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LIVE REPORT

lynch.

2013.03.02 @Zepp DiverCity

Writer 荒金 良介

全32曲2時間30分の怒涛のライヴを終え、"次に会うlynch.は過去最強のlynch.だ!(少し間を置いて)好きだー!"と葉月(Vo)は大声で叫び、ステージ袖に消えていった。その自信満々な言葉も、今日のステージですべてを出し切れたからだと思う。今回の"THE FATAL EXPERIENCE #3"は、昨年7月から27カ所28本に渡るライヴハウス・ツアー"THE FATAL EXPERIENCE"、その後に大きめの会場7都市を回るツアー"~#2"の完結編にあたる。さらにこの日を迎えるにあたり、ここ8年の気持ちを背負った総決算的LIVEになるとメンバーは位置付けていた。ならば、こちらも一瞬たりとも見逃さず、目と心と体に焼き付けようと誓い、いざ会場へ。

開演時刻18時ジャスト、PANTERAの「Mouth For War」がSEで流れ、突然場内が暗転して照明が明滅する中、「ADORE」でショウの火蓋を切った。2曲目「Im sick,b'cuz luv u.」でフロアはヘドバンの嵐と化し、葉月のグロウル・ヴォーカル、玲央、悠介の両ギタリストの透明感のあるコーラスとの対比も映え、ヘヴィネスの業火は一気に広がる。それこそ、PANTERAに引けを取らない鍛え抜かれたフィジカルから繰り出される渾身の演奏に背筋がゾクゾクした。もちろん観客を突き放すのではなく、"お手を拝借"と呼びかけてハンド・クラップ、"上に飛べるか?"と声をかけ、フロアをジャンプ大会に導くなど、ステージとの距離を感じさせない密接なコミュニケーションも欠かさない。それも小さなライヴハウスをやり込んできた経験値の賜物だろう。

そして、11曲目「EVILLY」までアスリートのごとくフル・スロットルで駆け抜けた後、先月出たばかりのニュー・シングル「BALLAD」から表題曲と「CRYSTALIZE」を立て続けに演奏した。これは前シングル「LIGHTING」の流れを汲んだメロディ志向の曲調だが、葉月が頭の中で浮かんでいたテーマは"中途半端で掴みづらい曲"だった。あえて楽曲のフレームを固めず、純粋にいい曲を追い求めた楽曲だった。前者はピアノと歌で始まるミドル・テンポの曲調で紫と黄色の照明が楽曲の妖艶さを引き立て、後者は歌謡メロディを押し出したポップさとデジタル調のフレーズが映え、両曲ともLIVEの流れにいいフックをもたらしていた。その後に「BEFORE YOU KNOW IT」、「AMBIVALENT IDEAL」と繋げ、明るさとは対極にある深淵なスケール感を見せる流れも素晴らしかった。そして、再び「MIRRORS」で戦闘モードに切り替わり、全身全霊のパフォーマンスで観客の体力を根こそぎ奪い去っていく。後半に葉月はビショビショの髪をタオルで拭い、笑顔で白い歯を覗かせる場面もあり、今日のLIVEに強い手応えを感じているように映った。

結局Wアンコールまでやり抜き、完全燃焼と言える清々しいLIVEだった。メンバーは3~5月と制作期間に入ると観客に告げていたが、ということは、新しい音源が早いうちに聴けるに違いない。そこには間違いなく今日のLIVEで得た経験も加味されることだろう。メンバー全員で曲作りに励んでいるようなので、どんなサウンドを作り上げてくるのか、今から楽しみで仕方がない。ネクスト・レベルに突入したlynch.の姿を心待ちにしている。

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