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LIVE REPORT

HEY-SMITH

2016.08.09 @赤坂BLITZ

Writer 荒金 良介

YUJI(Ba/Vo)、イイカワケン(Tp)、かなす(Tb)が正式加入し、新生HEY-SMITHとして作り上げた4thアルバム『STOP THE WAR』は、表題に明らかなようにメッセージ性を強めた作風へシフトした。それと同調するように硬質なメタル・リフが増え、これ以上なくシリアスな色合いを深めたサウンドが実に印象的だった。その作品を引っ提げてのレコ発ツアーは、47都道府県62公演という凄まじい本数である。29本目の今日はゲストにMAN WITH A MISSIONを招き、初っ端から満杯の場内を焚きつけていく。歌とラップ、バンドとDJの対比際立つミクスチャー音で、シンガロング、ハンドクラップ、ジャンプと観客を意のままに操るキャッチーな楽曲を連発。ラストの「FLY AGAIN」では会場から多くのMAN WITH A MISSIONのタオルが掲げられる熱い磁場を作り上げていた。
 
そして、ついにHEY-SMITHの出番がやって来た。猪狩秀平(Gt/Vo)を先頭にメンバー6人がぞくぞくと登場。1曲目の音が出た瞬間、どっしり重心が低くなった演奏に加え、上半身裸の満(Sax)、イイカワケン、かなすによる息の合ったホーン・セクションは会場の空気を鋭利に切り裂く。昨年と比べても、バンドの結束力は段違いで上がっている。個々の演奏は磨き抜かれ、それがひとつの塊と化したグルーヴに興奮は収まらない。以前と別物とまでは言わないが、新しく生まれ変わったような"HEY-SMITHサウンド"に驚きを禁じえない。しかも従来のファンも魅了しながら、より多くのリスナーを獲得する骨太のロック感も備わっている。
 
「Skate Or Die」と過去作の曲も挟みながら、"8月9日(※長崎原爆の日)にこの曲を歌う意味"と猪狩が言い放つと、新作の表題曲「Stop The War」を披露。ザクザク刻むリフが猛烈にかっこよく、音源以上の爆発力で場内は騒乱状態だ。気づけば観客は拳を上げ、シンガロングする光景が眼前に広がっていた。勢いやノリだけではなく、聴き手と心の深い部分で通じ合っている。曲に託した演者の気持ちやメッセージが伝わっているんだなと痛感した。さらに曲間でTask-n(Dr)が軽快なビートを叩いたり、また地元・大阪の先輩バンドであるKNUCKLESのカバー「Radio」においてはホーン、ドラム、ベースとソロをリレー形式で繋ぐパートもライヴで抜群に映えていた。これまで以上に細部にこだわるエンターテイメント性に優れたステージングも素晴らしい限りだ。また、ライヴ中に猪狩がYUJIをイジる和やかな場面もあり、バンド内にいいムードが流れているんだなと感じた。
 
アンコールでは名曲中の名曲「DRUG FREE JAPAN」も炸裂し、フロアは大沸騰の盛り上がりを記録。YUJIは下を向き、全身全霊でベースを搔き鳴らす姿にも目を奪われた。そしてファイナル・シリーズ5本に加え、今年はバンド結成10周年のタイミングもあり、ツアー・ファイナルは12月3日に大阪府民共済SUPERアリーナにて開催される初のワンマン・ライヴ(※チケットは赤字覚悟の感謝価格3,939円!)の開催も告知され、"俺らはもっとかっこよくなるから、お前らもかっこいいことをやってくれ! 何でもいいから!"と猪狩が観客に熱い言葉を投げかけるシーンもあり、より一層逞しくなったHEY-SMITHを見た気がした。
 
今日のライヴを観る限り、このツアーで彼らはもっともっとバンドとして成長を遂げるに違いない。すべてをなぎ倒して突き進む破壊力漲る音色に圧倒されるばかりだった。今のHEY-SMITH、本当に欠点が見当たらない凄みを放っている。

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