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INTERVIEW

lynch.

2017.11.06UPDATE

2017年11月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-とはいえ、「CREATURE」においては間奏で瞬間的にスラップ・ベースが目立ってくるシーンもありますよね。つまり、大事なのは緩急ということなのでしょうか。

葉月:あぁ、あのスラップのところだけは逆に思い切りベースのボリュームを上げてあります。それと、今回のベースに関する話題としては3曲目の「THE WHIRL」がちょっと面白かったんですよ。これは今回で録るのが3回目で、前に録ったのはちょうど10年前だったんですね。

-2007年に発表されたフル・アルバム『THE BURIED』には、「the whirl」という表記にて収録されていましたよね。

葉月:えぇ。この「THE WHIRL」のベースのテイクは、そのときの「the whirl」と同じベースを使ってます。音質だけ少し作り直しましたけど。

-まさかの事実です。それはまったく気づきませんでした!

葉月:いやほんとにそこは不思議で、歌とか他のパートはすべて新録してあるせいか、仕上がってみると意外に違う響きで聴こえてくるものなんですよね。いずれにせよ、このベースって弾くのがものすごく難しいので、ここは思い切って若者に任せて良かったです。10年前の自分が頑張ってくれてます(笑)。

-先ほど、極端に言うとベースはギターの引き立て役という旨のお話がありましたが、かく言うギタリスト陣からすると、今作のレコーディングにおいて、特に注力したのは具体的にどのような事柄だったのでしょうか。

玲央:1曲目の「BLØOD」と2曲目の「CREATURE」はライヴでやったときの光景が容易に想像できたので、音源とライヴの差を極力少なくするように気をつけました。それと3曲目の「THE WHIRL」に関しては、録り直しという前提があったんですけど、2007年以降もずっとライヴで演奏してきた曲なので、その中で変化してきた部分を"最新版"としてここでかたちにしたものになります。レコーディングだから特別なことをしよう、というのは、今回は一切なかったです。

悠介:最初は「BLØOD」がリード曲になると思っていたのもあって、この曲に関しては耳に残るようなフレージングを考えていくように心掛けていたところがありましたね。最近はキッズというか、男の子たちのファンも増えてきてくれているので、楽器をやっている子たちもいるだろうなと考えつつ、彼らが聴いて"これをコピーしたい!"って思えるようなギターを弾いていくようにしたんです。......けど、そのあとリード曲は「CREATURE」になったので(笑)、両方ともそういうところを意識したかたちになりましたね。今まさに幕張に向かっていくなかで、少しでも多くの人たちのことを"引っ掛けたい"という気持ちが強かったんです。

-また、多くの人たちの心に引っ掛かるであろうという意味では「CREATURE」の歌詞も訴求力に溢れたものとなっているように感じます。この詞は、曲調に呼ばれて生まれたものだったのでしょうか?

葉月:曲調というよりは、メロディかな。まず、「BLØOD」の方は端から日本語が合わないと思ったので英語にしたんですよ。「CREATURE」はメロに歌謡的な匂いがあって、日本語を使って飾りつけをしていきやすかったので、遠慮なくゴスの血......というか、いわゆるVの血を思い切り注入させてもらいました(笑)。

-退廃的にして背徳的で刺激的。この詞からはlynch.が貫いてきた美学をも感じます。

葉月:こうして激ロックに載せてもらったり、今度の年末にはROTTENGRAFFTYの"ポルノ超特急2017"(※12月23日、24日に開催されるROTTENGRAFFTY主催イベント)にも呼んでもらったりしているんですけど、そういうところに出ていけるようなバンドで"血の薫りにキミを探している"って歌うバンドは、たぶん他にはいないと思うんですよ(笑)。そこは本当にもう遠慮なく、lynch.ならではの色としてここからも変わらずに醸し出していきたいですね。別にそうすることでダサくなっちゃっている気もまったくしないし、カッコよくできているつもりだから、それでいいんです。

-ひとつには、葉月君の声と歌の素晴らしさによってこの詞世界が昇華されているところも多分にあるかと思います。

葉月:変にいやらしくならないように、ということは「CREATURE」に限らず常に心掛けているところはありますよ。キザにしたいわけでもなくて、どちらかといえば危ない匂いを漂わせる方向に持っていきたいです。そのあたりは、曲を聴いてもわかるでしょうし、MVを観てもらってもより伝わるんじゃないでしょうか。

-攻撃的で先鋭的なだけではなく、上品な色気や艶(つや)っぽさも兼ね備えているところはlynch.ならではの大きな魅力ですよ。

葉月:一時期は、そこを自分で否定していたこともありましたけどね(苦笑)。そういうものはもう要らない。歌詞も全部英語にしよう! ってやってはみたこともありましたが、今となってはもうそんなことは気にならなくなりました。むしろ、長所だと感じてます。

-つまり、そうした長所を最大限に活かしながら作れた今作『BLØOD THIRSTY CREATURE』は、総合的にみて作曲者である葉月君としても思っていたとおりのものが描けた、という実感を得られているのですね。

葉月:大変気に入ってます(笑)。『SINNERS-EP』のときに引き続き、トラック・メイカー Яyoの優秀な仕事ぶりもあいまって、欲しい音をそのままかたちにできました。

-そして、そんな今作には"BLØOD THIRSTY CREATURE"なるタイトルが冠せられました。「CREATURE」と「BLØOD」の曲名がひとつの世界を構築していますが、これはやはり両曲名をもとに考案していったものだったのですか?

葉月:曲タイトルはそれぞれ先に決まっていたんですけど、まずはシングルのタイトル以前に、今やっているこの秋冬ツアーのタイトルの方を決めなきゃいけなかったんですよ。それで、新曲をふたつ組み合わせた"BLØOD THIRSTY CREATURE"を出したんですね。そのあと、今度はCDのタイトルを決めなきゃとなったときに、普通にリード・チューンのタイトルを"CREATURE"として出すのは違うなというのがあったんですよ。なぜかっていうと、出す方の僕ら側としては、今回の数量限定生産盤につく、夏の日比谷野外音楽堂公演を全編収録したBlu-rayをメインに考えているところがあるからなんです。

-通常盤、さらにはノーマルDVDつきの初回限定盤も同時に出るそうですが、バンド側としてはあくまでもBlu-rayつきの数量限定生産盤を推したいわけですね。

葉月:そう。だから、この『BLØOD THIRSTY CREATURE』はシングルでありながら、ただのシングルではないんです。価格的なことで言えば、Blu-rayの方は高いですけどね。でも、これはライヴ映像やMVも含めた複合的な"ひとつの作品"なので、そこには"CREATURE"ではなく"BLØOD THIRSTY CREATURE"と名付けた方が相応しかったんです。

-この音を聴き、MVや野音のライヴ映像を観ることによって、受け手側も現在続行中の"TOUR'17「THE BLØODTHIRSTY CREATURES」"、そして来年3月11日に幕張メッセ国際展示場にて行われる"lynch.13th ANNIVERSARY-Xlll GALLOWS-"への期待を、大いに募らせることができそうですね。

葉月:そうなってくれればいいなと願ってます。