INTERVIEW
オメでたい頭でなにより
2024.01.22UPDATE
2024年01月号掲載
Member:赤飯(Vo) 324(Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
すべて脱ぎ捨てて、お互いにまた戦っていこうぜという、そんな決意の表れです
-メッセージということでは、今回の324さんの曲「地下室の王」もそうですね。パーカッシヴなギターが肝にもなっていますが、これはどういうところから作り上げていった曲ですか。
324:誰もやったことがないようなことをやりたいっていうのは、表現者としてずっとあるんです。この曲は自分がバンドの中でできることと、自分が新しく挑戦したいことをしっかりやろうと思って作った曲ですね。展開としてはダンス・ミュージックで、サビじゃなくてドロップが来るみたいな感じで。そういうビートをバンドでやっている人たちはいるんだけど、それをスラム奏法というパーカッシヴにアコギを叩く奏法と、バンドとを融合させるというのがまずひとつで。型としてはダンス・ミュージックを踏襲して、それをバンドに落とし込むというのがもうひとつ。あとはドロップでボトルネックを使ってブルージーなサウンドを出しつつ、それをヘヴィにするというのもアイディアとしてあって、ひとつひとつそういう新しいことをやりたい、この世にない音を作りたいというところでスタートした感じでした。
-となると、ライヴで324さんがめちゃくちゃ忙しくなりそうな曲ですね。
324:どうやってやろうかなというのはあるんですけどね。作った段階ではライヴのことは正直考えてなかったです。たぶんアコギをスタンドで立てて、エレキと持ち替えながら弾いたりするのかなぁっていうのは、なんとなく思いつつで。
赤飯:これは完全に、ライヴは324劇場になると思うので。そこにどうやって乗っかっていこうかなというのはワクワクしてますね。橘高(文彦/筋肉少女帯/Gt)さんが好きなので、アコギもエレキもバキバキに弾き倒すみたいのが、うちのバンドで起こるのが楽しみなんですよ、この曲は。
324:たしかにね(笑)。
-歌詞についてはどうですか。
324:今回のアルバムだけではないんですけど、やっぱり3人(赤飯、ぽにきんぐだむ、324)それぞれ表現したいことが違って。ぽにきは攻撃的な良さがあったり、赤飯は背伸びしてない等身大の感じを出していて、俺はちょっと主張があってそこにウィットを混ぜたりと、それぞれスタイルが違うんですよね。でも3人の特徴ややりたいことをしっかり加味したうえで、同じ方向を向くという歌詞作りをしないと、バンドとしての一体感や爆発力がないなって思っていたので、歌詞を書くことに関しては、俺のやれる領分の中でそれができるんじゃないかなというのはありました。なので、赤飯だったらこういうことを言うかなとか、ぽにきだったらこう表現するかなとか、あとは最近ヒップホップが大好きなので、ラップのリリックとして挑戦したくて、この曲の上でやろうというのはありました。
-これまでの324さんの歌詞はもうちょっと内省的なイメージがあったので、この曲の感じは意外だなと思っていたんですが、そういうことだったんですね。
324:そうですね。自分の表現というよりは、自分が赤飯とかぽにきだったらという目線でしたね。俺自身のメッセージというよりは、俺が想像するふたりの熱い想いみたいな(笑)。
赤飯:なので歌もすごくしっくりきましたし、めちゃくちゃやりやすかった。
-話を聞いていると、今回は曲作りがかなり順調だったんだなと思いますが、"これは思わぬ展開をしていったな"という曲はあるんですか。
赤飯:「チン♂アゲ⤴交渉中」とかはそうかもしれない。
324:これは俺がずっと持っていたネタで。楽曲制作会議のときに、こういうネタがあって、こういう曲を作りたいって言って、タイトルは"チン♂アゲ⤴交渉中"だって書いたんです。そしたらタイトルだけでみなさん爆笑でして、早く作れと。
-とても、オメでたい頭でなによりらしい曲です。
324:早速デモを作ってみんなに聴かせたら意外と反応が良くなくて"あれ?"ってなって。そのデモでは、完成形がこういう感じだっていうのがそこまで伝わってなかったんですよね。なので改めて、自分で仮のヴォーカルを入れるときも、赤飯さんがやってるような女声を加工して出したり、キャッキャ言ってる声とかも頑張って入れたりして、歌詞はこういう感じで、としっかりやったうえで出したら"なるほどこういうことね"と納得が得られて(笑)。紆余曲折はあったんですけど、結果、ちゃんと俺が思い描いたものがしっかり伝わったなと。
-そしてシングル曲にもなるという。
324:そのときに学びましたね。やりたいことがあるなら、ある程度作り込んだデモにしないといけないなというのは、反省点でありました。
-ライヴでもすでに披露してると思いますが、手応えはどうですか。
赤飯:めちゃくちゃいいですね。初めてやったのが8月29日の下北沢シャングリラ("大寿祭 ~結成7周年東名阪ツアー~")で。初見でも"なんだこの曲"って引っ掛かってくれて、ライヴのあとのSNSの反応を見ていても"あのお賃金の曲めっちゃいい"って言ってもらえたりしていて。もうフロアではみんな、笑いながらぐるぐる回ってますね。もともと、いろんなネガティヴなものもそうやって消化できたらというところで始まっているバンドだし、自分たちのモチベーションや目的をわかりやすく形にできた曲なので、良かったなと思うし。なおかつ、この時代、お金の問題に関心のない人なんていないじゃないですか。より多くの人にそんな気持ちを味わってもらえる曲っていう意味では、すごくいい着眼点だな、さすが324先生だなと思います。
-しかも2023年らしいタイムリーな曲にもなっていますからね。
赤飯:今年の世相を表す漢字も図らずとも"税"ですからね。ドンピシャやなっていう。うまいことなってますわ。
-今回、アルバム・ジャケットはプロレスのリングですね。これは、戦う場所に帰ってきたよという意味合いですかね。
赤飯:そうですね。戦う場所、なおかつリング上にプロレスのマスクがありますけど、マスクを脱ぎ捨ててという、このマスクがダブル・ミーニングになってますね。これは我々だけじゃなくて、ライヴに来てくれる人にも気持ち的にリンクしてほしいなという思いもあって。すべて脱ぎ捨てて、お互いにまた戦っていこうぜという、そんな決意の表れです。
-2月からは全国ツアー"ワンマンツアー2024 「今 いくね くるね 4」"がスタートします。熱いライヴの現場が戻ってきたなかで、さらにこのアンセミックなアルバムを携えてのツアーということで、気合が入るのでは。
赤飯:全国14ヶ所というツアーはまぁ普通なんですけど、今回は全箇所で昼公演と夜公演のふた回しでやるんですよ。なので、全14ヶ所28公演のツアーなんですよね。どうかしてるぜっていう。10月に秋田でワンマン"大寿祭(大寿祭 ~強襲!来訪神~)"をやったときに、せっかく秋田に行くし2回やろうぜってセットリストをガラッと変えて、昼/夜公演でやってみたんです。そしたら結構、昼と夜でお客さんの顔ぶれが変わったんですよね。SNSでアンケートを取ってみたところ、お昼しか行けませんという人も50パーセントくらいいて、なるほどそういう人たちもいるんだなと。じゃあやるわっていうことで、このツアーでもセットリストをガッツリ変えて、昼/夜公演で回ろうと。何より、楽しくてしょうがないので。