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LIVE REPORT

lynch.

2018.03.11 @幕張メッセ国際展示場

Writer Reported by 杉江 由紀 Photo by 江隈 麗志

何にも染まらぬ漆黒のプライドを持ち続けながら、ここまで長きにわたり至高の理想を音楽の中に追い求め続けてきた5人の男たちが、この夜改めてステージという名の"処刑台"へと上がることの意味性。それは、あまりにも大きいものだったと言える。

題して、"lynch.-13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS- [THE FIVE BLACKEST CROWS]"。これは文字どおり、このたび幕張メッセにて行われたライヴがlynch.の13周年を記念するものであると同時に、昨年末に彼らの本拠地である名古屋にてカウントダウン・ライヴが行われた場で告知されていた"一度は脱退したはずのベーシスト 明徳が、この公演から正式復帰すること"を意味したものにほかならなかった。

もちろん、不祥事を起こしたメンバーを再びバンドに迎え入れることにより、世間なり第三者から賛否両論が巻き起こる可能性が出てくることは、彼ら自身も充分に覚悟したうえでの決断だったというが......。激しい土砂降りの中、"13階段"を上り切ったところに佇む4人の男たちの足元で、5人目の男が"赦し"を請うように地に手を着いて跪きうなだれているという、実に象徴的なシーンから始まったライヴ冒頭に流されたイメージ映像。その中では葉月(Vo)が5人目の男に向けてゆっくりと手を差し伸ばし、それに対して5人目の男がおずおずと遠慮がちに自らの手を差し出すと、葉月が救い上げるように"彼"の手を力強く握り返す、という場面が我々に供されることに。

その瞬間、幕張メッセの場内から溢れるように沸き上がった大歓声と拍手の渦は、いわばオーディエンスたちによる明徳に対しての恩赦にも似た、ある意味での容認の意志を意味していたのではなかろうか。しかも、そのひと幕を経て実際にメンバーたちがステージにおいて今宵最初に演奏してみせたのが、誓いを意味するタイトルを冠した「PLEDGE」であったというのも感慨深さをより増したのである。

そして、そこからのスタートダッシュぶりが圧倒的であったところも、ライヴ・バンド lynch.の底力を存分に堪能することができるくだりだったことは間違いない。ダーク且つヘヴィなサウンドと流麗なフレーズが味わえる「GALLOWS」といい、激烈にして粋なメロディが疾走した「BLØOD」といい、AKこと明徳の派手なベース・ソロが映えた「GREED」といい。"雨降って地固まる"の言葉そのままに、このタイミングで最新形にして完全体となったlynch.は以前よりも確実にキレと頼もしさを増したライヴ・パフォーマンスをもって、幕張メッセという場を制圧しにかかっていったことになるはずだ。

"まずはひと言言わせてもらっていいですか。ここ、すっごい景色です。いやほんと、我々の常識を覆していますよ、コレは。ちっちゃいライヴハウスから始まって13年かかってしまいましたけれども(笑)、こうして僕らはこんなに素晴らしいステージに立つことができました。ありがとうございます! そして。この1年はいろいろと大変でしたよね。みなさんがlynch.というバンドを必死で守ってきてくれたおかげで、今日また5人に戻ることができました。ありがとうございます。というわけで、紹介してもいいですか。新メンバー、明徳君です(笑)。ひと言どうぞ。"

この葉月の言葉を受けた明徳は、神妙な面持ちでこう続ける。

"みんなにめちゃめちゃ心配をかけて、迷惑をかけてしまって本当にすみませんでした。5人でこの場所に立てることをずっと夢見ていましたが、この場所を守り続けてきてくれてありがとうございます。これから一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!"

なお、このMCのあとにも「CREATURE」を始めとしたアッパーな楽曲たちがいくつも繰り出されることにはなったものの、本編中盤では悠介(Gt)の奏でる繊細なディレイ・ギターと玲央(Gt)の弾く叙情的なフレーズが絶妙なアンサンブルで響いた「KALEIDO」や、晁直(Dr)の隙がないスティックさばきと明徳の押し引きをわきまえたプレイが曲の根幹をしっかりと支えていた「PHANTOM」、葉月がステージから伸びた花道にて艶のあるロー・ヴォイスを生かしたアカペラで魅了してみせた「SORROW」など、じっくりと聴かせるタイプの曲たちでも、彼らはlynch.独自のロマンチシズムが滲む美旋律で観衆を酔わせてくれることとなり、lynch.がただのヘヴィ・ロック・バンドの枠に収まりきるはずもないバンドであることを、今回のライヴでは改めて痛感するに至ったのだった。

また、かつてPay money To my PainのK(Vo)が逝去した際に葉月がKに対しての深い想いを歌詞に託したという「PHOENIX」が紅い火柱が燃え上がる演出とともに歌われた場面も、この曲の生い立ちと今のlynch.が置かれている状況とがオーバーラップすることで、ことさらに含蓄のあるものとして聴こえたのは何も筆者だけではあるまい。

その後、本編佳境においてはlynch.のライヴに欠かすことができない鉄板曲「pulse_」、BPM250という強烈スペックを持ちながらも熱いメッセージ・ソングとして成立している「EVOKE」でブチ上がり、そのうえでインディーズ時代の名曲「from the end」により締めくくられた構成は、完膚なきまでに受け手をひたすら唸らせるような素晴らしい流れだったと断言できる。

ちなみに、アンコールではアリーナ側に設置されたサブ・ステージにて「らせん」と「BE STRONG」がいわゆるアンプラグド・スタイル(※晁直はコンパクトなセットを使い、ギター隊はエレアコ・ギター、明徳はアップライト・ベースを使用していた)で演奏されるサプライズが用意されていたほか、ダブル・アンコールの最後を飾った「TIAMAT」までの各曲では本編のときよりもいい意味で肩の力が抜けたよりlynch.らしいパフォーマンスをもって、場内に詰め掛けていた多くの人々を楽しませてくれていた点も実に興味深かった。基本的には極めてストイックで生真面目なバンドだけに、メンバーたちがふとしたときに柔らかい笑顔を見せるアンコールは、lynch.ファンにとってある意味とても貴重な場でもあるわけだ。

かくして、総計32曲。この夜、lynch.はさまざまなプレッシャーをすべて跳ねのけたうえで現時点での最高にして抜群なライヴを成功させ、"紛れもない「THE FIVE BLACKEST CROWS」ぶり"を我々に見せつけてくれたことになるだろう。そのうえで、早くも4月末からは次なるツアー[TOUR'18「THE NITES OF AVANTGARDE #2」"A BLØODY REVENGE"]や、5月からファン・クラブ限定ツアー"TOUR'18 UNDEAD SOULS -SHADOWS ONLY-"も始まるそうだが、それに先立っては昨年中にJ(LUNA SEA)、人時(黒夢)、YOSHIHIRO YASUI(OUTRAGE)、T$UYO$HI(The BONEZ/Pay money To my Pain)、YUKKE(MUCC)という名うてのベーシスト5名をサポートに迎えて制作された『SINNERS-EP』と、そのあと発売されたシングル『BLØOD THIRSTY CREATURE』の全9曲が、ベース・トラックのみ明徳が新たに録り直した『SINNERS -no one can fake my bløod-』というかたちで4月25日に発表されることも付記しておきたい。

いずれにしても。何にも染まらぬ漆黒のプライドを持ち続けてきたからこそ、lynch.はあの困難な局面を見事に乗り超えることができたのだと、筆者は信じて疑わない。厳しい逆境にさえ勝てるだけのポテンシャルを持った、誇り高きlynch.の未来に栄光あれ!


[Setlist]
1. PLEDGE
2. GALLOWS
3. BLØOD
4. GREED
5. CREATURE
6. INVINCIBLE
7. DAMNED
8. THE OUTRAGE SEXUALITY
9. TRIGGER
10. UNELMA
11. KALEIDO
12. THIS COMA
13. PHANTOM
14. SORROW
15. PHOENIX
16. MIRRORS
17. THE FATAL HOUR HAS COME
18. ALL THIS I'LL GIVE YOU
19. NEEDLEZ
20. INVADER
21. pulse_
22. EVOKE
23. from the end
-Encore-
1. らせん(acoustic)
2. BE STRONG(acoustic)
3. EVIDENCE
4. DIES IRAE
5. discord number
6. ADORE
-W Encore-
1. MOON
2. A GLEAM IN EYE
3. TIAMAT

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