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INTERVIEW

lynch.

2018.07.06UPDATE

2018年07月号掲載

lynch.

Member:葉月(Vo) 玲央(Gt) 悠介(Gt) 明徳(Ba) 晁直(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

-では、「RENATUS」についてもお訊きします。悠介さんは、この曲に対してどのようなヴィジョンを持ちながら作られましたか。

悠介:これは、タイトルが再生を意味する言葉なんです。要は、『Xlll』が5人に戻って最初のオリジナル・フル・アルバムであるということを踏まえながら作ったものでした。

-だとすると、その旨を、詞を書いた葉月さんにあらかじめ伝えられたわけですね。

悠介:いえ。僕が提示したのはタイトルとこの曲だけです。そこにどういう歌詞が乗っかってくるかを、むしろ僕は楽しみにしてました。

-バンドも13年続いてくると、こうした以心伝心が可能になるのですね。葉月さんは、タイトルと曲から悠介さんの意志を汲み取ったのでしょうか。

葉月:僕はまったく汲み取ってないですよ。さっき、別件の取材で悠介君の話を聞いて、"そういうことだったんだ"と思ったくらいです(笑)。僕の中ではリアリティのあるものではなく、ファンタジーな色を感じていた曲だったので、この曲では初めて自分の過去の経験も何も一切ない純然たるファンタジーの世界を詞にしたんですよ。

-しかしながら、ここには"喪失のメロディ"や"永遠に"といった一節が出てきますよね。これはどこか、lynch.の再生劇の一端を感じさせるものでもありますよ?

悠介:意識はしていなくても、何かを感じていた可能性はありますよね。

葉月:んー、そうですか(笑)。僕の中では、この詞から1本のアニメが作れそうなくらい妄想が詰まってますけどね。

-ところで。明徳さんは、レコーディングという意味でいくと今春に出た既存曲のベース・トラックのみをリテイクした『SINNERS -no one can fake my bløod-』で復帰されていましたが、5人で最初の土台から一緒に作っていく音源となると、この『Xlll』は久しぶりの作品になったわけですよね。そのぶんだけ感慨もひとしおだとは思いますが、今回の制作を終えて今はどんな手応えを感じていらっしゃるのでしょうか?

明徳:感慨は......すごいありますね(笑)。そして、サウンド面ではとても面白い味のあるアルバムを作ることができたなと感じてます。さっきからメンバーのみんなが口にしている、90年代のヴィジュアル系というものについては、僕はあまりそこまで熟知していないんですけど、そういう意味では、すでに僕からしても今回の『Xlll』はかなり斬新で新鮮な内容の作品になっているんですよ。これをさらに若い世代の人たちが聴いたときに、どんなことを感じるんだろう? っていう点が楽しみです。あと、このアルバムは聴いていると歌詞がめっちゃ"入って"くるんですよ。

-激しいサウンドが鳴り響くなかにあっても、葉月さんの歌がしっかりと抜けてきているのは間違いないですね。ここはlynch.のお家芸とも言えるように思います。

明徳:僕も普段はそうですし、それこそ激ロックを読んでいる人たちにとっては、ヘヴィな音楽を聴く場合、使われているのが英語だったり、シャウトが多かったりすることで、歌詞は断片的にしか聴こえなかったり、歌をサウンドの一部として認識することも多いと思うんです。でも、『Xlll』についてはぜひ歌と歌詞の存在感も味わってほしいですね。歌詞カードを見たりして、歌っている言葉の意味も踏まえながら聴いてもらえると、きっとより楽しめると思います。というかもう、全部です。ジャケットだったり、写真だったり、特典の映像だったり、全部をまとめて『Xlll』の世界として隅々まで味わってもらいたいです。それだけの説得力がここには詰まってます。

-ベースの音やプレイについて申し上げますと、『Xlll』で明徳さんが発している音からは、以前との違いもいくつか感じました。これまでは、硬めの音や輪郭のはっきりした派手な音を多用している印象があったのですが、今回は曲によって丸みのある音や、深みのある音なども効果的に使われているなと感じたのです。思うに、ベーシストとしての幅が広がったのではありませんか?

明徳:そうですね。個人的に、今回は生っぽさや人間味を意識したところがありました。前までのギャンギャン、バキバキとしたがっていた感じと比べると(笑)、少し趣味趣向が変わってきたのかもしれません。

玲央:前は、ほんと目立つ音が好きだったからね。

-そのような変化が起きた背景には、何かきっかけがあったのでしょうか。

明徳:人時(黒夢)さんにベースを習いに行ったので、それが大きいと思います。

葉月:去年の謹慎期間中のことですよ。

明徳:泊まり込みで習いに行って、練習するだけじゃなくいろいろ相談もできましたし、最初はどん底に突き落とされたりもしましたけど(苦笑)、すごく得るものは多かったです。

-人時さんはスパルタだったのですか?

明徳:口調は優しいんですけど、内容は厳しかったです(笑)。

葉月:そうやって習ったことの成果が出たんでしょうね。今回のレコーディングでは、これまでで一番僕からは何も言わなかったです。"ここは邪魔"とか、テクニック的なところに関しても、細かく言うことはほとんどありませんでした。

悠介:明らかに上手くなってるなというのは、僕も感じましたね。『SINNERS -no one can fake my bløod-』で録り直しをやったときから感じてはいたんですけど、僕の曲についてもベースに関して意見を出すことはそんなになかったです。

-「FIVE」ではベースがバンド全体を牽引していくような様子も感じられましたし、「EXIST」で聴けるリズム隊としての絡みも魅力的です。

晁直:リズムを考えるとき、「EXIST」では僕も弦楽器との絡みを意識しましたね。

明徳:そんなに深く考えずとも、弾いていると"ここはこう来るだろうな"というのがわかるんですけど、ドラムのキックの音に上手く乗っかれたときは気持ち良かったです(笑)。この曲に限らず、このアルバムではそういう瞬間が前より増えました。