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INTERVIEW

オメでたい頭でなにより

2018.12.27UPDATE

2019年01月号掲載

オメでたい頭でなにより

Member:赤飯(Vo) ぽにきんぐだむ(Gt/Vo) 324(Gt) mao(Ba) ミト充(Dr)

Interviewer:吉羽 さおり

-何があったんでしょう?

赤飯:僕もわからないです。でも途中で、ピッとツボを押されたんですよね。ピッということでは、7曲目に「ピ」という曲があるんですけど。この曲は、結婚式=オメでたいよねっていうことで、結成当初くらいに"♪チャーンチャーチャ、ドゥォーン!"みたいな"婚礼ブレイクダウン"を入れた曲を作ろうって言って、そのパートは仕上がっていたんです。それで結婚ソングを作っていたんですけど、でもこれを本当に式場で流すのかってなったときに、やめようってなって。

-流すつもりだったんですね。

赤飯:ちゃんと生活に寄り添った、みんなに使われるものを作りましょうよっていうところで、324からすごくきれいでかわいい結婚式のデモが上がってきて。これにどんな歌詞をつけようかと、僕とぽにき(ぽにきんぐだむ)で7時間×3セットくらい向き合ってやったんですけど、うまいことできなかったんです。

-式場で流してもらえるような"いい曲"を書くのが難しいと。

赤飯:そう。"何を書くんや?"ってなって。で、何度か書いたもののできずに、これはしばらく寝かそうとなったんです。でも寝かせているうちに期限が迫ってきて。ある日僕が、ピンと閃いてそこから広げていったり、自分が過去にストックしておいた歌詞とかから"これが合うな"というのも集めてきたりしたら、すごくきれいな形になったんですよね。

-はい。最後まで正統派なラヴ・ソングでびっくりしました。

赤飯:やっちゃいましたね(笑)。

324:この曲はタイトルが"ピ"なんですけど、まずタイトルあたりでいったんボケておかないとなんか違うんじゃないかってなって。

ミト充:じゃないと、オメでたい頭でなによりがやる意味がないからね。

赤飯:最初は普通のラヴ・ソング的なタイトルを付けていて。でも、このままこれを世に出したらこのバンド終わるぜってなって(笑)。

324:"メジャーに行って変わった"、"守りに入ってるの?"と言われがちな感じだよね。

赤飯:それでタイトルでだいぶ捻くれました。これってなんの"ピ"かわかります?

324:最近の若者とかが言う"彼ピッピ"とか"好きピ"の"ピ"です。なので、若い子が聴いたら──

赤飯:なるほど、その"ピ"かっていう。

-なるのかな(笑)。一方で「HELL"O"」はネガティヴな、心の闇の部分だけでできているような曲ですね。こういった曲もこれまでのオメでたい頭でなによりにはなかったタイプです。

赤飯:今まで我々は、歌で楽しい、幸せだって言ってきたんですけど、実は僕はこの世は地獄だと思っていて。オメでたい頭でなによりは、もともとはネガティヴをポジティヴに変換してアウトプットするバンドというコンセプトがあるんですけど、僕らがネガティヴを内側に持っていることって、まぁ伝わらないんですよ。ライヴでも、長い尺でMCで話すことで初めて、そういう思いがあるんだなという感じになるんです。曲だけとか、短い尺のパフォーマンスでそれを伝えきることが難しくて。本当に病んでいたり、つらいなという心境の人だったりが我々の曲を聴くと腹が立つらしいんです。

-すこぶる明るく聞こえちゃうんですね。

赤飯:自分の暗い部分をさらに浮き彫りにされる感覚というか、"うるせぇな!"って思っちゃうことがあるらしくて。僕、その話を聞いたとき本末転倒やなって思っちゃったんですよ。そもそも、言葉にできひんモヤモヤした思いとかを代弁することが、我々が一番やらなあかん仕事なのに。それもできずに、やれ楽しいどうのこうのって言っていても、何も意味がないなって。うちらはネガティヴな部分がないわけじゃなくて、それをポジティヴに変換してるんですけど、変換する前の部分も正直に、素直に見せていくことも必要なんやなって、改めて気づかされました。今回はフル・アルバムで、より大枠で見せることができるので、ネガティヴに寄ったものも配置することができるなと思ったし、あえて今回こういう要素を出していこうって。

-これまではネガをポジに転換して書いてきた経緯があるわけじゃないですか。逆にネガティヴなものをそのまま書くのは、作業として苦しい、難しいというのはないんですか?

赤飯:逆に、素直になれた感じがありますね。

324:普段無理してるから(笑)。

ミト充:そういうこと言わない!

mao:俺は上がってきた歌詞を見て、一発でいいなと思ったよ。

赤飯:ほんとに? でも今回メンバーの赤ペンが入らなかったんですよ。いつも赤ペンで、ボロクソ書かれるんですけど(笑)。でも、ほんとにしんどいときって、そのしんどさに寄り添ってあげなきゃいけないし、そこで"頑張れ、元気出して"って言ってもしゃあないから、しんどい気持ちに寄り添ったうえで、少し気持ちが上がってきたところで、さらにうちらが音楽で押し上げるっていう。そういう過程をもっと一緒に共有できたらいいなと思ったので。

-なるほど。

赤飯:オメでたい頭でなによりはラウドロック・バンドなんですけど、ガチガチのラウドロック・バンドとは殴り合えないなっていうのはあるので。でも、僕らはそれを弱点とは思っていなくて、だからこそできることがあるなと思うんです。例えば、めっちゃ甘いスイーツにちょっと塩を入れると甘さが引き立つってあるじゃないですか。今回のアルバムの12曲では、「ピ」とか「終わらない恋からの脱出(妄想LIVE Ver.)」が、めっちゃいい塩だと思っていて。最高級の塩を用意してやろうという気持ちもあったんですよね。より他のラウドな曲を引き立てるための。