LIVE REPORT
lynch.
2025.09.15 @Zepp DiverCity(TOKYO)
Writer : 内堀 文佳 Photographer:マツモト ユウ
2024年末、結成20周年を迎えたlynch.がZepp Nagoyaでのライヴからスタートさせた、アニバーサリー・イヤーを盛大に祝うプロジェクト"20th ANNIVERSARY PROJECT"。2つのリテイク・アルバムや数々のライヴ等、計10個の"act"が発表されていたなか、このたびその第6弾"XX act:6 lynch. Presents「BLACK BEAUTY BEASTS」"が東名阪にて実施された。2019年、豪華ラインナップと共に地元名古屋で2日間にわたり行われた同名イベントから約6年半ぶり、パワーアップしての開催となった今回。Zepp DiverCity(TOKYO)でD'ERLANGER、Plastic Tree、KIRITOと剣を交えた"大先輩の背中を追い掛けさせていただく会"(葉月(Vo)命名)にて、その初日を迎えた。
1983年結成と、前回に引き続き全出演アーティストの中で最も長いキャリアを誇るD'ERLANGERが、イベントの開幕を告げる1曲目「BABY」を、最初から最後まで4人で向かい合わせになって披露する。つまるところ、特にkyoはオープニングから観客に背中を向けて歌っていたことになるわけだが、そのロック・スターらしい色気のある歌声と、CIPHERが爪弾く優しいギター、SEELAの揺り籠のようなベース、Tetsuの圧倒的貫通力を持つドラムが一塊になって、もはや大人気ない程にベテランたる所以を見せつけていく。そこから「Bitter Sweet」、「le grand bijoux」と次々にシビれるロックンロール・チューンたちを繰り出し、曲間のブレイクもSEで繋ぐことで、ラストの「LA VIE EN ROSE」まで隙のない、シアトリカルなライヴを展開した。
2019年開催時にはAngeloとして出演し、今年8月下旬には葉月がソロ名義 HAZUKIとしてツーマンを行ったばかりのKIRITO。「CROSS OVER THE WORLD LINE」等、重く激しく叩き付ける楽曲たちで鋭利なシャウトや凄みと甘みを併せ持ったクリーン・トーンを使い分け、瞬く間に会場の空気を支配する。そんなKIRITOと言えば、前回出演時のMCで"集団リンチの会"という言葉を生み出していたが、今回から用意されたバックドロップに書かれたイベント名を確認した上で、この日もあえて"「集団リンチの会」にようこそ!"とユーモア溢れる人柄を見せ、オーディエンスの心を確実に掴んでいく。そこからさらに、繰り返されるリフとKIRITOが踏むステップで聴覚、視覚共に強い印象を残す「Gene」、慈愛に満ちた「瓦礫の花」を聴かせ、多面的な魅力を発揮してみせた。
MY BLOODY VALENTINEの「Only Shallow」をSEに登場したPlastic Tree。彼等の繊細な世界観が表現された「イロゴト」に始まり、有村竜太朗(Vo/Gt)のソロ活動でサポート・メンバーを務める等、親交の深い悠介(lynch./Gt)からリクエストされた「理科室」、屈指のハード・ナンバー「Ghost」等、多岐にわたるサウンドを代わる代わる披露する。特にセットリスト後半はアッパーな楽曲で固められていたなか、最後に選ばれたのは「雨ニ唄エバ」。しとしと降る優しい雨からずぶ濡れ必至のざあざあ降りへ移り変わるような曲の盛り上がりをナカヤマアキラ(Gt)、長谷川 正(Ba)、佐藤ケンケン(Dr)が丁寧に作っていき、黒い傘を片手に持った有村が言葉を紡ぐ光景は恐ろしいぐらいに美しく、どこまでも心を洗い流されるような感覚を味わった。
観ているこちらも畏怖の念を抱く程の、三者三様の圧倒的なパフォーマンスを経て、ついにステージに現れた主催者 lynch.。全く容赦のない大先輩たちに早速食らい付くように、「GALLOWS」で最初からフル・スロットルで飛ばしていく。続く「MIRRORS」では、晁直のクールで軽やかにすら見える叩き姿とは裏腹な、パワフルに疾走するドラムと、浮遊感のある悠介のギターが絶妙に絡み合い、玲央(Gt)がソロで楽曲のテンションをますます上げる。そして「CREATURE」では明徳(Ba)がスラップをバチバチにキメ、場内の熱量はぐんぐんと急上昇していった。
この日出演したD'ERLANGER、KIRITO、Plastic Treeへの称賛の言葉に続き、年末に控える8,000人収容の大会場 東京ガーデンシアターでのワンマン・ライヴについて葉月が語る。"皆さんが好きなバンド、そのまま好きで構いません。今夜僕たちも好きになってください。よろしくお願いします!"3組を追って会場に集ったファンたちも有明に引き連れるべく、派手な照明もよく似合うブチ上げチューン「斑」、葉月の艶っぽい歌声がよく映える「GROTESQUE」、ピアノも織り込みつつテンポを落としてヘヴィに聴かせる「D.A.R.K.」が投下された。
さらにアグレッシヴに「INVINCIBLE」、「OBVIOUS」、「PULSE_」と畳み掛けた後、"漆黒の美しき獣たち"による狂宴の一夜目の締めくくりに新曲「BRINGER」が選ばれた。"このシーンの未来のためにも絶対に成功させたい"と葉月が語った、20周年プロジェクトのラストを飾る東京ガーデンシアター単独公演に向けて全てを懸けて制作したという、lynch.の王道と言えるキャッチーで激しいサウンドに、光をもたらす存在であり続けると誓う詞を乗せた彼等の新たな代表曲。lynch.をはじめ、長く活動してきたアーティストたちが集結したこの日は、"あとどれだけ歌えるだろう? あなたに会えるだろう?/命果て 途切れるまで 闇を奏でよう"の言葉が特に響いたことだろう。
[Setlist]
■D'ERLANGER
1. BABY
2. Bitter Sweet
3. le grand bijoux
4. dummy blue
5. what's yours is mine
6. NOIR-D'amour
7. LA VIE EN ROSE
■KIRITO
1. CROSS OVER THE WORLD LINE
2. Golgotha
3. Discord
4. BALANCE
5. Gene
6. 瓦礫の花
7. NEOSPIRAL
■Plastic Tree
1. イロゴト
2. 恋は灰色
3. 理科室
4. Ghost
5. マイム
6. メランコリック
7. 雨ニ唄エバ
■lynch.
1. GALLOWS
2. MIRRORS
3. CREATURE
4. 斑
5. GROTESQUE
6. D.A.R.K.
7. INVINCIBLE
8. OBVIOUS
9. PULSE_
10. BRINGER
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