COLUMN
G-FREAK FACTORY 打たれる出た釘・打たれない出すぎた釘 第四十三回
メジャーリーグからプロ野球、選抜高校野球の開幕。木が白球を叩く乾いた音、金属が響かす伸びのある音。楽器を使った応援と歓声。それに聴き慣れたアナウンサーの声。芽生えの季節に新たな旅立ち。出会いと別れ。一月に新たな年を迎えたばかりなのに、すぐに新しい期が追いかけて心身を転じる。大きなイベントが各地で各家庭の各人に生まれていく季節。
小春日と雪がテレコで押し寄せるこのドンシャリな時期。人は本能での季節をイメージして生きるもの。きっと今年も猛暑になる夏を経れば、あっという間に山人音楽祭 2024まであと少し。風物詩とサイクルがまたやってくる。俺の暮らしの時間の使い方を思えば、バンド以外の欲求を殺して生きてきたので、もし時間があったら何がしたい?とよく話したものだが、マイナスしかないと絶望だったコロナ禍は、いざ環境が劇的に変わると持て余すほど得た時間をどう過ごせばいいのか思い出せないほどの期間だった。生きているのだから負けっぱなしでタダでは起き上がれない。疫病という皮肉がくれた利というものを一つでも多く手に入れようと、ゆっくり探しながらされど必死にもがいて進めたもの。これが少しずつ実をつけて、コロナが明けた今、また全てが一気に進むようになってきた。振り返ったり想像したり過去と未来の真ん中をあまりにも忙しく生きていると、あたりまえを置き去りに感謝の意識を忘れてしまいそうな毎日だ。そして困ったことに、そのスピード感が恐ろしいほど完全にバグってしまっている俺は、歳を重ねるスピードと自覚がマッチしてない。浮世から監獄のようなこの時代まで、気づけばこんなにも長く現場主義でステージをやっている。そして今でもずっと変わらないのが、半年先や一年後の予定を組もうとしている。この先の状況が?その時の自分の状態が?は関係なく、信頼関係と心意気のもと「口約束」でしかない予定である。いくつか先の季節を見て、ここまでは走ろうと半ば強引にでも奮闘する。そしてその半年先には、またその先の予定をモチベーションに生きていくバンドマンズサイクルは激動である。
バンドのシングルのツアーがファイナルを迎えた頃、山人音楽祭は、今年もまたグリーンドームでの開催を決定した。ドーム自体の老朽化の経費加算や会場アクセスを理由に別都市の近代的な会場での開催も視野に入れて進めてきたが、最終的に今まで繰り返してきた山人らしさの質感を選んだ。ならば、コロナ禍以前の2019年までの3ステージに戻せないものかと。ここにまたチャレンジとストーリーを綴れれば温かいものになると信じているから。今年の9月もまた皆を迎える場所として、最強なバンド仲間と火の玉になりたいと、偉大な山に住む人間は日々もがいている。時間は麻痺してしまいそうだけれども、そんな毎日が本当にありがたい。PEACE & YAH-MAN
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