けざまに放たれる。ライヴも終盤となりクライマックスに向けレーザーや照明もさらにド派手に会場を照射し煽る。過去の名曲たちが長いツアーで演奏され続けた試行錯誤の結果、より生の楽器隊を前面に押し出すバランス感を習得したのだろう。以前よりバンドならではの一体感やグルーヴを強く感じる。"残すところあと2曲となりました。アンコールはやらないのでこの2曲で終わりです。みんなと俺たちで最後の最後まで行けるところまで行っちゃいませんか、東京! 全員で最高のクライマックスにしようぜー!!"というSxunの声を振り絞るような全力のMCの後、最後に放たれたのは『PHASE 2』収録の「Virtue and Vice」と「Stay as Who You Are」だ。曲展開が目まぐるしい変態的な「Virtue and Vice」で観客を圧倒し、アルバム最後を飾る7分越えの壮大且つドラマティックな大作「Stay as~」でSxunの言葉通り観客の興奮、感動は最高点に達し、ファイナル・シリーズ東京場所は最高の形でエンディングを迎えた。
来年1月リリースの『Let Me Hear』はリード曲だけでなく他2曲も新機軸でありつつラスベガス感満載という素晴らしい出来栄えとなっている点は僕が断言しよう。最高のファイナル・シリーズで2014年を終え、最高のシングルで2015年幕を開ける。彼らの無尽蔵のポテンシャルの限界はまだまだ見えてこない。ラスベガス、全くもってとてつもないバンドである。
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