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LIVE REPORT

a crowd of rebellion

2019.02.24 @渋谷TSUTAYA O-EAST

Writer 米沢 彰

昨年7月にリリースした3rdアルバム『Ill』を引っ提げ、地元新潟で9月に開催した"米騒動 vol.3 ~「KEEP YOUR HANDs OFF MY GIRL」&「Ill」tour~"を皮切りに、14公演のツーマン・ツアー、7公演のワンマン・ツアーを経て行われたa crowd of rebellionのツアー・ファイナル。1,300人を渋谷TSUTAYA O-EASTに動員し大入り満員となった本公演は、ツアーを締めくくるのに相応しい、バンドの集大成と言えるパフォーマンスで2時間強を一気に突っ走った圧巻のショーとなった。

2階席まで用意され、入れられる限りのオーディエンスを飲み込んだO-EASTのフロアは今か今かと開演を待ち望む熱気で満ちていた。そこはやはり"Ill tour"ファイナル、『Ill』のイントロ~オープニング・トラックとなる「Prologue -Insomnia-」でショーの幕が上がる。1曲目からエモーション全開でフロアをリードしていくバンドと、全力でついていくオーディエンス。シンガロングにハンドクラップ、モッシュの嵐と、まだライヴ開演直後の18時過ぎとは俄かに信じられないような光景が繰り広げられていく。

「Ill」、「Sign.」、「Raccoon Dead」、「Anemia」とアルバムのままの曲順でパフォーマンスが繰り広げられる。曲そのものももちろん、曲の流れがそのまま公演に使えるなんて、どれだけアルバムが作品として完成しているということなのか。改めて自らのアウトプットへの自信を覗かせるような構成で攻めてくる。

6曲目に繰り出したのはメジャー1st EP収録の「Never Say A Gain」。"君は何を残すの"とシンガロングの大合唱が繰り広げられたシーンが印象的だった。続いてMC で"俺たちはこうやって育ってきたんだよ!"と熱く煽ってからは早くも「O.B.M.A」。"もうやるの!?"って思った長年のファンも多いかもしれない。サビでは1,300人の手が左右に振られ、まだ公演の前半戦にもかかわらず、凄まじい一体感が生まれる。全員での"O.B.M.A"の絶叫も強烈だ。そのまま「M1917」へ突入。会場も"盛り上がり狂ってる"と表現するのが一番合うんじゃないかってぐらいの熱気へ。でも、これだけ一気に出してもまだクライマックスまで持っていける曲がちゃんと控えてるのが今のa crowd of rebellionの恐ろしいところ。

MCにて『Ill』収録曲「Calling」が映画"超・少年探偵団NEO −Beginning−"の主題歌に決定したことが伝えられ、オーディエンスとその喜びを共有する。こうした主題歌に決まることは初めてであり、さらに劇伴(BGM)を丸山 漠(Gt)が手掛けている。その流れで披露される「Calling」。盛り上がらないわけがない。

"俺たちの細胞から溢れ出すエモーショナルな曲はこの曲です"と訴えてスタートしたのは「The Ilex Allowed Clarity Hate」。さらに「紡冬」を続けてエモーショナルな展開を深めていく。小林亮輔という特異なヴォーカリストを抱え、5人がそれぞれに出せるパフォーマンスの最大値で勝負することを続けてきたa crowd of rebellion。ラウドなサウンドの覆いを外し、剥き身の小林亮輔で勝負するとこうなる、とばかりに今のバンドの表現力を提示するかのような展開に深く引き込まれていく。深みとエモさ、爆発力と表現力を具有した独自の世界観は、観るたびに次のレベルへと進化を続け、何度観ても深く心に刻まれる。

ここで、鬼のドラム・ソロ。近藤 岳(Dr)がマゾなのか、ほかのメンバーがサドなのか、とにかくここまできての踏みまくり、叩きまくりのドラム・パフォーマンスにはただただ驚かされる。怒濤のドラム・ソロ明けにメンバーたちが再登場。宮田大作(Vo)はタンクトップ・スタイルで、もう見た目からわかりやすくアクセルを開け直して終盤戦に突入していく。オーディエンスもシンガロングとモッシュで全力で応える。「BLACK ANTHEM」では巨大なサークルが出現するも、どんどんとオーディエンスがサークルに加わり、あっという間に回れなくなって消えていく。見ているだけでこっちもゾクゾクしてくるぐらい、フロアの熱気が伝わってくる。「She'll Never Forgive To Be Insulted.」ではイントロからもみくちゃになってダイバーも次から次へと飛びまくる。この終盤でこれだけペダルを踏ませるセトリは近藤にとっては鬼すぎるはず。でも抜かずにしっかり全部踏んでる。組む方も組む方だけど、応える方も応える方。頭おかしすぎる(※褒め言葉)。まだ上があるのかってレベルでテンションを上げていき、最後を締めるのはやはり『Ill』のラストと同じ「THE TESTAMENT」。しっかりとアルバムの世界観をライヴに昇華させてツアー・ファイナルを締めくくった。

可聴音域をいっぱいに使って、ツイン・ヴォーカルに美味しいところを残しながらも、バンドのサウンドを圧倒的なレベルで成立させる。言葉にすると当たり前なんだけど、当たり前を高いレベルで実現しているのが彼らのすごいところ。たぶんヴォーカルなしでも客はガンガンにノれてしまうし、それだけでもきっと満足できるはず。Zeppでの10周年公演ではバンドとして突き抜けたことを提示してくれたけど、今回は完全に本物になったことを予感させた。ここからはどこまで高みに行けるかというステージに移行していく。今後彼らがどんな景色を見るのか、そしてファンにどんな世界を見せるのか、これからも楽しみで仕方ない。

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