INTERVIEW
Fear, and Loathing in Las Vegas
2021.06.25UPDATE
2021年07月号掲載
Minami(Vo/Key)
マネージャー
インタビュアー:村岡 俊介(DJ ムラオカ)
今回は聴かせるところはちゃんと聴かせるとか、メリハリみたいなところは大事にしたつもりです
-次は映像作品について聞かせていただきたいのですが、まずは12月17日に開催された初のオンライン・ライヴ"FaLiLV On-line Live"を収録した『Bootleg 1』について教えてください。初めて無観客オンライン・ライヴをやってみていかがでしたか?
Minami:会場に自分たちとスタッフさんしかいない状態で、お客さんはまったくいませんが画面越しに観てくれているという状況は新鮮でした。ただ最初のほうはちょっと戸惑うというか、目のやり場に困る感じがあって。お客さんのいるライヴだと、後ろのほうのお客さんを見ながら歌ったり、お客さんの表情を見ながらやるのが当たり前になっていたので、お客さんがいる感じでやるのか、カメラ目線でやるのかというところは、少し難しいなと感じていました。でも途中からはライヴとはまた全然別物だなとわかってきましたし、時間が経つにつれ慣れてきたので楽しめました。
-今までもテレビ収録やMV撮影などでは無観客で演奏したことは多々あると思いますが、それはあくまでも無観客ライヴではなく、視聴者に向けてのパフォーマンスだったり、作品制作のためにカメラに向かってプレイしていたりしたと思います。それとはまた違った感覚でしたか?
Minami:俺らが全力でパフォーマンスしているのを観られているという点では、どちらかというとMVや、収録の演奏とかに近いのかなと感じました。普段のライヴではカメラが入っていても、お客さんに向かってやっているところを撮られているような感覚だったので、あまりカメラ目線とかはしてきませんでした。でも配信ライヴでは画面の向こうのファンがリアルタイムで観てくれていることを意識して、カメラ目線でやってみたりしたのが今までのライヴと違うところですね。
-バンド全体としてはいかがですか? "オンライン・ライヴではバンドとしてこういう方向でやっていこう"みたいなやりとりは、前もってしていましたか?
Minami:パフォーマンスの振り切った感じとか、俺らがテンション上がっている感じを見せつけるようにやろうっていうことは話していました。あとはライヴハウスと違って、ひとつひとつのフレーズがすごくきれいな音ではっきりと聴こえるので、演奏に集中するところはちゃんと集中して、メリハリをつけるところはバンドとしてしっかりやっていこうと話していました。
-熱狂して観ているお客さんもいれば、冷静に観ているお客さんもいると思います。そういうところは意識されましたか?
Minami:演奏をしっかりしないといけないのはどのライヴでも当然そうなのですが、小さいライヴハウスのすごい熱気の中で意識朦朧となりながらやるのとはどうしても違います。今までは勢いだけで突っ切るみたいな、感覚的にはそういうライヴもありましたが、今回は聴かせるところはちゃんと聴かせるとか、メリハリみたいなところは大事にしたつもりです。
-ほかにも、オンライン・ライヴをやっていくなかで難しさを感じた点とかありましたか?
Minami:最初は慣れない感じが少しありましたが、ずっと撮られているし、アップでも撮られていたので、どの場面を切り取られても大丈夫なように、表情も気を抜かないようにとは思ってやっていました。
-4月7日に開催された"FaLiLV On-line Live 2"を収録した『Bootleg 2』と比べると、『Bootleg 1』のほうがオンライン・ライヴに特化したステージづくりになっていますね。
マネージャー:ライヴ中のラスベガスはどの瞬間を切り取ってもかっこいいと思っているので、いろんな角度からメンバーを見せたいという気持ちはあります。お客さん全員が最前列でバンドの細かいところまで観ているというイメージで円形にセットして、カメラも普段のライヴでは観られないようなところを見せようと意識しました。
-"その角度から撮るのか"と言いたくなるカメラワークも結構ありますね。
マネージャー:そうですね。ライヴでは観られないところとか、フェスの映像ともまた違う寄りの画などを意識しました。
-特に『Bootleg 1』のほうはほぼ寄りでしたね。使ったのはライヴハウスですか?
マネージャー:Veats SHIBUYAという700人ぐらいの箱で会場自体はそこそこ広いのですが、レールやクレーンなどの映像の機材を入れるとそんなにスペースがなくて、メンバーがパフォーマンスできた範囲としては直径4~5メートルぐらいの円形になっています。そんなに広くないんですよね。
-あえてライヴハウス的な使い方をしていませんね。
マネージャー:そうですね。客席フロアをステージとして使いましたし。1回目はせっかくなので立ち位置も普通じゃないものを、というのをかなり意識して、逆に2回目は同じことをやっても映像として飽きちゃうと思い、普通のライヴに近いような感じにしました。
-カメラワークは『Bootleg 2』のほうが観客を入れてのライヴに近かったですね。照明の明暗も『Bootleg 2』のほうが通常のライヴ感を感じられました。
Minami:『Bootleg 2』のほうはいつものライヴっぽい感じに近づいたような感覚がありました。
-メンバー的にはそのほうがやりやすかったんじゃないですか?
Minami:そうですね。『Bootleg 2』はクラブチッタが会場で、広くて動きもいろいろできたので、そういうやりやすさはありましたが、『Bootleg 1』のあの感じは、あれはあれで面白かったです。
-東京の大きな会場はもちろん、地方の小さい会場でもあそこまで近くからは観られないですし、後ろや頭上からなど、普段のライヴでは観ることのできない角度からのカメラワークもオンライン・ライヴならではで、今まで観られなかったものが観られて、ファンはすごく楽しめると思います。
Minami:表情がよくわかるから、めちゃめちゃアップの映像が使われていました。俺もあとからひと通り見ましたが、TaikiさんやSoがいい表情をしていて、そういうのも普通のライヴで後方で観ているお客さんにはわかりづらいと思うので、そういう良さはあると思います。
マネージャー:Taikiをよく観てほしいです。Taikiの完成度がすごいんです。昔の玉置浩二さんを参考にしています。
-そうなんですか(笑)? 玉置浩二さんはわかりますが、気づきませんでした。
マネージャー:ジャケットの肩パッドが3枚入ってるんですよ。それはちょっと言っておきたいなと(笑)。
-まずこれ読んだ方は玉置浩二をググるんでしょうね(笑)。
マネージャー:メイクしてる頃の玉置浩二さんです。
-伝わるかな(笑)。
Minami:調べてほしいです。
-僕ぐらいの上めの世代の方にはしっかり刺さると思いますが、若い方もそこは要チェックですね。先ほどご自身たちでも映像をチェックしているとおっしゃっていましたが、MV撮影以外で、メイクや服装もばっちりキメた自分たちを、そこまで寄りで冷静に観る機会は意外に今までなかったのではないでしょうか。
Minami:ライヴを通して寄りの映像がここまで多い状態で観るのは初めてでした。
-『Bootleg 1』を観て思うことはありましたか?
Minami:ステージングや、フロント全員で演奏を合わせるところはもっときれいに合わせよう、というのはありました。でもフロントでどういうパフォーマンスをするかみたいな話は結構していて、"ここは俺が手が空いていて動けるから動く"とか、"ここは誰かが暴れるから自分も暴れる"とか、役割分担をしています。カメラもそのとき目立っている人を映してくれているので、見返すとそういう部分がわかりやすくなっています。
-マネージャーさんは『Bootleg 1』を観て新たに気づいた点はありましたか?
マネージャー:映像をコマ送りにするとヤバいシーンがいっぱい入っています。頭を振ってるときにメンバーがすごいヤバい顔になっているのでぜひそれを探してほしいです。
-それをやらないでくれではなく、それを楽しんでほしいと(笑)。
Minami:コマ送りは映像作品ならではの楽しみ方ですね。
マネージャー:そういう瞬間も実際に存在していて、そこも含めてぐちゃぐちゃになって、テンション上げてるのがかっこいいと思うんです。それがよくわかるようになっています。メンバーのヤバ顔はぜひとも探してほしいですね。
-そういうところも含めてラスベガスを楽しんでほしいということですね。
マネージャー:そこが"全力"というところに繋がっている部分なのかなと思います。
Minami:かっこつけている部分もありますが、どちらかというと表情も気にせず全力でやってるところがかっこ良さだと思ってます。
マネージャー:もうひとつこの作品でオススメしたいポイントがあるんですが、ライヴの本編が終わってエンドロールにピアノの曲が流れるんですよ。このライヴをやる少し前、エンドロールを作っているときに、俺とMinamiでピアノのトラックにTaikiの掛け声を気づくか気づかないかぐらいの大きさで薄っすら入れておいたんです。で、ライヴが終わって、映像作品としてリリースするために編集して、最後メンバーも確認する段階になって、このときには俺はもうすっかり忘れていたのですが、Taiki本人が"エンドロールにギターのノイズが入ってるから消してほしい"って言い出したんですよ。で"ギターのノイズなんか入ってたっけ?"と思ってよく聴いてみると、そのTaikiの掛け声だったんです(笑)。こちらもぜひチェックしてみてください。
-ではコマ送りもTaiki君の掛け声探しもやってみますね(笑)。『Bootleg 2』は『Bootleg 1』をそのままアップデートしたものというより、オンライン・ライヴという括りでは一緒ですが、テーマが異なりますね?
マネージャー:配信ライヴは何回かやるうちにお客さんも飽きてしまうだろうなと思っていたので見え方や環境を変えたほうがいいなという意味で、メンバーの立ち位置や演出の仕方、もちろんセットリストも変えました。『Bootleg 2』のほうはライヴの延長ということを意識しました。
-2回目のオンライン・ライヴということでより意識した点や改善した点はありましたか?
Minami:どちらかというと環境の違いを意識したというか、『Bootleg 1』のときはカメラがすぐ近くにあったのですが、『Bootleg 2』のときはカメラがフロアにいたので、広くなってステージングもできることが増えたぶん、ステージを広く使おうと考えていました。
-普通の有観客ライヴと同じような撮影の仕方でしたね。
Minami:なのでライヴをやっている感覚でやりました。でも『Bootleg 1』でも『Bootleg 2』でも、演奏力がしっかりしてないと説得力が欠けるというのは反省点というか、課題としてありましたね。
-有観客でもカメラが収録に入っていることはあったと思いますので、『Bootleg 2』のほうが比較的緊張感や違和感はなかったのではないでしょうか?
Minami:そうですね、始まってしまえば緊張感はライヴとそこまで変わりませんでした。
-セットリストはそれぞれ20曲ずつある中で、同じ曲が5曲収録されています。バンド的には被せないでも十分組むことが可能かと思いますが、そうしなかった理由を教えてください。
マネージャー:『Bootleg 1』だけを観た人にも『Bootleg 2』だけを観た人にも、定番の曲や新曲は見せたいという意味で同じ曲を数曲入れています。『Bootleg 1』は王道だけど満足度の高いセットリストになるよう意識して、『Bootleg 2』はわりとマニアックなところも意識しています。ワンマンなどのセットリストは俺が考えることになっていて、ライヴをやるなかでメンバーの体力的にキツそうなところがあれば曲順を入れ替えているのですが、基本的にはお客さんの満足度を意識して考えていますね。
-SNSでのお客さんの反応はいかがでしたか?
Minami:ライヴ中にコメントを読み上げるというのが。
-あれは通常のライヴでは絶対にできないことですね。
Minami:そうですね。俺は直接画面を見ていなかったのですが、Soがコメントを読み上げると"今直接観てくれてるんだな"と実感できて、オンライン・ライヴでしかできないことでいいなと思いました。そのあとのアーカイヴではコメントが見られなかったので、全部見たかったなという気持ちもありましたが、配信ライヴは配信ライヴでお客さんは楽しんでくれているというのがわかりました。