INTERVIEW
オメでたい頭でなにより
2018.12.27UPDATE
2019年01月号掲載
Member:赤飯(Vo) ぽにきんぐだむ(Gt/Vo) 324(Gt) mao(Ba) ミト充(Dr)
Interviewer:吉羽 さおり
-でも、ゆったりした曲を作ろうってなって、ラウドロック・バンドは普通この曲に着地しないです。
324:最初はロック・バンドが作るようなそういう曲を作ったんですけど、"これ、マジでなんも面白くない"ってなって(笑)。俺が"これじゃダメだと思うんだけど"って言ってみんなに聴かせたら"たしかに"ってなったんです。そうなったとき、たまたま90年代J-POPの黄金期のライヴ映像を観たんですよね。それで、アルバムの中で突然こういう90年代J-POP的なイントロが流れ出したら、超面白くない? っていうところから作り始めて。
赤飯:もともと僕はそういうのが好きやったんですよね。じゃあ、徹底的にやってみようかと。
324:あとは、僕の作家としての腕の見せどころで。"90年代J-POPあるある"をどう拾っていくかだったんですね。シンセの音色とか音の作り方とか、カウンター・フレーズの入れ方とか、そういうところをめっちゃこだわって作ってます。
赤飯:歌詞も、僕、脱出ゲームがすごく好きなんですけど、もし90年代のJ-POPだったら脱出ゲームをテーマにこういうふうに書くんじゃないの? っていうイメージで書いてます(笑)。
mao:で、2番も同じことしてたら面白くないよねっていうので、そこからライヴ・バージョンにしているという。
赤飯:ちなみに、完成したこの曲を聴いてるうちに、やたらいい出来やなと思って、フル尺の歌詞を書きたくなってまいました。結果、2番の歌詞を15分くらいで書きました。2番の歌詞めっちゃかわいいんですよ(笑)。
ぽにきんぐだむ:2番も歌詞カードには載るんですけど、実際の音源としては収録されてないんですよ。
赤飯:もしかしたら今後、ライヴでいきなりフル尺をやる可能性はゼロではないですけどね。
mao:"TVサイズ"とか"妄想LIVE Ver."とか、もうなんでもありですね。
ぽにきんぐだむ:なかなか姑息なやり方を見つけてしまいましたね。今までだったら、こういう曲も途中からだんだん重いサウンドになるとかをやりがちだったんですけど、それは面白くないし、もう飽きてきたからって。
このジャンルだからこういう曲を作らなきゃいけないっていうものが全然ない
-エンジニアさんは大変ですよね。ラウドな曲とこういう90年代J-POPのような曲を1枚のアルバムで両立させるって、難しいんじゃないですか。
ぽにきんぐだむ:言ってましたね、エンジニアさんも。どっちに寄せるべきなのかってすげぇ悩んでいて。
324:マスタリングどうしようかってね。でも、この曲はこの曲で浮いていてもいいかなって思ったんです。
赤飯:うん。なんかもう"ある家族"のプレイリストみたいになっているので。
-面白いです。インディーズ時代から作品も聴いて、こうして取材もさせてもらっていますが、改めてバンドの底知れなさがあるし、一番挑戦している作品だなと思います。
赤飯:嬉しいです。こんなに自分の音源をリピートして聴いてるのも初めてなんです。
ぽにきんぐだむ:メンバーみんなそれぞれ、ポップスが好きな奴もいれば、ラウドが好きな奴もいるし、アイドルが好きな奴もいて、各々の好きなものを集めたプレイリストになっただけなのかなって思う。オメでたい頭でなによりって、このジャンルだからこういう曲を作らなきゃいけないっていうものが全然なくて。ライヴで足りないものとか、演出で何かやりたいこととか、今思ってるものとか、好きなものを収録したらこうなったのかなっていう。無理してる感じはなかったですね。
赤飯:たしかに無理してる感じはない。自然にやったらこうなっちゃったので。
ぽにきんぐだむ:それがオメでたい頭でなによりらしさでもあると思ってる。
-シングルもそうですが、これまでって、季節モノなど、ある種のテーマや縛りがあるなかでやっていたと思うんです。今回そういうものを取っ払ったところでやってますよね。
ぽにきんぐだむ:そうですね。ただ、それでも必要なものを考えてはいるんですよ。「終わらない恋からの脱出(妄想LIVE Ver.)」なら、"ワンマン・ライヴの中盤で手拍子ができるような曲"とか"ゆっくり休める曲"という縛りはつけていたりするので。ただ、縛ったらこんな曲になっちゃいましたけど(笑)。あとは、"ラヴ・ソングみたいな曲を作ろうね"とかそのくらいの縛りでしたね。
赤飯:ラウド・バンドとしてのスタイルは貫いてやってきたんですけど、もともと僕がいろんなジャンルが好きなので、今こそ僕のやれることを出せるタイミングやなと。ここぞとばかりに出しちゃいました。単純に好きなことをやれるのは気持ちいいですね。
-こういう曲をやりたいっていうのを具現化できちゃう作曲家もいるからいいんですよね。そしてメジャーに来てさらに、これだけ幅広いことをやっても許されるバンドになっているなと思う。
赤飯:しかもそれを、自分たちがやっているバンドの看板を掲げながらできるというのが、僕としては最高の環境やなと思って。
324:大人も、いいよって言ってくれるからね。
赤飯:ふざけんなってなるもんな、普通は(笑)。
mao:うん、誰か止めるべき。
ぽにきんぐだむ:誰も本当に止めないですからね。
赤飯:チームとして同じベクトルでできているんだろうなという感覚は出てきているので、引き続きこのテンションで走っていけたらなという決意の1枚であります。
-オメでたい頭でなによりのことをアニメのタイアップ曲で知ったり、フェスで知ったりと、今やファンの裾野も広がっていると思うので、アルバムとしてまた、いろんな入り口があるのがいいですね。
赤飯:最近は、親子でライヴに来てくれる人も多いので、そこに響いてるのが嬉しいんですよね。"ラウドをお茶の間に届けたい"って最初のころから言っていたんですけど、それができ始めているので。
324:これからアルバムの中で毎回1曲くらい「終わらない恋からの脱出(妄想LIVE Ver.)」みたいなポップスに振り切った曲を入れ続けて、ゆくゆくはその曲だけでライヴやるとかもいいね。
ミト充:オメでたい頭でなによりのポップ・ベスト・アルバムを作るとかね(笑)。
赤飯:ありだな。
ぽにきんぐだむ:こういう何気ないことも、冗談で言ってるんじゃなくて結構本気だったりもするので。本気で実現させようとするんですよ。
赤飯:本気ですね。そうなったとき、いつまで激ロックさんで扱ってもらえるのか(笑)。